交際0日婚のツンデレ御曹司に溺愛されています のすべてのチャプター: チャプター 121 - チャプター 130

178 チャプター

第121話

佐々木唯月は包丁を握りしめ彼を追いかけた。佐々木俊介は唯月が、まさかここまでやるとは思っていなかった。結婚してから、彼女はいつも優しく思いやりがあった。ここしばらくの間、彼がいつも彼女を怒鳴っても、あまりにひどい場合を除いて、彼女が怒って彼と喧嘩をすることなどなかった。今回彼が手を出すと、彼女は狂人のようになってしまった。彼に殴り返してきただけでなく、包丁まで持ち出してきた。佐々木俊介は家を出て、外に逃げていった。佐々木唯月も引き続き、包丁を握り彼を追いかけて行った。夫婦二人は追いつ追われつで、下の階まで走っていった。この騒ぎが同じコミュニティに暮らす人たちをとても驚かせた。唯月が包丁を持って佐々木俊介を五つの通りを過ぎるまで追いかけ、疲れて動けなくやってようやく息を切らせて道端に座り込んだ。佐々木俊介も疲れていた。彼女とかなり距離を取って座った。彼の両親と姉が急いで駆けつけ、彼らを見た時、佐々木俊介はどれほど辛い思いをしたことか。佐々木家の父親と母親は自分の可愛い息子が狼狽しきった様子で、両頬が大きく腫れ上がっているのを見て、死ぬほど怒り狂った。姉のほうは服のそでをまくり上げて、怒鳴った。「このクソ女、うちの弟に手を出しやがって、殴り殺してやろうか!」母親は息子の様子に心を痛めて涙を流し、佐々木唯月を怒鳴りつけた。「息子に何か恨みでもあるのか?うちの息子をこんなひどい有様にして、前言ったでしょ、彼女の両親が死んでから誰もちゃんと教育する人がいなかったのよ。彼女はがさつで嫁には相応しくないって。それでも結婚するって言うんだもの。あなたは一人の立派な大人の男性よ。たった一人の女にすら勝てないなんて。いつも私たちの前では彼女に教育してやるんだなんて大きな態度を取っておいて、今の自分の状況を見てごらんなさいな」佐々木家の母親は当時、家族全員が唯月に早く嫁いで来いと願っていたことなど忘れてしまっていた。その時、唯月の収入がとても高かったからだ。それが今は彼女を嫌って相手にしていない。佐々木家の父親は「うちの息子をここまで育て上げた俺ですら殴ろうとはしないのに、唯月の奴、酷すぎるぞ。彼女は今どこにいるんだ、父さんが行ってお前の敵をとってやろう。あいつが降参するまで、こてんぱんに叩きのめしてやるから。お前の
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第122話

佐々木唯月は冷ややかに笑った。「彼がどうしても割り勘にするって言うから、彼が言った通りにやっただけよ。彼が怒ったからって私に手を出してもいいわけなの。あなたたち彼のあんな姿を見て心を痛めてるけど、私が彼にボコボコにされたのが見えないわけ?あなたたちの息子は両親がいて、産んで育ててくれたのよね。まさか私には私を産んで育ててくれた親がいないとでも?そうよ、私の両親は亡くなったわ。でも、親がいない孤児だからって、あなたたちにいじめられて殴られる筋合いなんかないわよ。あなたたち一人ずつ?それともまとめて?どうでもいいからかかってきなさいよ。今まで言えなかった事を今日全部吐き出すわ。私と一緒にいたくないなら、直接言いなさいよ。家庭内暴力をするつもり?私はそう簡単にやられたりしないわ!あんたたちまだ私をいじめて殴ろうって言うなら、死んでもおまえらを地獄に引きずり下ろしてやる!佐々木俊介、前に言ったわよね。私を殴ろうっていうなら、その場で私を殴り殺さないかぎり、寝ない方が身の為だってね。寝ている隙に私があんたをズタズタに切り刻んでやるんだから!」唯月は凶悪な目つきで佐々木一家を睨みつけた。彼らが彼女に手を出そうものなら、彼女は共に滅びる覚悟なのだ!佐々木家の面々「......」「こんの気性の荒いクソ女が、理屈が通じなくて手の付けようがないよ!」佐々木家の父親は唯月を罵ると、息子に向かって言った。「俊介、行こう。私たちと一緒に家に帰ろう」佐々木俊介も今日の唯月にとても驚いていた。知り合ってから今まで、12年は経っているが、彼は彼女がこんなに反骨精神を持っているとは知らなかった。唯月の凶悪な様子を思い出して、俊介は両足をガタガタと震わせていた。そして両親と姉と一緒に帰って行った。同時に会社に連絡し、数日間休みを取った。彼は家でゆっくりと傷を癒さないといけないからだ。佐々木家の姉は車で来ていた。一家四人は車に乗ると、姉は「俊介、彼女と離婚しちゃいなさいよ。陽くんの親権を取って、あんな女は捨ててしまいましょう。そうなればあの女はまだ偉そうにしていられるかしらね」と言った。佐々木俊介は口元の血を拭うと、両親に向かって言った。「あの女と離婚することになったら、父さんと母さんは陽の面倒を見てくれる?」「父さんと母さんは私の子の世話
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第123話

