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第125話

紗希は近づいてくる男を見つめた。二人の鼻先はほとんど触れ合うほどだった。

彼女は完全に固まってしまった。この男は何をしようとしているの?

次の瞬間、拓海薄い唇が開いた。「温度差を感じたか?」

紗希は瞬きをして、確かに彼の額が氷のように冷たいと感じた。

その時、横から咳払いの声が聞こえた。「ゴホゴホ、周りへの影響に注意してください、ここは病院です」

拓海は素早く身を起こした。

紗希は慌てて毛布を引っ張って顔を隠した。本当に恥ずかしかった。

看護師さんは口を開いて言った。「患者さんのご家族は外でお待ちください。受付がまだの方は先に受付をお済ませください」

紗希は毛布の隙間から彼の足音が消えていくのを見て、やっと少し安堵した。

彼はようやく行ってくれた。

紗希はこっそり毛布をめくって看護師さんに言った。「実は大丈夫なんです。治療は必要ありません」

しかし、看護師さんは体温計を向けてピッと測った。「体温39度ですよ。本当に大丈夫ですか?」

紗希は顔色が変わった。まさか自分がこんなに高熱だとは思わなかった。

看護師さんは入ってきた医師を見て言った。「北先生、ここに39度の熱があるのに治療を拒否している人がいます」

「39度なのにまだ治療を受けたくないというのは、温度が低すぎると思っていて、彼女は最後に火葬場に行って暑さを体験したいからですか?」

紗希は聞き覚えのある声を聞いて、反射的に毛布を引っ張って顔を覆い、パニックになった。「まさか北兄さん?」

拓海がまさか公立病院に北兄さんを連れてきたなんて!

まずい、どうしよう?

おしまいだ、おしまいだ。

もし北兄さんに見つかったら、彼女はどうやって説明すればいいの?

紗希は頭が重いと感じながら、外出するべきじゃなかったと後悔した。

北は白衣を着て近づき、毛布に隠れている患者を見て、厳しい口調で言った。「そんなに隠れていたら、毛布から煙が出るぞ」

紗希は毛布をしっかりと握りしめ、この現実にと向き合いうことを拒否した。

北は看護師さんを見て言った。「患者の毛布を取ってください」

「やめて」

紗希は反射的に看護師さんに抵抗しようとしたが、思わず声を出してしまい、慌てて口を押さえた。しかし、その隙に看護師さんに毛布を取られてしまった。

彼女は無邪気な表情で北を見た。「北兄さん」

北は表情が
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