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第128話

紗希はなんとか北兄が信じてくれそうな理由を作り上げた。

北がまだ少し疑っているのに気づき、すぐに話題を変えた。「そういえば、北兄さん、どうして彼が拓海だってわかったの?」

彼女は以前、ある裕福な家庭で拓海が介護士をしていると話したことはあったが、北はどうして彼女を病院に送った人が拓海だと一目見ただけでわかったのだろうか?

北の表情が一瞬凍りついた。

詩織が長年拓海のことを好きだったため、彼は拓海の顔を知っていた。

もちろん、妹にそんなことは言えない。

北は少し躊躇してから答えた。「お前の受付情報の名前が拓海だったからだよ。さっき見るまでわからなかった」

紗希は拓海が自分の医療費も払ってくれていたとは思わなかった。

彼女は自分のお腹に手を当てた。ここで北兄さんに会えてよかった。そうでなければ、今日この子の存在は絶対に隠せなかっただろう。

もし拓海が医者に薬を出すよう強く主張していたら、彼女は子供を守るためにも本当のことを言わざるを得なかっただろう。ここで北兄さんに会えて本当に良かった、良かった!

北も彼女のお腹を見つめた。「紗希、この子を産むつもりか?」

紗希は手が一瞬止まった。「北兄さん、私、この子を産みたいの。 心配しないで、私は一生懸命ミルク代を稼ぐから」

「これはお金の問題じゃない。なぜクズ男の子供を産みたいのか、僕に話してくれる?」

「私はずっと一人だったから、子供が欲しいの。」

北は心が突然とても痛くなり、顔を覆い、しばらくして落ち着いてから言った。「わかった。産みたいなら産めばいい。」

「北兄さん、私が妊娠したことはまだ誰にも言ってないの。伯母にも。秘密にしてくれる?」

「ああ、いいよ。でもこのことは長兄には言わない方がいい。普段お前に優しいけど、長兄は短気な男なんだ。もしお前が妊娠していることを知ったら、彼は間違いなくお前を中絶するよう要求するだろう。でも、長兄はお前が未婚の母であることに心を痛めているから、気にしないで」

紗希は頷いた。「わかってる。ありがとう、北兄さん。」

彼女は未婚の母ではなく、シングルマザーなのだ。

でも、そう大差ないかもしれない。

紗希は少し眠そうにあくびをしながら、北のポケットを見て言った。「北兄さん、さっきからずっと携帯が光ってたけど、誰かに呼ばれたのか?」

北は携帯を取り出して確
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