All Chapters of (改訂版)夜勤族の妄想物語: Chapter 11 - Chapter 20

102 Chapters

2. 「最強になるために」⑩

-⑩理事長室- パスワード解析装置のおかげで理事長室への侵入は容易であった。勿論、深夜の侵入である。結愛は装置を懐に入れて部屋に入って行った。義弘の理事長室は他の学校と同じくお洒落なお部屋が広がっていた。結愛と海斗は持ち込んだ赤外線スコープを掛け調査を始めた。本棚からデスクなど怪しそうな物が立ち並ぶ。指紋を付ける訳には行かないので手袋を付けての創作となった。中央のテーブルの裏などを隈なく調べていった。  海斗がデスク裏で引き出しを少し動かすと怪しげな赤っぽいボタンを発見した。恐る恐るボタンを押す。赤外線センサーが解除された後に物音がした。「ガコッ・・・!」 すると中央のテーブルが少し引っ込み2つに割れ、下に続く階段がお目見えした。2人はゆっくりと降りていく。しかし数段降りた後海斗が床のトリモチに気付いた。海斗「結愛、逃げるぞ!!」 2つに割れていたテーブルが段々と閉まろうとしていた所をギリギリで脱出した。結愛「取り敢えず、赤外線センサーの解除スイッチを見つけただけでもマシだな、少しずつ調べていくしかないようだな。」 その時、外がバタバタと騒ぎ出した。黒服だ。一斉に校舎内に散らばり理事長室に侵入した人間を探そうとしていた。両手にはピストルを持ち、銃撃する準備は万端だ。理事長室にはその内2人が残っている。 2人は一旦退陣する事にした。黒服が窓の外を見た瞬間に椅子やテーブルの陰に隠れながら理事長室の出口を目指す。思ったより簡単に二人は脱出に成功した。海斗「あいつら、馬鹿だな。」 結愛「どんくせぇ。」 二人は教室に走って行った。  一方、光明は各フロアの出入口のカメラからの映像をやや早送り気味でチェックしていった。でないと何個も何個も出入口があるこの学校の映像を全て見えない、ただ一人では不可能なので守と圭を誘うことにした。長時間見続けなければならなくなるが一瞬も見逃せない。守「でも何で俺達なんだよ、光明。」 光明「すぐ隣にいたから。」 守「某有名アルピニストか・・・、まあいいか。」 光明「座布団没収。」 守「やめんか、ケツが痛くなるだろうが。」 光明の笑えない冗談のお陰で少し場が和んだので守と圭は光明に感謝したその場に結愛と海斗がやって来た。結愛「ちょっといいか?」 守「ん?」 海斗「実は理事長室に隠しスイッチを見つけたんだ、ただ
last updateLast Updated : 2025-01-21
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2. 「最強になるために」⑪

-⑪謝罪と協力- 以前結愛が改造した校舎各所に元から設置された監視カメラのハッキングに光明が成功したとの連絡が入ったので海斗と結愛は深夜光明の元へ向かった、兄妹も光明も同様の可能性を示唆していたのだ。念のため、結愛が光明に持ち掛けていた。-数時間前-結愛「光明、ちょっといいか?」 光明「ん?」 結愛「俺も兄貴も考えてたんだけどな。」 光明「うん。」 結愛「理事長室や出入口付近以外から親父が出入りしている可能性ってないのかなってよ。」 海斗「壁に隠し扉・・・的な。」 光明「それは俺も考えてた。」 その時、用を済ませ化粧室から出てきた琢磨が教室に入ってきた。琢磨「何の話だよ。」 光明「ん?光明か・・・、実はな・・・。」 光明が琢磨に先程までの会話の内容を伝えた。琢磨「確か監視カメラって結愛が改造してたよな。」 光明「実はそのカメラの解析と改造に成功したんだよ、ちょっと見てくれるか?」 光明はパソコンに映っている監視カメラの映像を見せた。光明「これは以前結愛が以前改造した監視カメラの映像だ。念のため、監視側には以前と同様に同じ映像がずっと流れる様にいじくってある、証拠を見せないとな・・・。」 琢磨「なぁ、俺も協力できねぇか?」 光明「いいけど、お前がいいなら。」 琢磨「前に結愛の事を疑っちまったから、なんつぅか・・・、謝りたいというか・・・。」 結愛「それは仕方ねぇよ、必ずしも起こりうる事だと俺も海斗も思ってたからな。俺たちは嬉しくねぇが『貝塚』だからな。」 琢磨「お前ら『坊ちゃま』と『お嬢様』だもんな。」 結愛「やめろよ、そう呼ばれる度に吐き気がするんだ。」 海斗「俺も。」 守「演技が上手いんだな。」 圭「それ褒めてんの?」 守「少なくとも俺はそのつもりさ。それにこれは使えるかもしれないだろ。」 結愛「『演技』か・・・。」 海斗「確か『あいつら』って・・・、だよな?」 全員「確かに・・・。」 そこにいた全員が共感していた、ただ今は作戦会議が優先だ。琢磨「一先ず俺がどれかの監視カメラの前に行くわ、そこでだが無線機を通して誰か何かを俺に指示してくれるか?」 光明「あいよ。」 琢磨は光明からスコープや無線機を受け取ると一番近くの監視カメラへと向かった、最寄りのカメラまではさほど時間がかかることなく到着した。海
last updateLast Updated : 2025-01-21
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2. 「最強になるために」⑫