佐々木俊介は家族が知っていても、彼を責めないのを見て言った。「唯月は子供の出産の後、だんだん太っていったもんだから嫌いになったんだ。莉奈は人の気持ちが分かる子だし、若くてきれいだ。彼女に対する愛こそ本物の愛だと感じるんだよ」佐々木家の母親は「相手はあなたの身分や地位、収入に惹きつけられたのよ。以前のように普通のサラリーマンだったら、誰があなたを好きになるの?」と急所をずばりと言い当てた。「唯月は確かにちょっと凶暴であなたをこんな有様にしちゃったけど、まじめな話、彼女は結婚して長年、あなたのお世話をしっかりしていたわ。あの家もきれいに片付けてるしね。苦労を耐え忍んで暮らして、家事をこなせる人だわ。あの女性は唯月には及ばないわ」佐々木母は確かに息子を贔屓しているが、唯月への評価は的を射ている。「良い妻と結婚しなくちゃ。俊介、あなたが外でどう遊ぼうが、母さんは何も言わないわ。でもね、あのお嬢さんと結婚したいと思うなら、絶対に慎重になりなさいよ。将来後悔したくなかったらね」多くの男が離婚して浮気相手を妻として迎えた後、こんなはずじゃなかったと後悔するのだ。母親は実際は息子の現状に非常に満足していた。だから、息子が愛人を娶って幸せになれず報いを受けるのは望んでいなかった。しかし姉はこう言った。「唯月のどこが良いって言うの?俊介がこんな目に遭ったんだから、私たち家族はこんな嫁を許しちゃダメよ。俊介、お姉ちゃんはあなたと莉奈ちゃんのことを応援してるからね。うまく暮らしていけるかなんて、一緒に生活し始めてからようやく分かるものよ。誰にも分からないでしょ?結婚する当初だって唯月は教養もあるし、礼儀正しかったでしょう。その時、誰も彼女がまさか包丁を持って、街中を俊介を追い回すなんて思ってもみなかったじゃない。あの子が俊介をどんな姿にした?」佐々木家の親二人は何も言わなかった。「俊介、数日は家に戻らないで。お金もあの子にあげちゃダメよ。彼女に謝ったりしないで、彼女から先に過ちを認めて謝罪されるのよ。今度こんなことは絶対しないと約束させてから戻りなさい」姉は「今離婚しないとしても、彼女を調子に乗らせてはいけないわ。さもないと、あなたは家庭内での立場が落ちちゃうわ。大の男は家庭内でも外でも上に立たなくちゃ。女になめられちゃダメなんだって」とアドバイ
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第124話

