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第118話

紗希は頷いた。「その通り、北兄さん、あなたは獣医だけど、医学専門クラスでもあるでしょ?有名な心臓外科医と知り合いの先輩、友人、同級生を知らない?」

「大丈夫、心臓外科医の知り合いはいるよ、ただ大京市の人だけどね。 でも、予約はできるよ」

妹の友人が助けを必要としている限り、彼はどんなに忙しくても手術の時間を確保するつもりだ。

手術をするだけで妹の心配を解消できるなら、実際とてもお得だと考えた。

「本当?それは素晴らしいわ」

紗希は心に喜びの色を浮かべた。拓海が結婚で脅されるのを嫌がるなら、北兄さんが紹介する医師を試してみるのもいいかもしれない。

青阪市で適切な医師が見つからなくても、大京市にはいるかもしれない。

その夜、紗希は実家で寝て、どこにも行かなかった。

明日拓海にこのことを話そうと考えた。

真夜中、電話の音で目を覚ました。向こうから拓海の冷たい声が聞こえた。「おばあさんが救急室に運ばれた。お前はどこにいる?」

「すぐに行くわ」

紗希は電話を切り、そっと服を着替えて出かけ、すぐに病院に向かった。

道中、紗希の手は震えていた。昨日渡辺おばあさんを見舞った時、渡辺おばあさんはまだ元気だったのに、どうして突然救急室に行くことになったのだろう。

タクシーが病院の外に停まると、紗希は一目散に走った。まるで間に合わないかもしれないかのように。

彼女は拓海が救急室の外に立っていたのを見た。その背中は寂しくて、今の夜空のように寒々としていた。

彼の悲しみを感じ取り、彼女は彼の側に寄り添って一緒に待った。

しかし、待つ時間は非常に苦しかった。

しばらくして、紗希はようやく口を開いた。「拓海、言いたいことが...」

「明日、離婚しよう」

彼の声は静かで冷たく、夜の冷たい風のように彼女の心に吹き込んだ。

彼女は手術室の外で点滅する光を見つめ、最後に頷いた。「分かったわ」

本来なら、二人の結婚はもっと前に終わっていたはずだった。

最初から間違いだったのだから、今その間違いを正さなければならない。

拓海は目を伏せた。彼女はとても落ち着いて、このことをすぐに受け入れたように見えた。

彼は思わず口を開いた。「さっき何か言おうとしてたよね?」

紗希は首を振った。「何でもないわ」

彼女は大京市の医師を試してみることを提案しようと思ったが、今
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