-⑫偽装作戦- 光明は疑問に抱いていた事を海斗にぶつけた、必ずと言っていいほど作戦実行に必要だからだ。光明「なぁ、理事長室に潜入したときに罠だったけどボタンを見つけたって言ってたよな。」 海斗「確か・・・、義弘が使ってるデスクの裏のやつだよな。」 光明「うん、そのボタンの周辺にスペースって無かったか?機械でボタンを押してわざと侵入者が出たようにしたいんだ。」 海斗「どれぐらいのスペースが必要なんだ?」 光明「2cm四方あれば大丈夫だ。」 海斗「よし、おれに任せてくれ。」 光明「いや、それには及ばない。今回の為に開発したんだ。」 すると光明はとても小さなドローンを取り出した、内視鏡カメラが付いている。そのカメラの先端にはスマートスイッチが付いていた、これを理事長室のボタンに取り付けて誰かが押したかのようにするのだという。いつの間にか開発していたので海斗は驚いていた。2人は作戦実行の日にちを決め、結愛や守、琢磨、圭、橘にも協力を要請して全校生徒に伝えた。その時、作戦時に使用するイヤホンを全校生徒に配っていた。作戦実行の瞬間に生徒が廊下に出ていたら速攻で疑われ、作戦が台無しになってしまう。教室にとどまるように連絡を行った。  次の日の深夜、全員が教室にとどまった事を確認すると、作戦実行の連絡をした海斗の案内で光明がドローンを飛ばし理事長室を目指した。因みにドローンには潜水艦のようなステルス機能があるので誰からも見えないし監視カメラにも映っていない。それが故に理事長室には簡単に到着した、超小型のパスワード解析装置も仕掛けられているので入り口はすぐに開く。ドローンから送られる映像が光明のパソコンに表示され海斗がそれを見ながらデスクへと導く。勿論赤外線スコープ機能もあるのでセンサーもするすると抜けていった。問題のボタンがある引出しを動かして両面テープでスマートスイッチをくっつけた、急ぎながらも冷静にゆっくりとドローンを教室まで飛ばして回収を行った。海斗が全校生徒に改めて確認の連絡をする。海斗「あー、あー、皆さんイヤホンから俺の声は聞こえていますか?改めまして貝塚海斗です。ただいまスマートスイッチの装着とドローンの回収に成功しました。これからわざと罠を起動させて黒服が何処から出てきているのかを監視カメラを通して見ていきたいと思いますのでご協力お
last updateLast Updated : 2025-01-21
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2. 「最強になるために」⑬