「じゃあ、お願いするわね」牧野明凛は笑った。「私たちの仲でしょ、ずっとあなたが店を閉めてくれてたんだから、あなたに損させちゃってたじゃん。今日は私の番、そうすれば私もスッキリだしね」内海唯花も親友に遠慮せず、買った服を持って親友に挨拶し、店を後にした。彼女は車のドアを開け、服を助手席に置くと、結城理仁にこう言った。「先に帰ってて、電動バイクで食材買いに行ってくるから。お米を炊く準備ができるなら、先にお米を洗って炊いといてね。できないなら、私が帰ってからやるわ」結城理仁は彼女の電動バイクを見て言った。「君の新車は?」「今日家を出るのが遅くなったから、渋滞に巻き込まれるのが嫌で電動バイクで来たの」内海唯花はヘルメットを被ると「じゃ、行くわね」と言った。結城理仁が何か言うのを待たず、彼女は電動バイクに跨り走り去ってしまった。結城理仁「......」彼女はたまにそそっかしくて、彼の落ち着いた性格とは正反対だった。そして助手席に置いてある袋を見て、それを手に取り中身を出して見てみた。すると、中には紳士服が入っていたので、彼は眉間にしわを寄せた。彼女は一体どこのオス馬の骨に服を買ってやったのだ?服のサイズを確認し、自分のサイズと同じだと気づいた。しかも全部黒で、まさか彼に買ったのではないだろうな?そう思い、結城理仁はさっきの不愉快さが跡形もなく消え去った。牧野明凛が店から出て来て、彼は彼女に会釈した。それを挨拶代わりにして車を走らせて行った。彼が去った後、金城琉生がちょうどやって来た。牧野明凛は自分の従弟を見て驚き、手を伸ばして従弟の顎に生えた髭を引っ張って言った。「琉生、しばらく見ないうちに、なんでこんな髭伸ばしてるのよ?これ、もう剃ったほうがいいんじゃない。まだ若いんだから、髭なんて生やさないでよ、年取って見えるわよ。あなたもしかして最近めっちゃ忙しくて疲れてるんじゃない?なんか全体的に憔悴しきって元気がないわよ。若者だから張り切って頑張るのはいいけど、限度ってものがあるんだからね。健康じゃないと何もできないでしょ、体を大切にしなきゃ」「大丈夫だよ。ただ仕事がちょっと忙しだけだから」金城琉生は実際は内海唯花のために髭を伸ばしているのだ。その髭もそんなに長く伸びているわけではないが、普段彼の顔はスッキリときれ
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第125話

牧野明凛はそう言った後、従弟をいぶかしそうに見つめ尋ねた。「琉生、なんでこんなこと聞くのよ?金城琉生はもちろん自分が内海唯花に密かな恋心を抱いていて、彼女が離婚するのを期待しているとは言えず、でたらめを言った。「ただ唯花姉さんの心配してるだけだよ。それ以外の何でもないってば。唯花さんはあんなに優秀な女性なんだ、もし旦那さんが彼女を好きにならないなら、早めに離婚するのも良いと思ってさ。彼女のよさを良く理解してる男性を見つければ幸せになれるに決まってるよ。「それはそうよ。唯花はとっても良い子なんだから、私は結城さんが唯花のことを愛するようになるって思うわ。もしかしたら唯花が彼を好きになるより、彼のほうが先に唯花のことを好きになっちゃうかもよ」牧野明凛は親友が幸せな日々を過ごしていくことを望んでいるのだ。金城琉生はそれを聞いて気が塞いだ。従姉にも彼が内海唯花に片思いしているなんて告白できないし。従姉がそれを母親に言うのが怖いのだ。彼が内海唯花より年下なのは言うまでもなく、内海唯花が既婚者だからだ。もし彼女が離婚したとしても、彼の母親はすぐには彼女を受け入れてはくれないだろう。十分に状況把握ができるまでは、金城琉生は自分の気持ちをしっかりと隠しておいて、誰かに知られないようにしているのだ。夕日が西の空に沈み、黒の帳が人々が暮らす大地に降りる。夜がこうして静かに訪れた。トキワ・フラワーガーデンにて。内海唯花はキッチンで忙しくしていた。キッチンから時折香る美味しそうな匂いにつられて、結城理仁がキッチンの入口までやってきた。彼は手伝いをしようと思っていたが、内海唯花がご馳走する側なんだから自分一人でやると言って、彼には休んでてもらったのだ。それで彼はやることがなく、リビングでテレビを見ていたが、特に面白くないと思い、妻が料理を作る様子を見ているほうが面白いと思って来たのだった。内海唯花の賢く優しい様子に、結城理仁は彼女から目を離さずじっと見つめて、ますます柔らかい目つきになった。彼自身がそれに気づいていないだけで、ただ内海唯花の良いところはたくさんあると思っていた。「内海さん」結城理仁はあることを思い出し、突然彼女を呼んだ。唯花は頭を彼のほうへ向けて目線を送り、引き続き料理に取り掛かって尋ねた。「結城さん、なにかある
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第126話

