All Chapters of もしもあの日に戻れたのなら: Chapter 31 - Chapter 40

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それぞれの想い⑦

2044年3月15日。今日は学校で卒業式がある。式典まで時間があるので、校内を1人歩く。アカリは部外者になる為、姿を隠し何処かから僕を見守っているそうだ。春斗は食堂に居ると言っていたが、それなりに人がいるせいで何処にいるか見当もつかない。フラフラと視線を彷徨わせて探していると肩を叩かれた。「やっと見つけたぜカナタ!」春斗も僕を探していたようで、先に見つけてくれたみたいだ。「いやー卒業式なんて感慨深いな!」何も考えていなさそうな春斗の口からそんな感想が出てきた事に驚いたが、何気に僕も4年間の思い出を振り返る。「そういえば、式が終わったあとどうするんだ?」何も考えていなかったな、まあでも世間は打ち上げみたいな事でもするんだろうか?「何も考えていなかったけど、宿り木で卒業祝いするとか楽しそうだなって」「おー!今それを言おうとしてたんだよ!団長とかもお祝いしたいって言ってくれてたしさ、そんなら式終わったら宿り木行くか!」式が終わってからの予定がたったの数分で決まってしまったが、まあいいだろう。そろそろ時間だ、僕らは式の会場へと足を進めた。――――――卒業式は淡々と進んでいく。これといった大きなイベント事もなく終わった。呆気なく終わってしまったが、こんなものなのだろう。これから他の同級生は自分の人生を歩んでいく。僕も研究所への就職が決まっているし、各々自分で敷いたレールの上を走っていくのだろう。「さあ!行こうぜカナタ!」大学の校舎を出てすぐに駆け出そうとする春斗を抑え込むのが大変なほど興奮している。「そんな急がなくてもいいよ、歩いて行こう」何度も言うが僕は体力がない。宿り木まで走って行くなんて正気の沙汰じゃない。 しばらく歩いていると、ふと春斗が声を掛けてきた。「そういえばカナタ、彼女いるか?」何だ急に、男同士で恋バナと洒落込むつもりか?「いや、残念ながらいないな」
last updateLast Updated : 2025-02-06
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それぞれの想い⑧

1人になってしまった僕を見てか、アレンさんが話しかけにきてくれた。「やあカナタくん、あれから魔法は順調かな?」アレンさんにはたまに魔法の稽古を付けてもらってる為、久しぶりに会った感じはしない。「どうも、そうですねやっぱり上級魔法はなかなか難しくてこないだ1度だけ出来たんですけどたった1回で魔力が尽きてしまいました」「おおー!?もう上級魔法が使えたのか!凄いじゃないか!魔力はまだ少なくて当然だし自ずと増えてくるものだから気にしなくていいよ。でもまさかもう上級まで覚えるとは……これは戦略級魔法まで教えるのも近いな……」何やら聞き慣れない単語が聞こえてきたが……戦略級?もう字面から凄そうじゃないか。「戦略級っていうのはどれくらいの威力なんですか?」「それはもう、戦略級だよ。街1つ壊滅させる事ができるね」とんでもない魔法じゃないか。そんなもの覚えてもいつ使えばいいんだ。そんな話をしていると僕らの会話が耳に入ってしまったのか怒った形相でこちらに向かってくるレイさん。「ちょっと団長?今戦略級って聞こえてきましたが?」「あ、いや、その、まあなんていうかね、カナタくんは凄いってことだよ!」なんの言い訳にもなっていないし、明らかに動揺したアレンさんは引っ張られていった。また1人になったと思ったらアカリから声が掛かる。「カナタ、悪夢のこと調べた」悪夢?ああいつも見ている夢のことか。そういえば調べるって言ってたからなにか分かったのかもしれない。「もしかして何か分かったのか?」「ちょっとこっち来て」アカリに連れられ誰もいない来客用のスペースで話を聞くことになった。――――――「魔法だと思う」唐突に言われたが、正直言って訳がわからない。魔法だとしても一体誰が僕にかけたのか。夢の中身も自在に操ることができるのか?大体なぜ僕に?聞きたいことは山程あるが、アカリの次の言葉を待つ。
last updateLast Updated : 2025-02-06
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それぞれの想い⑨