-⑬不審な点、重要な戦力- 光明は海斗が指したカメラの映像を見た。1番3番4番6番カメラだけ黒服が映っていない。同様に壁が開いているのだがその4か所だけ黒服が出てこなかったのだ。光明「ここって確か・・・。」 海斗「そうだよな、元々、食堂だったり家から遠い入口だったりする場所だよな。余りにも不自然すぎる。この前のドローンって何台か予備はないか?」 光明「大丈夫だ、任せろ。」 他のクラスの生徒からイヤホンを通して連絡がやって来た。生徒「もう大丈夫?そろそろトイレに行きたいんだけど。」 海斗「すまない。だいぶ黒服も退いて来たからそろそろ問題ないと思うぞ、ありがとう。」 生徒「了解、その言葉を待ってた。」 海斗「あと、お礼と言っては何だがある程度の食料を2年1組の教室に用意してあるから皆で食べてくれ。」 各クラスの代表者「分かった。」 結愛は光明の技術を以前から賞賛していたし光明の事を信頼していた、ただ結愛の場合は信頼以上の感情を抱いている可能性が高いのだが。どうしても協力したくなる感情を抱き始めている様な気もしていた、光明にとっては心強い味方となっていたので助かっていた。結愛「み、光明・・・、あのさ・・・、何か協力できないか?」 光明「そうだな・・・、今度結愛の家を案内してもらえるか?勿論、カメラの映像を通してだが。」 結愛「うん、任せろ。」 結愛はどこか嬉しそうにしていた。  しばらくの間、物事を起こさないようにしていた。義弘や黒服に感づかれないために。しかし何もしていなかった訳ではない、密かに集まって作戦を立てていたのだ。理事長室の罠をわざと起動させてからどうしようか、と。  一先ずは黒服が出てこなかった各箇所の隠し扉が何処に繋がっているのかを探ろうということで満場一致した。しかしそのためには前回の様な騒ぎをまた起こさなければならない、その上でカメラを数台用意するか騒ぎを数回起こすか選択することになる。皆は迷わず前者を選んだ。度々騒ぎを起こすと流石に義弘に怪しまれる。2回も起こしてしまっているのだ、流石に次は起こしづらい。そこで守が別案を出した。守「なぁ、黒服が出てこなかった4か所の隠し扉をこっそり開ける事って出来ないかな。誰からもバレずにというのが前提だが。」 光明「最初に壁を解析して場所を探らないとだな。しかし視覚では分からな
last updateLast Updated : 2025-01-21
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2. 「最強になるために」⑭

-⑭音で見る- 伊津見が合流して一緒に調査を始める事になり数日の間、一先ず怪しい出入口を見つけようとドローンで様子を伺う事にしていた。そしてついに伊津見の能力を利用しようとこっそりと行動を始めていく。ゆっくりと静かに飛んでいくドローン、通り過ぎる黒服や他の生徒は全く持ってドローンに気付かない。そんなこんなで以前、黒服が出てこなかった出入口付近の壁まではいつもの事なので容易に辿り着いたが何故か今日は黒服がずっと直立不動での監視を行っていた。ただ、光明の小型ドローンは全然見えてはいない、小さい上に深夜なので余計なのだ。蚊程の大きさしかないので全然気にならない、なので黒服に動きが見えるまで観察することにした。  数分後、罠を発動させてないのに壁がパカっと開いた。中から汗まみれの義弘が出てきた。光明「おい、見ろよ。あれ義弘だぞ。」 結愛「ここって俺らの家から一番遠い出入口だよな。」 海斗「『敢えて』って可能性もあ・・・。」 伊津見「シッ!お二人ともお静かに、親父さん何か話してます。」 結愛「兄貴にもタメ口でいいぞ。」 海斗「それに海斗って呼んでくれ。」 伊津見「分かった、取り敢えず親父さんが何言ってるか聞いてみるわ。」 海斗「意外とあっさ・・・。」 伊津見「待って。」 何か意味ありげな表情だなと光明はスピーカーの音量を上げた。黒服「ご主人様、ご足労お疲れ様でございます。」 義弘「いつもの事ながらだが、家からここまでハイハイで動かないといけないのは大変だな。それに苦手なジャージまで着て、毎度毎度ため息が出る。それと君、ここでは理事長と呼べと何度言ったら分かるのかね。」 黒服「はっ、理事長、大変失礼致しました。申し訳ございません。」 義弘「まぁいい、怪しまれないように敢えて一番遠い出入口にしたのは私自身だしな。さぁ、急いで閉めるんだ。」 黒服が別の壁を開けボタンを押すと、自動で隠し扉が閉まり壁と同化していった。隠し扉がロックされLEDが緑から赤へと変色した、そして義弘たちは理事長室へと向かった。結愛「どうやらここが家に繋がっているらしいな。」 海斗「でも完全に壁に同化して塞がっているぞ、ここは光明といっつんの出番だな。」 光明「任せろ。」 光明は伊津見にヘッドフォンを渡すとドローンを動かし始めた、先程黒服が扉を閉めた時に使ったスイッチ付
last updateLast Updated : 2025-01-21
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2. 「最強になるために」⑮

