All Chapters of もしもあの日に戻れたのなら: Chapter 11 - Chapter 20

55 Chapters

隠れていた存在⑤

「ハルトにフェリス、異世界の仲間にこんなとこで会えるとは思わなかった」漣は味方だったようで、一安心したがさっきの一触即発の状況を見ていればそんな呑気なことを言ってられない。 「レオン!お前なんで連絡がつかなくなってんだ!てか一ノ瀬漣ってなんだよ!レオンからレンに変えたってことか!?」「す、すまない。私にとってはここが異世界。携帯の使い方もよく分からず飛ばされた当初は皆を探すより先にこの世界に順応しようと努力していたんだ」漣はこの世界の道具に疎いようで、機械という物自体異世界には存在しないらしい。春斗はすぐに順応したみたいだが、個人差があるみたいだった。 「それよりも剣聖が見つかってよかったわ。アタシたちだけじゃ正直あれに勝つのは無理だしね」「確かにな、レオンじゃなかったら俺らも何人か死ぬレベルだしな」何か僕のよく分からない話が飛び交っている為、会話に入っていくのが難しい。 「ただまあこれで20人全員見つかった訳だ。これなら異世界に帰るゲートが出来ても安心だな」「そうね、まだ完成した訳じゃないからカナタくんは絶対に守りきらないといけないけど」 そうだ、僕を守ってくれ。さっきみたいな戦いが敵と遭遇したら起こるんだろう?すぐに死んでしまうよ僕は。 「敵は何人生き残っている?私はこっちに来て3体は始末したが」「じゃああと5体だな。意外と少ないな!」全然嬉しくないぞ。あんな戦いができて尚且悪意を持っている奴があと5体もいるんだろ。 「あの、すみません一つ聞いていいですか」恐る恐る会話に入ろうと声をかけると漣が真っ先に反応した。「本当にすまないことをした。君が異世界人にとっての救世主とは知らずに怪我を負わせるところだった」「いえ、それはもういいんですけど……剣聖とか火炎魔人?とかってなんですか?」
last updateLast Updated : 2025-01-23
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隠れていた存在⑥

話題は尽きなかったが、喫茶店でずっと話しておくわけにもいかず1時間もすれば解散となった。「カナタくん、今度また会うけどこれ持っててくれる?」フェリスから白い宝石をいれた袋を手渡される。 「なんですかこれ?」「これね、一度だけ命の危険が迫ったときに氷の膜が自分を守ってくれるの。貴方には死んでもらっては困るからね。これで少しでも時間を稼いで私達に連絡を頂戴」これは素晴らしい。女性から物を貰うことすら嬉しいが、何より自分の命を魔法という脅威から守ることのできる唯一の道具だ。「ありがとうございます!!めちゃめちゃ嬉しいです!!」「そ、そう?よかったわ」はにかんだ笑顔を時たま見せてくるのはわざとか?可愛過ぎるじゃないか。それは置いといて、漣は春斗達と連絡を取り合えるようにしたみたいだ。僕にとっては一つ肩の荷が降りた気分だ。  電車を降りて帰路に着く際、嫌な悪寒を感じた。周りを見渡しても誰もいない。でも確かに視線を感じたんだが、気のせいだろうか。  「ただいまー」「おかえりー!!」元気ない声が帰ってきた。今日は姉さんが帰ってくるのが早いみたいだ。 「どこに行ってたのカナタ?」どこと言われてもなんて答えたらいいのか。 「レーベっていう喫茶店だよ」「一人で?」今日はやけに突っ込んでくるな。さては姉さん、暇だな?僕を相手にして暇潰そうって考えか。「一人だよ。たまには一人でのんびりミルクティーを嗜みたくてね」「私も行きたかったなー、今度連れてってよ!」「いいよ、雰囲気がすごくお洒落だっから姉さんも気に入ると思うよ」他愛もない会話をしているが、頭の片隅には先程の戦
last updateLast Updated : 2025-01-23
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忍び寄る悪意①