アカリは黄金の旅団の中で一番若い。アレンに出会うまでは、暗殺者を生業としていた。生まれてすぐに両親に捨てられ、拾ってくれたのが暗殺者の教育機関だった。毎日暗殺術や隠密、普通の生活には相応しくないであろう事ばかりやらされていた。物心つく前からそんな日々を過ごしていた為それが日常となり、数年経った頃には誰よりも強くなってしまっていた。「アカリ、お前にしか出来ない依頼だ」ある日、暗殺機関のトップからそう告げられ1枚の紙を渡される。そこには、アレン・トーマスの暗殺、と書かれていた。既にアレンは最強の一角として知られていた為アカリには荷が重いと思ったが、トップからの依頼は断るという選択肢はない。依頼=命令である以上、達成しなければならない。「分かりました」アカリは淡々と告げ暗殺対象の情報を集める為、すぐに行動を開始した。アレンは黄金の旅団の団長であることがわかった。レイ・ストークスを副団長として従え総数は30人を越える。そこに暗殺を仕掛けるのは自殺行為に等しいが……失敗すれば殺される。暗殺機関はそういう所だ。役立たずは切り捨てられまた新たな人員が補充される。アレンという男に恨みはないが自身の命のために、ここで死んでもらうと覚悟を決める。旅団を追っていると野営の準備にかかりだした。アレンが1人になる瞬間を狙うしかない。――――――日も落ち、テントが複数設置され談笑している団員達が出てきた。アレンは用を足すためかその場を1人離れた。木の陰から目にも止まらぬ速さで何者かがアレンに接近する。刀を逆手で持ち一撃で首を刈り取るようにアレンに迫る少女。鉄を叩くような音が周囲に響き沈黙が訪れる。刀は何かに弾かれたようで、一撃で殺しきれなかった。少女が二撃目の構えに入ったその時、声が聞こえる。「誰かは知らないけど、ボクを狙ってるね?これでも一応最強の一角と呼ばれてるんだけどなぁ」独り言のようだが
last updateLast Updated : 2025-02-07
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命の対価①

2044年3月30日 僕は研究所で実験の試験作動に立ち会っていた。異次元空間への接続を可能とする未知の機械は既に稼働前段階に入っており、残すは立証実験のみとなっていた。 「やっとここまできたね」五木さんを主導に僕の理論を形にした、現代の技術の粋を集めて作られたそれは悠々と眼の前の大きな機械に囲まれ佇んでいる。「この異世界ゲートの起動は彼方君にやってもらうつもりだからね」「分かりました。緊張の一瞬ですね」しかし稼働する前にやることはある。「まずは記者会見を開いて、妨害工作を防ぐ為に軍とも話し合い警備をしっかりしてもらわないとね」起動する準備は出来たが、そこに至るまで大人の事情ってやつがたくさんあるみたいだ。「実際に稼働するのは4月7日。今から1週間後となるだろう」 五木さんも心なしか目が輝いており、今か今かと待ち望んでいたようだ。「あとの手続きは私の方でやっておくから今日から一週間はゆっくりするといい」卒業してから今日まで毎日研究所へと通い詰め、稼働試験に没頭していた僕を労う為に束の間の休息が与えられた。「ありがとうございます。姉さんからもたまには家でゆっくりしろって口うるさく言われてますからね」その後しばし五木さんと談笑し、家に帰ることとなった。  ――――――「ねえ彼方、いつ立証実験は始まるの?」姉さんに日にちを伝えるが正直言って来て欲しくはない。何があるか分からないし、危険がないとは言い切れない為だ。「姉さんは一応来ない方がいい、何があるか分からないんだから」「じゃあ彼方も危ないじゃない!」僕が理論を作り上げたのだ、その場に居ないわけにいかない。「僕が起動スイッチを押すことになるから行かないとダメなんだよ。姉さんは安全が確認出来てから一緒に行こう」姉さ
last updateLast Updated : 2025-02-08
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命の対価②