-⑮隠し扉- 早速2人は見つけたスイッチを使って隠し扉を開ける事にした。パスワード解析装置を使ってパスワードを解析し、テンキーを動かしていく。「ガチャッ・・・。」 隠し扉の鍵が開いたようだ、光明の操作でドローンを動かし扉の中へ入っていく。中は暗いので暗視カメラを使用しないと進んでいけなかった。ゆっくりと慎重に前へと進んでいく。光明の隣で画面を凝視する結愛。しばらくすると円状で広々とした空間に出た。光明「どうだ、見覚えあるか?」 結愛「全くだな。全体がコンクリの壁。こんな空間家では全く見たことねぇ。」 海斗「向こう側にも通路があるらしいな、ここが家に通じているのか?」 光明「とにかく行ってみよう。」 光明はドローンを慎重に進ませていった、念の為に赤外線スコープを常に作動させていた。奥に奥にどんどん進んでいく、すると一番奥に木製の扉を発見した。周囲には怪しいものは何もないようだった、慎重に扉を開けていく。そっと・・・、そっと・・・。  中に入ると全体的に洋風の壁の部屋があった。光明「もしかして・・・。」 結愛「俺たちの家っぽいけどこんな部屋あったか?」 取り敢えず光明は部屋の天井にドローンをくっつけ隠しカメラの様に部屋を監視していく事にした、愛と海斗は何かを思い出したような表情をしていた。海斗「そう言えば俺らは立ち入り禁止の部屋がいくつかなかったか?」 結愛「確か1階と2階、4階に1部屋ずつあったな。」 琢磨「お前らん家何階建てだよ。」 海斗「地上5階建てに地下・・・。」 守「地下?!」 結愛「あったか?」 琢磨「知らねーのかよ!」 海斗「地下は無かった。」 橘「無いんかい!何で言ったんだ!」 海斗「いや、たまにはボケとかないと。」 守「空気読め!」 海斗はそこにいた全員にビンタされた。海斗「痛(いて)ぇよ、場を和ませてもいいだろ。」 結愛「はいはい、ありがとねー。(棒)」 全員、ため息をつき呆れ顔をしていた。  それを横目に光明はドローンを左右に動かしていく、しかし先程開けた木製の扉以外には出入口らしいものは見つからず、ほぼ一面壁のみの部屋となっていた。光明「しばらく様子を見て義弘が出入りするのを待つしかなさそうだな。」 結愛「娘の俺が言うのもなんだが、親父も手の込んだことするな。」 海斗「多分校舎と同じよ
last updateLast Updated : 2025-01-21
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2. 「最強になるために」⑯

-⑯立入禁止部屋- 先程の様なやり取りがあった後、伊津見はしゅんとしながらまたヘッドフォンを付け捜索をし始めた。どうやら光明はあまり良い所を言わなかったようだ、煽った3人も申し訳なさそうな顔をしていた。まさに『気まずい』という言葉がぴったりだった。  トイレから戻って来た光明の表情も同じようなものだった。伊津見「何か・・・、悪かったな。」 光明「俺も・・・、すまん。」 結愛「というか悪いのは煽った俺達だよな、悪い。」 光明「取り敢えず作戦再開だな。」 伊津見「うん、また今度飯でも行こう。」 光明「そうだ・・・。」 伊津見「みつもん、待ってくれ!」 光明「ん?」 伊津見「微かだがここだけ空気の流れが違う音がしたんだよ。」 琢磨「そんなのも聞こえるのか?」 光明「コンコンしてみるか。」 光明はドローンで以前の様に壁をコンコンした、すると一部の壁が一瞬だが横に動いた。光明「ん?引き戸か?結愛、開けるぞ。」 結愛「うん、頼む。」 光明は隠れていた引き戸を開け部屋から出るようにドローンを動かした、その先には廊下の様なものが広がっている。洋風の壁紙に赤い絨毯が敷かれた床。左右に長いものが目前に広がっていた。海斗「どっちでもいい、ゆっくりと前進してみてくれ。」 ドローンを進めていく光明、深夜だから基本真っ暗なのだが偶に電気が点灯している所を見つけたので中の様子をある程度伺えた。そして大広間っぽい場所にある階段を見つけた瞬間・・・、結愛「すまん光明、ここからさっきの場所に戻れるか?」光明は電灯を頼りに先程の場所に戻ると、結愛「やはりか・・・、ここは1階の『立入禁止部屋』だ。そこに実は扉があるんだが全く動かなかったんだよ、そういう事か・・・。」 海斗「畜生・・・、親父にやられたぜ。」 橘「じゃあやはり家と学校が繋がっていてここが隠し通路って訳だったんだな。」 琢磨「大きく一歩前進したな。」 守「でも大切なのはここからだ」 圭「進もう。」 光明は慎重にドローンを動かして行った、怪しそうな場所を知るため兄妹に案内をお願いすることにした。明らかに怪しいのは他の階にある立入禁止部屋なのでそれらを捜索していく事にした。まずは2階にある部屋を探すことに。 大広間にある大きな階段を上るとまた廊下が広がっていた。そこをゆっくりと進む。奥の一角
last updateLast Updated : 2025-01-21
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2. 「最強になるために」⑰