結城理仁は少し悶々としていた。しかし、考えを変えれば弟が内海唯花のハンドメイドの販路拡大をしたことで唯花が儲かったわけで、彼女は今、彼の妻でもあるのだから、利益が他人に流れていったわけではないから、そう思うと、もやもやしていた気持ちは良くなってきた。内海唯花は出来上がった料理を持ってキッチンから出て来ると、食卓の上に並べた。夫婦二人は席につくと、一緒に夜ご飯を食べ始めた。彼は機嫌も良く、美味しそうに食べていた。唯花の料理の腕はとても高く、褒める言葉しか出てこなかった。彼は本当にご馳走に恵まれている。食事の後、皿洗いを済ませると、唯花はソファに置いていた彼に買ったプレゼントの袋を持ち上げ、中から服を取り出して理仁に手渡して言った。「結城さん、これサイズが合うか試してみてもらえない?あなたはあんなに私を助けてくれたのに、ただ料理をご馳走するだけじゃ私が納得できないくて、新しい服を二セット買ったの。それから、ネクタイも二本。服は全部あなたが好きな黒よ」結城理仁はそれが彼に買った服だと気づいていたが、それを表情には出さず、服を受け取ってめくって見てから彼女に尋ねた。「君はどうして俺の服のサイズを知ってるんだ?」「おばあさんに聞いたのよ」理仁は何も言わなかった。「試してみる?」「いいよ、ちょうど良いと思う」彼女は全部彼の好きな色を選んだ。「今度俺に買ってくれる時、何を買ったらいいか迷ったら、直接聞いてくれていいから」おばあさんには聞いてほしくなかった。おばあさんが知ったら、裏でどんな企みを抱いているか分かったもんじゃないからだ。「あなたは仕事が忙しいし、いつも邪魔するわけにはいかないよ」結城理仁は黙ってしまった。彼は確かにとても忙しい。こまごまとした煩わしい事は確かに彼女から聞かれるのはあまり好きじゃない。「結城さん、まだ時間も早いし一緒に散歩しよう。そういえば、私がここに引越してきてからしばらく経つけど、まだ近所を散策してなかったもの」結城理仁は少しためらってから、一緒に行くことにした。彼もトキワ・フラワーガーデンの周りはよく知らないのだ。当初、彼に代わってこの家を買ったのは執事だったのだ。それから、夫婦二人は初めて一緒に散歩に出かけた。結城理仁は寡黙で口数の少ない人だし、この二人は
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第127話

