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第137話

紗希は拓海が彼らに向かって歩いてきたのを見送り、彼が着ていたスーツに視線を落とした。

このスーツはきっと、数ヶ月前に彼女が選んだものだろう。

あの時は詩織がまだ戻ってきてなくて、彼はまだ離婚の話を出していなかった。

拓海は近づいてきて、紗希の手の番号札を見ると、眉をひそめた。

詩織はすぐに笑顔で前に出た。「拓海、ここで紗希に会うとは思わなかったでしょ。私と玲奈も不思議に思ったから、紗希と話しているの」

玲奈は急いで言い続けた。「拓海兄さん、紗希はまたどっかの男を引っ掛けたのよ。でなければ、彼女はこんな場所に来れるわけないでしょ?紗希は貧乏人のくせに、お金持ちになりたいなんて」

紗希の表情が冷たくなると、後ろから直樹の冷ややかな声が聞こえた。「遠くから耳障りな音が聞こえるし、こんな匂いの香水をつけても、お前の人品の低さは隠せないな。人を嫌な気分にさせないためにも、人と話す前にマナーを学ぶことをお勧めする」

直樹の言葉に、玲奈は顔が崩れそうなほど怒った。「拓海兄さん、あの人は私を侮辱したわ!」

拓海は直樹を見ると、目つきが冷たくなった。

紗希はこの男と一緒にオークションに来たのだ。

紗希は振り返って直樹を見ると、笑みを浮かべた。直樹はいつも鋭く意見を言ってくれる。まさに彼女の気持ちを代弁してくれた!

だらしなく紗希の隣に立つ直樹は、顔がハンサムで、全身からイケメンのオーラが出ていた。それに、鋭い目つきで拓海を見た。

先日、北から紗希が病気で倒れ、拓海が病院に連れて行って看護師を口説いていたと聞いた。男同士として、拓海の下心なんて誰かが見えた。

拓海のような再婚男は紗希にふさわしいはずがない。

直樹はイケメンな笑顔を浮かべて言った。「渡辺社長、家族をしっかり躾けてください。勝手に人をいじめないようにね。そうでなければ、いつかお前の家族は殴られることになる」

拓海は薄い唇を冷たく結んだ。「お前に教えてもらう必要はない」

紗希はこの二人の間の悪い雰囲気に気づき、心臓が飛び出しそうだった。

これはいい出身がある拓海だった。

直樹は拓海と喧嘩をする勇気があった。彼女は直樹が自分のために人と喧嘩をしたことを知り、直樹の手を引っ張った。「行こう、オークションが始まるわ」

直樹はまだ何か言いたそうだったが、紗希に引っ張られて従った。ちっ、あいつの運
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