「全員準備は整ったな?」暗く狭い部屋で静かな声が響く。「はい、万全の体制で挑めます」「確実にアレンや剣聖が出てくる、アレンの相手は俺がやるが剣聖はお前らでなんとか止めてみせろ」魔族達も密かに計画を立てていた。「偵察した魔族からは、4月7日に異世界ゲートを起動するとのことです」「もうすぐだ、ここまで長かったがやっと我らの時代が来る。分かっているな?失敗は許されん」「最優先事項として起動が確認されればカナタを抹殺致します」カナタさえ消えればあのゲートをもう一度作るのに膨大な時間がかかるだろう。それに起動さえしてしまえば、異世界から仲間を呼び寄せこの世界を支配することができる。1つだけ気がかりがあるとすれば、剣聖だ。剣聖の持つ聖剣エクスカリバーは魔神を傷つけ再生できぬようにする唯一の武器。彼さえ気をつければ他は強かろうが身体は再生できる。「この世界も暗黒の時代へと変えてやろう」笑いを押し殺したような声だけが部屋に|木霊《こだま》した。――――――宿り木では連日対策会議が開かれている。もちろん、内容は4月7日の体制についてだ。全員が元の世界に帰る為には、無事に起動させること。つまり、妨害を跳ね除ける戦力が必要となる。魔族がこの日を狙って何か仕掛けてくるのは間違いない。ここ最近は魔族の姿を目撃できておらず、全員が不気味に感じていた。「団長、剣聖に姿を隠しておいてもらうのはどういうつもりですか?こちら側の最大戦力です、前に出てもらったほうがいいのでは?」「奇遇だね、ボクも同じ意見さ」団員からもっともな意見が飛んでくる。アレンも同じ考えだったが、半分ほどの団員は全員姿を見せておいた方が抑止力になるのではないかという意見だった。 「私はアレンに賛成だな」すると剣聖から、賛成の声が上がった。「剣聖殿、それはどういう意味か?」「答えてやったらどうだ、アレン」自分で答えるのが
last updateLast Updated : 2025-02-08
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命の対価③

全員が各々準備の為動き出した。春斗、フェリス、アカリは三人で固まって話をする。「で、俺らはどうやって動く?」「指示はアタシが出すわ、だからその通りに動いてくれればいい」「分かった」 二人は護衛対象を守る為最善の配置、動きを再確認する。僕の役目は守られる事だけ。作戦会議に参加しているようで参加していないのが少し寂しい。  「とにかくアカリは何があってもカナタくんの側を離れないようにして」「ハルトは3歩後ろを歩いて護衛対象の周囲を警戒」「アタシは護衛対象の左斜め後ろの一歩下がった所」フェリスさんの的確な指示に二人は頷く。 「もし万が一護衛の布陣が崩れるようなら、庇うようにハルトはその身で守ること、アカリはカナタくんを抱えて飛び出して」「俺は肉壁ってやつだな!任せろ!」「私は飛び出してどこに行けばいい?」「飛び出したら後は、安全が確保できる場所まで逃げて」「分かった」念の為護衛失敗時の動きも頭の中に叩き込んでおくようだ。こうすることで、成否問わず護衛対象の安全を確保することができる、ということだろう。話し合いは遅くまで続き、そのまま夜はふけていった。   ――――――アレンは自室で剣聖と二人で向かい合っていた。「私はカナタに襲いかかってきたリンドールを斬る事に集中しておけばいいな?」「そうだね、他の魔族は団員に任せておけばいい。剣聖には剣聖にしか出来ない仕事があるからね」剣聖には魔神と対峙してもらわないとならない。アレンがどれほど強くても完全に消滅させるには聖剣がいる。聖剣は聖剣に認められた者にしか扱えない。だから剣聖には魔神討伐の旅に付いてきてもらうこととなった
last updateLast Updated : 2025-02-09
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命の対価④