コミュニティを散歩している人たちはたくさんいた。そのほとんどは子供連れの家族で、手を繋いで歩いている若い夫婦もいて、とても熱々な様子だった。二人は他の夫婦がとても仲むつまじいのを見ていた。それとは反対に、彼らは相変わらず肩を並べて歩いているだけで、自分から手を繋ごうとはしなかった。なのに、すれ違った人がこの夫婦を振り向く割合は非常に高かった。美男美女カップルだからだ。最後に内海唯花はコミュニティ内にある子供遊園地に来て足を止め、隣にいる男性に言った。「ここでちょっと休みましょ、子供がたくさんいるし」彼女は大の子供好きなのだ。甥っ子の佐々木陽のことも非常に可愛がっている。結城理仁は何も言わず黙ったまま彼女に付いて、石で作られたスツールに腰掛けた。「陽ちゃんがここにいたら、絶対楽しく遊んでいるでしょうね」理仁は、うんと答えた。唯花は頭を傾けて彼を見た。理仁は彼女にこのように見つめられて、なんだかそわそわした。ところが、警戒心を持って彼女に尋ねた。「そんなふうに俺を見つめて、どうしたんだ?」「カッコイイから、たくさん見つめて、目の保養してるだけ」結城理仁「......」「結城さんって、ハンサムだし、優秀だし、素晴らしい遺伝子を持っているってことよ。もし将来子供ができたら、きっと利口で賢い子が生まれるでしょうね」「俺の子供が欲しくなった?」唯花は笑って「おばあちゃんったら、いっつも私にあなたを襲えって言うのよ。女の子のひ孫が欲しいんだって」と言った。それを聞いて、理仁はこっそり彼女のほうにおしりをずらし、唯花との距離を縮めた。唯花はそれに気づいておらず、続けて言った。「結城さんが私のことをなんとも思ってないって分かってる。実際、私自身もあなたに対して愛なんて持ってないし、お互いに気持ちのない夫婦なのに、本当に私があなたを襲ったら、夫婦同士のプラトニックな心の触れ合いじゃないわ。もしお金を出したらあなたを買ったみたいになるわね」結城理仁はそれを聞いて不機嫌になった。「私たちには、子供なんてできっこないわ。おばあちゃんのために、辰巳君たちに頑張ってもらいましょ」彼らに本当に子供ができる可能性がないだろうか?結城理仁はこの言葉を聞いて、とても不機嫌になった。しかし、彼女に何か言い返すわけでもなく、依然
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第128話

結城理仁「......」彼は実際、彼女と何を話せばいいのか分からないのだ。周りにいるあの若い夫婦は結婚して間もなく、はちみつのように甘くラブラブで手を絡め合わせて歩いている。子供のいる夫婦は主に子供の話題で話は途切れないだろう。彼ら二人のように、感情も子供もない者同士が何か話そうと思っても、それは難しい話だ。結城理仁の言葉に詰まった様子を見て、内海唯花は笑って立ち上がると、理仁を引っ張った。「さあ、そろそろ帰りましょう。なんだか、あなた、ぎこちない感じだし、まるで私がいつでもあなたを襲おうとしているみたいだわ」「内海さん、君は女の子だろ!」「女だからってどうしたの?言っただけで何も失うものなんかないわよ」内海唯花は彼を引っ張って行った。引っ張ると言っても、彼の服を掴んでいるだけで実際には彼の手には触れていない。もし彼に触れでもしたら、彼は帰ってから百回手を洗うかもしれない。「二日前のトレンドワードを見てないよね。結城御曹司と神崎グループのご令嬢のゴシップよ。神崎さんは結城御曹司のことが好きで、みんなの前で彼に告白して追いかけてるの。男の人が好きな子に出会ったら、もちろん追いかけるだろうし、女の人が好きな人に出会ったら、それももちろん追いかけるでしょ。どちらも本当の愛を追い求めてるんだわ。私は神崎さんのこと、とてもすごいなって思うの。彼女は間接的にだけど私を助けてくれたわ。彼女は私のことなんて知らないけど、私は裏で彼女が本当の愛を手に入れて彼と結婚できるように応援してるわ。今は彼になかなか振り向いてもらえなくて大変だと思うけど、いつか彼が彼女に振り向いて彼女を好きになったら、立場が逆転して溺愛されるはずよ」神崎姫華が間接的にだが『不孝者の孫娘』の注目検索をランキングから押し下げてくれて、内海唯花姉妹への影響が軽減されたのだ。だから、唯花は神崎姫華に対して好感を持っていた。さらに神崎姫華の自分の気持ちに正直に恐れず突き進むストレートな性格に、唯花は彼女を気に入っていた。結城理仁は自分の妻の話を聞いて、眩暈がするほど呆れてしまった。そして、心の中で否定した:もしその結城御曹司とやらが自分の夫だと知っていたら、まだそんなふざけた話ができるのか?「結城御曹司は神崎さんのことを嫌っているようだけど」結城理仁は自分に代わ
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第129話