2044年1月1日卒業が近くなり実験に関わるのももうじきだ。そういえば春斗から連絡がないが、学校が休みのせいで会うこともほとんどない。一度連絡してみようか。……………………4コール鳴らしても出ない。 待っていると「はい、フェリスです」あれ?春斗じゃないのか?「あの、この番号って春斗で合ってますよね」「あ、カナタくん!ごめんねちょっと問題があってね」春斗に問題?何かあったのか。「とりあえずカナタくん、今から会えるかな?」フェリスさんからのお誘いだが、あまり嬉しくはないな。春斗に何があったのか気が気でならない。 「分かりました、駅前のレーベに行ったらいいですか?」「そうね!そこに今から来てくれる?」すぐに外行きの格好に着替えて、玄関を出た。 また駅までの道のりで悪寒がしたが気にしていられない。何か視線のようなものは感じるが、どこから見られているかは分からない。気の所為と思おう、正直命を狙われる立場にある以上気にした方がいいのだろうが今は春斗のことが気がかりだ。 喫茶店レーベに入ると既にフェリスさんは着いていたようで、一番奥の席から手を降っている。「すみません、お待たせしてしまって」「いいわよ、アタシもさっき来たとこだしね」白い髪に白いコートか、白がよく似合う人だ。 「それで春斗なんですが、何かあったのですか?」「実はね……」フェリスさんから聞いた内容は驚くべき内容だった。少し前に敵である魔族と出会ってしまったようで、その場で戦闘になったらしい。
last updateLast Updated : 2025-01-24
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忍び寄る悪意②

「この先に工場があって、その近くのゲストハウスみたいな家を数軒借りてみんなで住んでるのよ」「20人皆でってなると楽しそうでいいですね」「そうかしら?アタシ達の世界では割りとシェアすることが当たり前よ」冒険者ってなると、やっぱり漫画やアニメのように行く先々が変わるし住むところも変わるようで、シェアハウスに住むことが一般的なようだ。「伏せて!」突然フェリスさんが叫ぶと同時に僕の足に蹴りを入れてきて強制的に伏せさせられた。「いたぁ!」伏せる前に僕の頭があった位置にナイフが飛んでくる。危ない……フェリスさんの蹴りに感謝だな。「不味いわね、カナタくん狙われてるわ。拠点はすぐ近くだから増援がくるまで2分。守り切ってみせるわ!」「氷の絶壁!」そんな言葉と共に僕らの目の前に巨大な氷の壁がせり立った。「誰かは知らないけどアタシがいるタイミングで襲いかかってくるなんて命知らずにも程があるわね!」頼もしい、なんて頼もしい台詞なんだ。フェリスさんには絶対逆らわないでおこう。数秒沈黙が訪れたが、少し離れたところから声が聞こえてきた。「なるほど……氷の女王でしたか。これは相手が悪かったかもしれませんねぇ」飄々とした態度で高身長な男が歩いてくる。「あなたは何者?魔族のオーラを纏っているから敵には違いないでしょうけどね」「御名答!」長身の男が拍手をしながら近づいてくるが、フェリスさんは両手から冷気を纏ったレイピアを出現させる。「お初にお目にかかります、ワタクシは高位魔族が1人四天王ゾラ・マクダインと申します。ゾラと呼んでいただいて結構」「黒翼の|剣《つるぎ》か、厄介な相手ね……カナタくん、絶対にその氷の壁から外には出ないでね」出ろと言われても出ませんよ、と言わんばかりに僕は首を縦に振る。「ゾラ、あんたのトップはどこにいるの?」「リンドール様ですか?あの御方はまだ表舞台には出てきませんよ。少なくとも異世界へのゲートが完成するまでは、ね」こちらを品定めするような目付きで凝視してくる。恐ろしすぎて腰が抜けそうだ。「アンタの相手はアタシよ!」地面を強く蹴りゾラに向かって駆け出すフェリス。それを見たゾラも何かしら唱えたと思ったら右手が化け物のような腕に変化した。「異世界へのゲートが完成するまでは手を出すなと言われていますが、少しくらい味見させて
last updateLast Updated : 2025-01-25
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忍び寄る悪意③

