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馬車の中

Penulis: 伊藤ほほほ
last update Terakhir Diperbarui: 2025-03-10 18:10:05

 三日経ち、視聴者が七人になってしまった。

 特に何も起こらなかったというのもあるが、ランデルとの会話のほとんどが下ネタだったというのが大きいみたいだ。

 視聴者が期待していたのは、従来のキャスターと異なる新しいスタイルの英雄であり、鼻の下を伸ばした欲望丸出しの成人男性ではなかった。

 異世界で勇者ユートルディスになってしまった一般人が、何度も死戦をくぐり抜ける奇跡の冒険に胸を熱くしていたのだ。

 俺の人間性やユーモアだったり、ランデルの男らしさや強さに魅力を感じてくれていた方々も居たのだが、何日も同じような下品な話しを続けていれば、見る気も無くすのは当然だ。

 コメントがお叱りや非難する声で溢れていたのは気づいていた。

 しかし、ランデルと仲良くなって初めてまともに会話が出来たこと、男としての本能で自制が効かなかったことで、視聴者を蔑ろにしてしまったのだ。

 いくら後悔や謝罪をしたところで視聴者は戻って来てはくれないだろう。

 その人達はもう俺の配信を見ていないのだから。

 今更リセットをして新しい冒険を始めたところで、俺という人間の印象が固定されてしまった以上、何をしようが覆されることは無いだろう。

 今回の反省を次に活かそうとしても、一度離れてしまった人の心が戻ってくるような甘い仕事ではない。

 俺のキャスターとしての人生は終わったに等しい。

 後は、自分の好きなようにラドリックという異世界での冒険を楽しむだけだ。

 その内に、自分という人間性を含めてやっぱり俺の配信が見たいという視聴者が戻って来てくれるのを願うしかない。

 というわけで、仲良くなったランデルと暇つぶしに推理ゲームをすることにした。

 お題に対して解答者は質問をしていき、出題者はそれについて「はい」か「いいえ」で答える。

 これを繰り返すことで、お題が含む謎を解き明かし、答えを導き出すという遊びだ。

 例えば、『中身の見えない箱の中に、金貨が一枚、銀貨が三枚、銅貨が五枚入っており、この中から一枚がランダムに貰える。男は、自分が確実に金貨を貰えると分かった。何故か?』という問題があった

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     どの世界でもエロ談義は男同士の絆を深めてくれるんだな。 言葉では言い表せない不思議な感覚で、自分という存在が受け入れられたような気持ちになる。 何気ない友人との会話の中で、好きな異性のタイプとか、実はこんな性癖があるとか、秘密を打ち明けた時に、分かるわーと共感し共感される謎の一体感だ。コメ:うわ、最低ですね。登録解除します!コメ:勇太くん好きだったのに幻滅しました。コメ:エロ求めてねえんだわ。じゃあな!コメ:はあ、こういう勘違いキャスターいるんだよな。視聴者が何を求めてるのかを理解してくれよ。コメ:そういう流れになるならエロ専のチャンネルにしな。俺は勇者ユートルディスの冒険が見たかったのに。 打ち解けたと感じた俺とランデルは、好みの女性のタイプやら何フェチかなど、そっち方面の話題で盛り上がった。 途中、コメントが荒れて視聴者が激減しているのに気付いたが、おかまいなしに話を続けた。 今だけは配信なんてどうでもよく、ただただ楽しいひと時を過ごす方が有益だと判断したからだ。 全然要らない情報だが、ランデルは腰のクビレに興奮するらしい。 目つきの悪い気の強そうな女性がタイプで、それを上から屈服させるのが堪らないと言いながら気持ち悪い顔をしていた。 どうやらランデルは、エスの者だったようだ。 これも全然要らない情報だが、俺はお尻フェチだ。 ケツはデカければデカいほどいい。 学生の時は、後ろから見るジャージ姿がたまらなかった。 獣人と呼ばれる動物の特徴や特性を体に宿した人間がいるらしく、その中でも猫人族が凄いらしい。 容姿は人間とほぼ変わらないが、柔軟性のあるしなやかな体が、男たちのあらゆる欲望を受け入れてくれるのだとか。 また、猫獣人の特徴として、舌のつくりが違うらしい。 ブラシのように突起状になっており、ザラついているのだが、それが大量の唾液を纏った時に、恐ろしい兵器に変わるという。 細かく小さな突起群にぬるりと撫でられた時、男たちは自然と喜びの声を上げてしまうのだとか。 そういった理由

