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第122話

帰って休もうとした時、奈美はヒールを履いて入ってきて、紗希にある書類を投げつけた。「あなたはこれをこの場所に届けて。もし顧客が満足しなければ、デザインを変更するから」

紗希は一瞥して言った。「これはあなたの仕事でしょう」

「そうね。でも今ちょっと用事があるの。だからこれはあなたのするべき仕事よ。あなたは給料をもらって何もしないわけにはいかないでしょう」

奈美はそう言って去っていった。

紗希はその書類を見てため息をついた。仕方ない、これを済ませたら家に帰って少ししばらく休んだらいい。

彼女は熱いお湯を一杯飲んで少し汗をかくと、ようやく気分が良くなってきた。

紗希はタクシーで高級住宅に向かい、表札の番号に従って中に入った。彼女はドアを開けたメイドを見て言った。「こんにちは。XXスタジオの者ですが、オーナー様が当社のインテリアデザインにご満足いただけているかどうかお伺いに参りました」

「中へどうぞ」

紗希は案内された大広間に入ると、中央に掛かっている白いウェディングドレスが目に飛び込んできた。その服はきらびやかで美しかった。

「誰かの目が曇っているんじゃないかしら。これはアムサレの高級ブランドのウェディングドレスよ。世界限定で1着しかないのよ」

玲奈は得意げに横から現れた。「これは詩織姉さんの婚約式用のドレスよ。きれいでしょう?あなたは一生働いても、これについているダイヤモンド1個も買えないわ」

紗希は玲奈を見て、やっと奈美が突然自分にここに来させた理由がわかった。そういうことだったのか。

詩織は2階から降りてきて、笑みを浮かべながら言った。「玲奈、そんなこと言わないで、ただのウェディングドレスよ。結婚したら、またオーダーメイドのウエディングドレスを買うわ。 今回はちょっと急いでるから、適当にしか選べないのよ」

紗希はすぐに気持ちを切り替え、仕事として詩織を見た。「詩織さん、今回の内装にご満足いただけたようですね。では、こちらにサインをお願いします」

この2人は単に自慢したいだけなのだ。

今は少し体調が悪いため、彼女はこの2人の女と揉めたくなかった。

詩織は書類を受け取りながら言った。「拓海と相談して、新しい場所に引っ越すことにしたの。面倒を避けるためよ。だから新しく家を内装し直したのよ」

これを聞いて、紗希は目を伏せ、何も言わなかった。
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