――――何分経っただろうか。フェリスとゾラは激戦を繰り広げている。時たま激しい剣戟の音が聞こえてくるから見えない速度で戦っているんだろうな。「やるねぇ、フェリスちゃん。四天王を相手に善戦してるよ」「あのゾラってやつは強いんですか?」「強いよ。少なくとも本気出されたらフェリスちゃんじゃ勝てないね」フェリスも氷の女王とか二つ名がなかったか?たしか異世界では強者に二つ名を付けるって聞いたけど、そんな彼女でも勝てない相手なのかヤツは。「ま、僕なら勝てるけどね。せっかくフェリスちゃんがカナタくんに良いところ見せようと頑張ってるのに横取りはできないしねー」そうなの?フェリスさんそうなんですか?僕にとっては早くそいつを片付けてほしいんですが……。というかこのアレンって人はフェリスさんより強いのかよ。見た目だけなら弱そうなんだけどな。「あ、もうすぐ終わるみたいだよ」アレンがそういうと同時に音が鳴り止んだ。フェリスさんは所々血を流しているがゾラは無傷のようだ。「フェリスさん!大丈夫ですか!」「こいつ!本気で戦えよ!手を抜きやがって!」だめだ、フェリスさんが戦ってるときは声をかけてはいけないな。口調が荒ぶっておられる。「あなたを相手に本気で戦ってしまうと後ろの方が出てこられてしまいますからねぇ」ゾラにそう言われるとフェリスさんが振り向く。「ア、アレン団長!見てたなら助けてくださいよ!」団長?おいおいこの人団長かよ。めっちゃ偉い人じゃん……。「いやーフェリスちゃんがカナタくんに良いところ見せようと思って頑張ってたからさ、手を出しにくくって」笑いながらフェリスさんに話しかける。「な!べ、別にそんな気持ちで戦ってませんよ!!」フェリスさんの顔がみるみるうちに赤くなる。図星だったようだな、聞かなかったことにしておこう。そんな会話をしている間も黙ってこちらを見つめる四天王ゾラ。何言わないから余計に怖い。「そろそろここらでお暇させて頂きましょうか」ゾラは大きな翼を広げると一気に羽ばたき空へと消えていく。「あ!まてこらぁ!まだ決着はついてねぇぞ!!」フェリスさんは相変わらず戦闘の熱が抜けきってなかったようで、レイピアを振り回しながら空に向かって叫んでいた。「とりあえず終わったみたいだしボクらの拠点に行こうかカナタくん」「はい
last updateLast Updated : 2025-01-25
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忍び寄る悪意④

「ここが拠点ですか」眼の前には大きな一軒家が二軒並び立つ。4階建てか?それにしてもお屋敷レベルのデカさがあるな。20人も住んでいるのだからこれくらい大きくないとシェアハウスは無理か。「さ、遠慮しないで入って入って」アレンさんに背中を押されながら拠点の扉を開くと男女複数人が出迎えてくれた。「いらっしゃーい!!」「あー!やっと来たー!」「フェリス血だらけじゃねぇか!」各所からいろんな声が掛けられる中アレンさんが前に出て皆を静かにさせてくれた。「まあまあお出迎えはこれくらいにして、とりあえず中に入ってもらうよ」アレンさんの手招きで建物の奥へと足を進める。「アタシは傷の手当てしてからそっちに行くから団長と先に行っててね」そうだ、傷を負ったフェリスさんは手当てがいる。確か回復魔法を使える人が居るって言ってたな。僕は相槌を打ちアレンさんに着いていった。リビングというか一番大きな部屋に案内されると開口一番アレンさんが声を張り上げる。「さあみんなお待ちかねカナタくんだ!」いきなり僕を皆に紹介してくれたのはいいが、簡単すぎないか?一応自分で挨拶はしておこう。「初めまして城ヶ崎彼方と申します。皆さんは異世界から飛ばされたと聞きました。僕の知識が皆さんの助けになれるよう精一杯協力させて頂きます」そう言うと1人の男が声を張り上げる。「固いぜカナタ!ハルトとは友達なんだろ?ならオレとも友達だぜ!!」体育会系と思われる見た目と言動からして、僕と真逆のタイプと思われる。「オレの名前はゼン・トランセル!ゼンでいいぜ!!」「よろしくお願いしますゼンさん」「だからかてーのよ!タメ語で行こうぜ!それに22だろ?カナタ。オレも22なんだぜ?」なんと、その見た目で同い歳だと?分かるわけないだろう、どう見ても歳上じゃないか。ただここは流れに乗っておこう。仲良くなっておいて損はない。「よろしく頼むよゼン」
last updateLast Updated : 2025-01-27
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忍び寄る悪意⑤

