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第131話

その「妊婦検診」という言葉を聞いて、拓海は眉をひそめた。紗希が今「妊婦」だということをすっかり忘れていた。

拓海は曖昧に答えた。「ああ、分かった」

「何が分かったの。私が言わなければ、お前は全然覚えてなかったでしょ?明日、紗希を私の病院に連れてきて検診を受けさせなさい」

おばあさんは言い終わるとすぐに電話を切った。

拓海はこめかみをさすりながら、裕太に言った。「おばあさんに気づかれないように、明日の産婦人科の予約を取ってくれ。」

裕太はすぐに頷いて、オフィスを出て行った。

拓海は携帯を取り出し、紗希にメッセージを送った。「明日の朝、病院に来てくれ。おばあさんが会いたがっているよ」

一方、病室で食事を済ませた紗希は、元気を取り戻した気がした。

北は病床の横に立って言った。「この薬を取り出して飲むんだ。ちょうどお前の妊娠検査をした結果はまだ出ていない、結果が出たら私はお前に伝える。夜には戻れるから、ゆっくり休んで、仕事で疲れすぎないで。葉酸を忘れずに食べてれ」

「分かった。北兄さん、ずっと聞きたかったことがあるんだけど、さっきまで聞くの忘れてた......北兄さんって獣医じゃなかったの?」

まさか今日、彼女は病院で北に会うなんて。

彼は全然獣医には見えない!

北は鼻をこすり、少し困ったように言った。「あれは冗談だよ。昔の夢は獣医だったけど、現実と夢は違うものさ」

紗希は頷いた。まあ、そう言われれば納得できた。

北は急いで話題を変えた。「今日は僕が当直だけど、直樹がちょうど撮影終わったから、お前を迎えに来てくれるよ」

紗希が断ろうとした時、直樹から電話がかかってきた。「紗希、今病院の駐車場に着いたから、すぐ行くよ」

紗希は直樹が現れるたびにパパラッチに撮られることを思い出した。最優秀主演男優賞の影響力は強すぎるからだ。

彼女は急いで断った。「いいえ、自分で降りるわ」

紗希は急いでベッドを降り、地下駐車場へ向かった。万が一撮られても大丈夫なようにマスクをつけた。

彼女はエレベーター前に停まっていた車を見つけると、そのまま乗り込んだ。

紗希は車に乗り込むと、特に外を確認して言った。「直樹兄さん、今回パパラッチはついてきてないよね?」

「心配しないで、運転手がもうパパラッチを追い払ったから。紗希、北兄さんから熱出て具合悪いって聞いたけど
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