詩織は少しイライラして言った。「北兄さんは私に会うのを拒否しているけど、渡辺おばあさんの手術の時間がもう近いから、もし北兄さんが現れなかったら、私は何を利用して拓海と取引したらいいんだろう?」北兄さんに渡辺おばあさんの手術をしてもらうのは、彼女に残された唯一の切り札だった。「お嬢様、どうせ拓海さんが見つけた医者はもう手術できないんですから、彼はお嬢様のお兄様に頼むしかないんです。急ぐ必要はありませんよ」「焦らないわけないでしょ。あの日病院で拓海がまず紗希を助けたのを見たでしょう。それに、彼は私の条件を承知してくれず、他の医者まで探して渡辺おばあさんの手術をしようとしたのよ」詩織は事態の発展が自分の予想を超えていると感じ、特に拓海の紗希に対する態度に危機感を覚えていた。「お嬢様、拓海さんはお嬢様を頼りにしている限り、まだ望みはありますよ」「そうね。でも拓海からの連絡がまだないの」詩織は心配に思い続け、拓海がどんな決断を下すか分からなかったからだ。彼女は急いで言った。「北兄さんのいる場所を調べる人を増やして、私は赤十字の知り合いに聞いたけど、北兄さんがそっちには行ってないみたい」今の急がないといけはいことは、北兄さんを見つけて、渡辺おばあさんの手術を説得することだ。もし北兄さんがそれを承諾すれば、全ては簡単に解決できる。——紗希はスーツケースを持って学校に入学手続きに行った。何年ぶりかに戻ってきた学校を見て、しみじみとした気持ちになった。「紗希、おかえり!」美咲は走ってきて彼女に大きなハグをした。「あなたが退学したって聞いた時、私はとても悲しかった」紗希は少し感慨深げに言った。「仕方がなかったんだけど、幸運にも今は戻って来れたわ」「戻ってきてくれて本当によかった。学校の寮まで案内してあげる。そして、後で一緒に食事に行こう。あなたが今日帰ってきたことを聞いて、先生も含めてみんなが会いたがっているそうよ。」紗希は荷物を寮に置いて、美咲と一緒に昔仲良くしていたクラスメイトに会いに行った。今の彼女はまだ学生だが、当時のクラスメイトはもう卒業間近だった。「紗希、あなたは休学してたのに、国際パイオニアデザイン大賞で一位取れるなんてすごいね。私たちは三年間に一生懸命に頑張ったけど、まだあなたに追いつけない。担任の
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