第121話

詩織が突然近づいてきたのを見て、紗希は瞬時に警戒し、少し不快になった。

詩織が次に何をするかなんて、誰にもわからない。

紗希は自分の腕を引っ込め、冷淡な表情で言った。「私たちはやはり距離を置いた方がいいと思うわ」

「紗希さん、あなたが拓海と離婚しても、私たちはまだ友達でいられるよ」

紗希は目に嘲笑の色を浮かべた。「詩織さん、あなたは愛人と友人になれる人を見たことがありますか？」

詩織は「愛人」という言葉を聞いて、顔色を冷たくしたが、拓海と美蘭がいるため、すぐに悲しそうに言った。「紗希さん、どうしてそんな酷いことを言うの？私は本当にみんなが仲良くできればと思っているのよ」

美蘭はすぐに詩織をかばい、紗希に向かって言った。「紗希、図々しいんじゃないの？詩織の気前の良さを見なさい、誰のことを愛人と呼ぶの？ 先に来た順で言えば、あなたこそ途中から割り込んできた女でしょう。あなたがいなければ、 詩織は嫁いできて、私の息子の妻になっていたでしょう。3年経った今頃は、詩織は子供を産んでいたかもしれないのに！」

紗希目に嘲笑の色を浮かべた。「それなら、新婚おめでとう。早く子供が生まれますように。これでいいでしょう」

彼女はそう言って立ち去ろうとしたが、美蘭はまだ気が済まない様子だった。「ちょっと待って、紗希。それはどういう態度なの？私の息子と詩織はもうすぐ結婚するのよ。もしあなたが少しでも邪魔をしようとしたら、絶対に許さないわ」

拓海は前に出て母を止めた。「もういいよ」

美蘭はようやく口を閉じた。「拓海、紗希はさっきおばあさまに食べ物を持ってきたそうよ。紗希が渡辺おばあさんの前でわざと秘密を漏らさないように、今後は注意深く彼女を見守らなければならないわ」

拓海の顔色はあまりよくなかった。「彼女はそんなことをしない」

美蘭はまだ何か言いたそうだったが、詩織に止められた。「おばさん、私は拓海の判断を信じています。私たちはおばあさまのためを思っているんですから」

「やっぱり詩織は分かってるわね。拓海、詩織と一緒に結婚写真を撮りに行くわよ」

詩織は喜びの色を浮かべ、期待に満ちた目でその男性を見つめた。しかし、拓海は冷淡な様子で言った。「時間がない。どうせこれは演技に過ぎないんだから、必要ないよ」

そう言ってから、拓海は詩織に向かって言った。「お前の北兄はいつ来