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     食事中に俺の話を聞きたいと言われて連れてこられたはずなのだが、俺はほとんど喋らなかった。  ランデルが泣きながら口をゆすいでいたせいで、進行を取れる人間が居なくなってしまったからだ。  俺を前にした兵士達は、自分の考える勇者ユートルディスはこうだみたいな話題で盛り上がっていた。  ユートルディス談義が白熱し、何故か取っ組み合いの喧嘩にまで発展し、俺の目の前に地獄絵図が広がった。  怒号と悲鳴が響き渡り、呆然と立ち尽くしていた俺は、最終的に俺の為に争うんじゃないという美少女みたいなセリフを言わされる羽目になった。 さて、四天王の首が張り付けられた悪趣味な馬車に、俺とランデルが二人で乗っている訳だが。  小休止という名の地獄が終わり、四天王ネフィスアルバが潜むオウッティ山脈へと向かっている。  緩やかな下り坂なので、馬車の速度が上がり、デコボコした路面が俺のお尻を終わらせにきている。  衝撃を和らげるクッションのような何かが欲しいと思い、座席とお尻の間に手を入れてみたところ、鎧の重さで手の骨がゴリゴリと音を立てて砕けそうになった。  それだけでもきついのに、もう一つの問題が生じている。  馬車の幌に、狂乱の一角獣ライトニングビーストの体液と血液が染み込み始めている。  そのせいで、凝縮された凄まじい獣臭と血生臭い不快な香りが馬車の中に充満している。  馬車の揺れと不快な臭いでいつ吐いてもおかしくない。「にゃありゃんぢぇりゅ、びゃしゃにょうえにょやちゅぎゃきゅしゃきゅちぇひゃきしょうぢゃきゃりゃ、しょりょしょりょありぇしゅちぇにゃい?」 ※なあランデル、馬車の上のやつが臭くて吐きそうだから、そろそろあれ捨てない?「お気づきでしたか。ユートルディス殿がおっしゃる通り、そろそろ物資の残りが怪しくなってきておりますので、途中街に寄り補給したいと考えております!」勇太:あの、今のって会話になってました? 各々が自分の意見を述べただけでしたよね? コメ:平常運転だね! コメ:いつもの聞き違いではなかった。 勇太:もしかして、俺がキンタマを食わせたことを怒ってるんで