「さ、みんな挨拶は終わったかな?せっかくだしお寿司でも頼もうか」「ピザもー!」誰だ、欲望に忠実な奴は。僕だってどちらも食べたい。そういえばお昼御飯は食べてなかったからお腹が空いているな。「カナタくんも遠慮しないで食べてくれよ」「ありがとうございます」皆が各々喋りつつ席に着いていく中、漣が近付いてきた。「カナタくん、久しぶりだな」「漣さんもここに住んでいたんですね」「ああ、あれから皆と一緒にいるほうが何かと都合がいいと言われてな。私もここに住むことにしたんだ」漣さんは機械音痴だからな。皆と一緒にいないとまた連絡がつかないなんて事になったらとても厄介な事になる。何より貴重な剣聖という戦力でもある。「そういえば、アレン団長と漣さんってどっちが強いんですか?」「ふむ、よく聞かれる事でもあるがそうだな……恐らく本気で戦えば私が負けるだろう」ええ!?アレンさんあんな成りして漣さんより強いのか!?「アレン団長はあれでも殲滅王なんて呼ばれているのよ」僕と漣さんの会話を聞いていたのか、レイさんが追加の説明をしてくれた。「アレン団長はここにいるメンバー、いや異世界でも最強と呼ばれる3人の英雄がいるんだけれど、その内の1人だから多分誰も勝てないわ」あんな見た目だけどね。と少しディスられつつも戦闘能力は誰もが認めるほどらしい。殲滅王と呼ばれるくらいだからな、多分とんでもない魔法とか使うんだろうな。「お寿司が届いたよー」気の抜けたアレンさんの声で皆が玄関まで取りに行く。僕も手伝おうと席を立とうとしたがレイさんに止められた。「貴方はお客様よ、ここに居なさい」そう言われると何も言えず、ハイと返事をして座ったまま準備が出来るまでレイさんと雑談することにした。「そういえば聞いてみたいことがあったんですが」「なにかしら?私でわかる範囲で答えさせてもらうわよ」「僕も魔法って使えるようになりますか?」
last updateLast Updated : 2025-01-28
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忍び寄る悪意⑥

昼食後、アレンさんと廃工場に来た。こんな所があったことすら知らなかったくらいだ、誰も寄り付かないというのも本当なんだろう。それなりに大きい敷地、周りから隠れられる程大きな建物。「さあ、カナタくん!まずはファイアーボールを覚えてみようか!」アレンさんと向き合う形で訓練を行うらしい。「片手を突き出して掌をボクに向けてみて」言われた通りに左手を突きだす。「まずは魔力ってのを感じないといけないね。左手の掌に集中してみて。目を瞑って力を蓄えるように意識しながら」目を瞑り魔力というよく分からない力を感じる為意識を左手の掌に向ける。すると何かが掌に纏わりつくような感覚があり、違和感を覚えた。「アレンさん、何か左手に言葉で表せないような違和感があります」「そう!それだよ!それを感じなければ魔力適性がないから覚えることは出来なかったんだけどまずは第1段階クリアおめでとう!」嬉しそうに目を細めて、僕を称えてくれる。「次はその感覚を忘れないようもう一度やってみて」再度、左手に意識を向けると何かが纏わりつくような感覚になった。「今だよ、火をイメージしてみて」火?熱い、揺らめく炎、なんとなく自分が思い付く限りのイメージを思い描く。「火が球になっていくイメージを」そうか、ファイアーボールだから火の玉か。火の玉が掌から生み出されてくるようなイメージを思い描く。「その火の玉が掌から勢いよく外側に向かって飛んでいくイメージを」よくマンガとかで見る光景ってやつだな。言われた通り頭の中でイメージしてみた。「よし!そのイメージを保ったままファイアーボールと叫んでみよう!」「ファイアーボール!!」すると掌からアレンさんに向けて轟音と共に勢いよくボーリング大の火の玉が飛んでいく。無から有を生み出す初めての試み。こんな心躍る瞬間があったとは。勢いよく飛んだ火の玉はアレンさんの結界に阻まれて弾けたが、今この瞬間僕が魔法を使ったことに変わりはない。沈黙して自分の左手を
last updateLast Updated : 2025-01-29
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忍び寄る悪意⑦