2044年4月6日 立証実験はついに明日行われる。春斗達が言っていた通り魔物がいきなり飛び出してこないとは言い切れない。あくまで異世界へと繋がる扉を創るだけだ。座標の指定なんてできるわけがない。もし魔族領に繋がってしまった場合はすぐに電源を落としゲートを閉じなければならない。 それにこっちの世界にいる魔族と魔神。奴らがどう動くかは予想がつかない為、不確定要素の1つになっている。「そう緊張しなくていいよ、彼方君」五木さんに肩を揉まれリラックスするよう言われたが、明日が迫るにつれて緊張は最高潮だ。 「ですが正直不確定要素があるので、本当に大丈夫なのかどうかも……」「科学に絶対はないよ、色んな不確定要素が混じり合って成功した場合のみ成果が残る。科学は結果が全てなんだ」言葉では理解できていても、頭の中はそうはいかない。「とりあえず今日はもうやることは終わったし、明日10時に集合してくれればいい。全世界を驚愕させる結果を生み出そうじゃないか」 楽しみ半分不安半分なまま帰路につくが、その帰り道アカリが僕の顔を覗き込んできた。 「不安?カナタ」「まあそりゃあね。君たちみたいな異世界の存在が身近にいるし、人間を脅かす生物も居ることが分かってしまった以上、異世界と繋がった瞬間が怖いんだ」「今からでも辞めてもいいんじゃない?」「そういうわけにいかないよ。もしも毎日見る悪夢が本当だったら……異世界に逃げるしか人類滅亡から逃れる手段はないんだ……」 そう言うとアカリはまた無言で歩き出す。数歩歩いたところで彼女が小さく呟く。 「大丈夫、カナタは私が守るから」その言葉がとても頼もし
last updateLast Updated : 2025-02-10
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命の対価⑤

2044年4月7日10時五木さんの指示通り10時丁度に研究所へ入ると、既にお披露目の準備が終わっていた。「おはよう彼方君、よく眠れなかったみたいだね。クマができているよ」「おはようございます。色々考えてしまってなかなか寝付けませんでした……」機械の前に舞台ができており、覆い隠すような大きい布が被せられてある丸いドーナツ型の機械。ここで僕は今日、世界に名を知らしめる事となる。緊張で手汗が滲み、もらった台本は少し皺になった。「この舞台で12時に開幕となるからね、それまでに緊張をほぐしておくといいよ」冷たいお茶を渡され、五木さんは他の準備もあるようで何処かへと消えていった。後2時間後には人で埋まる。数十分もすれば世界各国の記者や主要人物が集まってくるだろう。舞台の袖でその時を待つ。宿り木の皆はもう配置についたみたいで、先程アカリから知らされた。時間も迫ってきた時、茜さんから話しかけられた。「彼方君こんな所に居たのね、結構知り合い呼んでたみたいだけど、たくさん友達いるのね」「そうですね、皆さん仲良くしてくれています」「友達少ないと思ってたからなんか少し安心したわね」バカにされたがとりあえずスルーしておいた。宿り木の皆は友達と言っていいのかわからない間柄の為少しふわっとした言い方になってしまったが、茜さんは疑問を抱かなかったようでそれだけ聞くとまたどこかへと歩いて行った。2044年4月7日11時50分舞台袖から会場を見ると既に人でいっぱいになっている。反対側の舞台袖には五木さんが控えており目を合わせると、少し微笑んでくれた。「私はここにいるから何かあったら叫んで」アカリは舞台袖で待機、僕は説明やらを求められるから舞台に出ないといけないが、流石にそこまでアカリを連れて行くわけにいかない為叫んで守ってもらう方法を取ることになった。「まあ叫ばないことを祈るしかないな」舞台を見回すと厳重な警備体制に、監視カメ
last updateLast Updated : 2025-02-10
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命の対価⑥