  • 異世界で配信始めます〜滑舌が悪くなるスキルのせいで、魔王を倒すことになりました。勇者じゃなくて勇太なんだが?〜   食べたくない

    「勇者殿、こちらが本日の昼食になります!」 いつもの麦がゆと……何だこれは?  握りこぶし大で、そら豆に似た形状の茶黒い物体が串に刺さっている。  気のせいじゃなければいいのだが、こんがり焼けたその物体からは、嫌な臭いのする湯気と微弱な黒くて禍々しいオーラが立ち昇っている。コメ:キモwww コメ:またゲテモノじゃねえか! コメ:さすがに不味そう。 コメ:なんか黒いオーラ出てない?w「きぇみょにょしゅうをぎょうしゅきゅしちゃようにゃきょうりぇちゅにゃあきゅしゅうをはにゃちゅきょりぇはにゃにきゃにゃ?」 ※獣臭を凝縮したような強烈な悪臭を放つこれは何かな?「はっ、こちらはライトニングビーストの睾丸を串焼きにしたものです! 先の四天王との激戦で、勇者殿が疲弊されているかもしれないとランデル殿に相談しまして、精のつきそうな部位をお持ちしました!」 ちょっとこいつが何を言っているのか理解できない。  俺は今、本当に正しい解答を聞けたのだろうか。「えっちょ、ききみゃちぎゃいじゃにゃいちょいいんぢゃきぇりょ。きょりぇはにゃにきゃにゃ?」 ※えっと、聞き間違いじゃないといいんだけど。これは何かな?「はっ、こちらはライトニングビーストのキンタマを串焼きにしたものです! 戦の疲れに一番効くのは獣のキンタマですので、多少臭いますが、食べやすい調理法を選んだつもりです!」勇太:イカれてんのかこいつらは! 睾丸が何か分からなかったから聞き直したんじゃないんだよ! 可愛く言い直されても困るんだが! コメ:別に可愛くないけどなw コメ:四天王なんて食えるのか? 勇太:多少ってレベルじゃないくらい臭いですよこれ。 コメ:見てるだけで吐き気するw コメ:腹壊しそう。「えっちょ……りゃんぢぇりゅ? きょりぇっちぇしゃっきにょしちぇんにょうぢゃよにぇ? いみゃみゃぢぇぢゃりぇきゃちゃびぇちゃきょちょありゅにょ?」 ※えっと……ランデル? これってさっきの四天王だよね? 今まで誰か食べたことあるの?「はっ

  • 異世界で配信始めます〜滑舌が悪くなるスキルのせいで、魔王を倒すことになりました。勇者じゃなくて勇太なんだが?〜   話を聞いてくれ

     そういえば、先日のミノタウロスは最高に美味しかった。 肉は筋繊維が太くて硬すぎる為、噛み切れないので食べないらしいが、内臓系はどの部位も絶品らしい。 俺は、ミノタウロスのミノというダジャレのような部位を頂いた。 塩を振るだけのシンプルな味付けであったが、歯応え、旨み、脂身、全てにおいて究極のミノと言えた。 怪我をした騎士には、優先的にレバーが与えられていた。 彼らがレバーを噛み締めるたびに、恍惚とした表情を浮かべていたのは忘れられない。 ちなみに、一番美味いのは大腸らしいのだが、切り開いて川で洗ったりと下処理が大変なので、食べるまでに時間がかかってしまう。 早く食べられる部位は、身分が上の物に優先的に提供されるという仕組みらしい。 その理論でいくと、一般男性の俺が大腸を食べられるはずなのだが、勇者として祭り上げられているピエロなので、俺の願いが叶うことは無いだろう。 小さく切り分けられたミノタウロスの大腸が網の上に乗ると、焚き火でその上質な油が溶け出し、なんとも香ばしい良い香りのする煙が立ち昇っていた。 こんがり焼けた大腸を口に含み、飛び上がって体でその美味しさを表現する奴らを見て、次があれば俺もあれを食べさせてもらおうと決意した。 ワイバーンも美味かったしな。 次は目玉以外を食べさせてもらいたいが。「ユートルディス殿、今回圧倒的な力を見せて頂き、騎士達の士気は最高潮に達しております。是非、次のオウッティ山脈では残虐の王ネフィスアルバの討伐を我々にお任せ下され!」 これは願ってもない申し出だ。 アホランデルから初めてまともな提案が出てきた気がする。 しかしだ、ここは最新の注意を払って返答しなければならない。 俺の滑舌とエスパー翻訳ジジイの相互作用で、どんな曲解をされるか分かったもんじゃないからな。 ここでお願いしますと言うと俺が行かされるので、ここは短く分かりやすい返事をするとしよう。 お願いしますと言うと俺が行かされるっておかしいけどな。「うん!」※うん! 流石に伝わっただろう。

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