「すごい!!ここまでの練度で魔法行使ができるなんて、これは教えがいがあるぞー」攻撃を受けたにも関わらずとても嬉しそうな表情を浮かべるアレンさん。僕にも変化はあった。それは疲労感。全力疾走した後に起こる脱力感と足に力が入らない疲労感が一気に襲いかかってくる。「おっとっと」まっすぐ立つことも容易ではないほどに疲れた……これはなんなんだろうか。「それは、魔力枯渇だね。慣れない魔法を一気に使ったもんだから体内の魔力が無くなっただけさ」少し休めば治るらしいが、これは結構しんどいぞ。魔法を使うときは考えて使わないといけないな。「安心していいよ、魔法を使えば使うほど魔力は増えるから訓練すればその疲労感もなくなってくるからね」そんなアレンさんの助言も途中から耳に入らなくなっていき、次第に目の前が真っ暗になるようにして、僕は意識を手放した。意識がなくなる直前にアレンさんの独り言が聞こえてくる。「これは、レイに怒られるかもしれないなぁ……」 ――――――目を覚ますと、見慣れない天井。ベットに寝かされているようだが、ここは拠点内の部屋なのだろうか。多分アレンさんが運んでくれたのだろう。身体を起こしリビングへと足を向けるが、何やら話し声が聞こえてきた。「何を考えているんですか!団長!カナタくんにもしもの事があったら私達は一生帰ることができないんですよ!」「ご、ごめん……思った以上に飲み込みが早いから中級魔法まで教えちゃったら出来ちゃったんだよ」「たった1日で中級魔法まで覚えるなんてカナタすげぇじゃねぇか。これは負けてられねぇな!」誰が何を話しているか口調で分かるな。レイさんに怒られるアレンさんと、意味の分からない勝ち負けにこだわるゼンってところか。リビングの扉を開けると室内にいた全員が一斉に僕に目線を向ける。「すみません、倒れてしまったようで……
last updateLast Updated : 2025-01-30
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忍び寄る悪意⑧

「初めまして、よろしくカナタ」 「これからよろしくお願いします、アカリさん」 声も幼いな。 絶対歳下だなこの子は。 「カナタ、私に敬語はいらない。素早く正確に言葉を伝えるには敬語は不適切」 えらく淡々としているんだな。 確かに護衛なら手短に用件は伝えて動いてもらわないといけないし、理にかなっている。「わかった、これからよろしく」 そういうと片手を差し出してきた。 握手しろってことなのかな、一応この子なりの挨拶なのだろう。 「カナタくん、この子はここにいるメンバーで3番目に強いわ。だから護衛には適任だと思ったの」 え!剣聖より強いのか!? 「あ、もちろん剣聖は除いてね。黄金の旅団は剣聖以外が団員なの。剣聖に関しては協力者って立場ね」 「カナタ、私の二つ名は神速。誰の目にも止まらない攻撃が得意」 なにそれカッコいい。 神速だって?絶対速いじゃないか、音速を超えるのかな。 「カッコいい二つ名だね。その二つ名ってやつは誰が決めるんだ?」 「勝手に周りがそう呼ぶ」 なるほど、周囲が勝手に決めたものが定着して二つ名となるのか。 僕ならなんて二つ名が付くだろうか。そんなことを考えているとアカリが鼻で笑う。 「カナタに二つ名をつけるとしたら地味天才」 地味なのか……やっぱり地味な見た目してるんだな僕は。 「こら!アカリ!思ってても口に出したらだめでしょ!!」 フェリスさん、貴方のその言葉がもはや一番傷つくんです。 「とりあえずカナタくん!!」 一際大きな声でアレンさんが叫ぶ。何事かと皆が振り向くと真面目な顔で僕に話しかけてくる。 「カナタくん、君は想像を超えた逸材かもしれない。君がもしもボクらと共に異世界に行くというのならボクが面倒を見よう」 周りがザワつく。 殲滅王がそんなこと言うなんて初めてじゃないか? 団長の真面目な顔久しぶりに見た。 逸材を独り占めなんてずるいぞ団長。 などと皆が口々に喋り出す。異世界に行く、か。 ど
last updateLast Updated : 2025-01-30
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