-⑰大きな一歩- 夜が明けようとしていた、基本的な潜入作戦は深夜に行っているのでとても小さなドローンは見つからない限りほったらかしにしておいても大丈夫な状態だと言える、なので光明は海斗や結愛の了承の下、義弘の秘密の図書館、いや書斎の天井にドローンを停めてその場を監視することにした。しかしもうすぐ早朝補習が始まる時間だ、停まったドローンは録画体制に入った。  忘れてはならない事だが彼らは高校生でこの学校はありとあらゆる物を投げ捨ててでも大学受験に熱を入れている場所だ、補習を欠席したらどういった制裁があるか分からない。伊津見のクラスメイトが銃殺されたのも事実だ、全員は素直に補習に出席しているフリを可能な限り行った。しかしその裏で義弘のみだけが入れる立入禁止部屋の大部分となる書斎の監視もできている状態だ、これは大きな一歩と言えよう。  早朝補習は講師陣による補習でまだ教師は出勤してきていない・・・、はずだった。ただ今日はいつもと違って学園の講師教師全員が朝一から出勤していた。やたらと黒服もうろついている、明らかにいつもと様子が違う、貝塚財閥で何かがあったのだろうか。  結愛は不本意ながら貝塚の人間であるので通りかかった黒服に尋ねてみることにした。結愛「おはようございます、黒服さん。」 黒服「・・・。」 黒服は深夜からずっと巡回していたのだろうか、意識が朦朧としている様だ。結愛はもう一度話しかけてみた。結愛「黒服さん?」 黒服「あ!結愛お嬢様!おはようございます!大変失礼致しました。申し訳ございません。」 結愛「おはようございます、朝から如何なさいましたの?」 黒服「・・・と仰いますと?」 結愛「講師の方々に加えて教師の方々、ましてや黒服の皆さんが全員朝からいらっしゃるなんて異様ですわ。」 黒服「恐れ入りますが私は存じ上げておりません、昨夜村岡黒服長に残業を頼まれただけなのです。」 結愛「村岡さんが?!あの、働き方改革にかなり真面目な村岡黒服長さんが?!」 黒服「はい、私も耳を疑いました。」 結愛「分かりましたわ、ありがとうございます。今日は構いません、私から村岡さんに伝えますので今日は上がってくださいませ。」 黒服「はっ、失礼いたします。」 黒服は安堵の表情を浮かべその場から離れていった、暫くして別の黒服が近づいて来た。  結愛は大人
last updateLast Updated : 2025-01-21
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2. 「最強になるために」⑱

