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第130話

北は拓海に対する反感を以前よりも強く感じるようだった。

紗希は一眠りして目覚めると、消毒薬の匂いがして、自分がまだ病院にいることに気づいた。

でも、今は本当に随分良くなった。

北兄さんが処方してくれた薬が効いているようだった。

「紗希さん、お目覚めですか?トイレにお連れしましょうか?それとも何か食べたいものはありますか?」

紗希はそばに立っている介護士を見て尋ねた。「あなたは?」

「ご家族の方が頼まれた介護士です」

ああ、北兄さんが頼んでくれた介護士なのね。

紗希は本当に少しお腹が空いた。「油っぽくないスープと野菜が食べたい」

彼女がそう言った後、北は食事の入った箱を持って入ってきた。「紗希、目が覚めたんだね。お腹が空いただろう、食べ物を持ってきたよ」

紗希は困惑した表情で、そばの介護士を指差した。「北兄さん、介護士に食事を買ってくるように頼まなかったの?」

男性は眉をひそめた。「介護士なんて頼んでいないよ」

紗希は驚いて介護士を見た。「人違いじゃないですか?」

介護士は資料を確認した。「間違いありません。3号ベッドの紗希さんです」

「じゃあ、あなたを雇った人は何か情報を残していましたか?」

「はい、拓海さんという方です」

拓海?

紗希は拓海が介護士を頼んでくれたとは思いもよらず、急に複雑な気持ちになった。拓海がなぜこんなことをするのか分からなかった。

北は拓海の名前を聞いて、一瞬に顔色を変えた。やはりあの男は妹に下心があるんだ。介護士を誘ってまで取り入ろうとしている!

北は冷たい表情で介護士を追い払った。「ここには介護士は必要がないので、帰ってください」

介護士は少し不満そうに病室を出て、すぐに雇い主に電話をかけた。「もしもし、3号ベッドの紗希さんが介護士は必要ないと言っています。これまでの数時間分の給料を支払ってください」

裕太は少し驚いた。「なぜ介護士が必要ないと? 今は食事の時間ですが、彼女が起きた後に食事を持って行きましたか?」

「紗希さんはイケメン医師とラブラブですよ。イケメン医師が食事を持ってきたので、私のような介護士は必要ないみたいです」

介護士は陰気な表情で説明した。「あの紗希さんは魅力的な人ですね。そのイケメン医師はこの病院でも人気者です。他の患者さんにはこんなに優しくしないのに、紗希さんだけ特別扱い
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