五木さんと共に舞台の真ん中へと足を進める。カメラのフラッシュやスポットライトに照らされ、記者や主要人物の顔は見えなくなった。「どうも皆様、初めまして。私が五木隆です。そして隣にいるのが」と、目をこちらに向け合図してきた。「城ヶ崎彼方です」大きな拍手の音が会場を揺らす。少し間をおいて五木さんが喋りだした。「本日は皆様お待ちかね、異世界ゲートの起動を行います。城ヶ崎彼方によって生まれたこの異世界ゲート。世界の常識を変える一歩になるでしょう」随分持ち上げられているが実際に常識が変わるだろう。なにより異世界に行くことにより、魔法という概念がこの世界にも生まれることとなるのだから。後ろの大きな布が取り除かれ、ドーナツ型の機械はお披露目となった。また大きな拍手が巻き起こるが、アレンさん達の目は真剣そのものだ。何も問題がなかったようで次のフェーズへと進む。まずは一安心といったところか。「起動を行うのはもちろん本人です。では彼方君よろしく頼むよ」そう言いながら五木さんはスイッチを僕に手渡し少し離れた。これを押したら、起動する。辺りは静寂に包まれ、僕の押す瞬間を今か今かと皆は見守る。10秒は経っただろうか、満を持して僕はスイッチを押した。反重力装置が起動し、ドーナツ型の機械は回転を始める。唸り声のような音を響かせながら、ドーナツの中心のぽっかり空いた空間は少しずつ歪み始めた。バチバチと雷のような音と共にドーナツの中心の空間は黒ずんでいく。耳障りな音がやんだ頃には、黒ずんでいた空間は完全な漆黒と化していた。……成功したのか?いや、油断はできない。空間が固定されていなければ、入った瞬間に身体はバラバラとなるだろう。とにかく起動は成功した。手はず通り、近くに用意されていた鉄のパイプを握り空間へと突き刺した。3秒、4秒、5秒待ち、鉄パイプを引き抜く。曲がったり折れたりせずそのま
last updateLast Updated : 2025-02-11
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命の対価⑦

ゼンの叫び声が会場中に広がる。僕や宿り木の皆は何が起きているかすぐに把握できた為、次の行動に移ろうとするが会場に来ている方々は何が起きているか理解できずオロオロと周りを見渡しどうすればいいか悩んでいるようだった。しかしそれもゼンを目にして、逃げ惑う事となる。ゲートから命からがら逃げてきたと思われるゼンの全身は、返り血なのか真っ赤に染まり所々服も破けていた。「団長!魔物がなだれ込んでくる!何か手はないか!」各所に配置されていた黄金の旅団員はすぐさまゲートに向かおうとしたが、そう簡単にはいかない。こっちの世界にいた魔族達がここにきて姿を現したからだ。「さあ、宴の始まりと行きましょうか」ゾラの声を皮切りに、各所で雄叫びや唸り声が聞こえ始めたと思ったら異形の魔族達が行く手を阻みだした。いや何か忘れていないか?僕はある言葉を思い出した。五木さんから聞いていた、稼働時間だ。10分で稼働は止まる、電力が足らないから。そう聞いていたのに、もう既に1時間ゲートは開いたままだ。五木さんに目を合わせ、叫ぶ。「五木さん!電力が止まればゲートも閉まりますよね!?」「そ、そのはずなんだがなぜか止まらないんだ……」しどろもどろに喋りながら機械を操作しようとするが、ゲートは閉まる気配を一向に見せない。僕もスイッチを何度も押すが何も変化はない。すると後ろから異様な気配が近付いてきた。「無駄だ、電力不足など……魔力で補えばいいだけの話だ。我の魔力量なら造作もない」低く冷たい言葉を発したその人物は、背は高く黒いコートに身体を包み、赤い眼をしていた。刹那、アカリが僕の前に飛び出す。「カナタ、下がって。あれが魔神。魔神ヴァリオクルス・リンドール」遂に出てきた魔神。名前しか聞いたことがなかったが、明らかに他の魔族とは違うオーラが漂っている。「失せろ小娘。貴様でどうにかなると思ったか?」「
last updateLast Updated : 2025-02-11
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