-⑱会長- 元に戻った結愛が守たちをジロリと見た。結愛「何だよー、今のは俺んちの黒服のリーダーの一人だよ。性格は優しいんだが目がいかついから少し苦手なんだよ。」 守「黒服長って何人もいるのか?」 結愛「一応シフト制って事になってるが基本的には交代制だ、後俺が知ってるの黒服長は2人いるよ。」 圭「それより会長って?」 結愛「俺のじいちゃんな、家や会社にあんまり顔を出さないが外出する時は何人もの黒服を連れていることが多いんだ、ただ目立つのが嫌いだから少人数のことが多いんだよ。」 琢磨「侵入者って聞いたぞ。」 結愛「ああ・・・、じいちゃん他方から命を狙われやすくてよ、会社内にも侵入者がいる事なんて日常茶飯事なんだよ。いつもはひっそりと別宅に住んでるんだが・・・。」 その時、窓の外からけたたましいエンジン音がした。どうやら真っ赤な外国産のスーパーカーの様だ。結愛「あ、じいちゃんだ。」 橘「いや、逆に目立たね?!」 車のガルウィングが開きサングラスにハワイアンな恰好をした老人が降りて来た。光明「やっぱ目立たね?!」 老人、いや会長の貝塚 博(ひろし)は結愛に向かって手を振った。博「おー、結愛ー、元気だったかー?」 結愛は辺りを見回してから手を振り返した。結愛「おー、じいちゃん!久しぶり!」 琢磨「会長だよな・・・。」 守「フランクだな・・・。」 結愛「じいちゃん堅苦しいの嫌いだからな、他の大人がいない限りは俺もじいちゃんに合わせてんだよ。」 圭「理事長とキャラ全然違うね・・・。」 海斗「だから会う度に喧嘩が多く・・・。」 義弘「父さん!こんな所で何しているんだ!家で待ってたらこんな所に・・・、先に連絡ぐらいしろよ!服装だって貝塚財閥の会長らしくない、会う度に言っているがいい加減にしてくれ!」 博「相変わらず堅苦しいなお前は。いつも言っておるだろう、いつどこでも大切なのは人だというのに自分の考えのみが正しいと思うからそう怒鳴るんだ。」 義弘「この学園と財閥を作ったのは私だ、ここは私のもので、ここでは私がルールだ。名ばかりの会長である父さんにどうこう言われたくない。」 博「だからって若者の青春を奪う権利はお前にも、いや誰にもない。ここには食堂などの生活、そして部活動に必要な施設が全くないじゃないか、昼休みを含んだ休み時間が少なす
last updateLast Updated : 2025-01-21
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2. 「最強になるために」⑲

-⑲贈り物-羽田「お嬢様、これを。」 結愛「どなたからですの?」 羽田「会長からでございます、くれぐれもご・・・、いえお父様には内緒とのことで。」 結愛「分かりましたわ、ありがとうございます。」 羽田はその箱を結愛に渡し、すぐに立ち去った。結愛はすぐにその箱を開け中身を確認した、結愛は中身を確認して震えていた。ただ事ではない事をそこら辺にいた生徒全員が察した。琢磨「お、おい・・・、大丈夫なのかよ。」 結愛は質問に答える事無く震え続けた。そしてにこやかに笑った。結愛「これ欲しかったんだよー、ずっと探してたんだ、じいちゃん流石だぜぇ!この限定フィギュアずっと前から欲しかったんだよねー。」 生徒「は、はぁ・・・。」 お嬢様なのにまさかのヒーローもののフィギュアが大好きな奴だったとは、守や光明は呆然としていた。しかし、贈り物はそれだけではなさそうだった。  海斗が物凄い剣幕で教室に駆けよってきた。海斗「おい、結愛!これ見たか?!」 結愛「何だよ、お前が好きなバンドのベストアルバムじゃねぇか。」 海斗は博から自分へのプレゼントの箱を見せてきた、本当の贈り物は奥底に隠されていたのだ。  結愛は奥底の厚紙を剥がし、中身を確認した。それはそれは相当価値のあるものであった、博からの『自分達でどうしようもできない時に使いなさい、おじいちゃんからの愛情を受け取っておくれ。お友達を大切にね。』とのメッセージと共に。  博からの本当の贈り物、それは『貝塚財閥全権一週間強奪券』--その名の通り義弘が握る貝塚財閥の全権を1週間自分の物に出来るチケットだ。因みに義弘には拒否権は無いらしい、財閥の状況を察した博を含めた貝塚財閥の大株主たちが義弘の暴走を抑える為に作ったものだった。使うためには義弘、黒服、若しくは大株主の1人にこのチケットを渡す必要がある。そして義弘の手に渡った時点から一時的に1週間貝塚財閥の全権を握ることが出来る事になっている。早速結愛は博にお礼のメッセージを送った。結愛(メッセージ)「おじいちゃん、貴重なプレゼントありがとう。それに久々におじいちゃんに会えて俺も兄貴も嬉しかったよ、今何処にいるのかな?また、会いに来てね。」 すぐに博から返信が来た博(メッセージ)「おじいちゃんも会えて嬉しかったよ、贈り物受け取ってくれたかな?今おじいちゃんはハワ
last updateLast Updated : 2025-01-21
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