内海唯花は「......あなたは会社でもチーフでしょ?社長に会う機会もそんなに少ないなんて、あなたたちの社長って本当に……うん、お高くとまってて、謎が多いわね」ネット上にも全く結城御曹司の写真は出回っていない。結城御曹司はどこへ行くにもボディーガードがついている。以前パーティーでもボディーガードの数が多すぎるし、みんな背も高く体格が良くて彼女と親友がつま先立ちしても彼を一目見ることすらできなかった。結城理仁が結城グループで働いていて、しかもホワイトカラーであっても結城御曹司に会う機会が少ないのを思い、内海唯花の心が落ち着いた。結城理仁は彼女の話に返事をしなかった。誰かが彼をどう評価しようとも彼は全く気にしなかった。彼は何をするのも自分の意向に従って行っているからだ。結城御曹司の話題を夫婦で話しながら彼らの住むB棟に帰ってきた。結城理仁のボディーガードは付近を一緒に歩き回っていた。自分たちの主人とその奥さんにくっついて回ってはいなかったが、夫婦二人が行く場所には彼らもついて行き、ひと時も視線を彼らから離していなかった。もちろん、内海唯花は常に誰かから見張られているということは知らなかった。彼女が何気なくあたりを見回すと、そう遠くないところにいるあるボディーガードが見えた。その瞬間、その人に見覚えがある気がして立ち止まり、結城理仁に「あの男の人、なんだか見覚えがあるんだけど」と言った。結城理仁はギクリとした。そのボディーガードは、あの七瀬だ。七瀬は自分の主人と奥さんが自分を見ていることに驚き、すぐに何事もなかったかのように歩いて来た。「こんばんは。あなたはあの時の代行業者の方ですよね?」内海唯花は思い出した。この見覚えのある男性は、結城理仁が酔っ払った時、運転代行で彼を連れて帰って来た運転手だった。七瀬「はい、そうです」若奥様は視力も記憶力もピカイチだ。「あなたもここに住んでいるんですか?」「ええ、でも私はただ借りているだけです。普段は配車サービスをしていて、たまに運転代行の仕事もしているんです」内海唯花は「そうなんですね」とひとこと言った。彼女はこの代行業者の男を覚えていたが、知り合いでもないし、たまたま会っただけなので軽く挨拶しただけで、特に気にはしなかった。結城理仁は七瀬をチラ
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第130話

結城理仁は弁当箱を下げて出かけた。会社に行く途中、彼は車の中で妻が彼のために作ってくれた愛妻弁当を味わった。美味しそうに食べていて、とても満足そうだった。運転手と同乗していたボディーガードは少しおかしいと思っていた。若奥様が作った朝食はとてもシンプルなものなのに、若旦那様のようなグルメな人がこんなに味わって食べているのだから。恐らく、若奥様の料理の腕は相当高いのだろう。結城理仁が出かけてから、内海唯花はいつものように姉に電話をかけ、姉に何も問題ないことを確認してから彼女も出かけた。彼女が出かけた時間帯は、すでに通勤通学ラッシュで、道は混み始めていた。彼女が半分まで来たところでさらに渋滞が激しくなった。多くの出勤時間に焦っている人たちが、イライラしていた。そして神崎姫華も悪態をつこうとしていた。彼女は兄と義姉がイチャつきながら朝食を食べている隙をついて、こっそりと家から出てきていた。そして、彼女はこっそりと結城理仁にも朝食を弁当箱に詰めて用意していた。それは彼女が特別に家のシェフにお願いして作らせたものだった。そして、家の庭園から花を摘み取り大きな花束まで用意していた。花束を抱え、愛のこもった朝食をぶら下げ、神崎姫華は家を出ると、すぐに結城グループへと向かって行った。結城理仁が会社に到着する前にたどり着きたかったのだ。そして、いつもの方法で理仁の車を妨害し、彼のために心を込めて用意した愛を詰めた朝食を渡そうとしていたのだ。義姉からも結城理仁を諦めるように諭されたが、神崎姫華はこんな形で彼のことを諦めたくなかったのだ。彼女の言葉を借りて言えば、彼女が結城理仁のことを忘れられるものなら、もうとっくに忘れているのだ。忘れられないから、このような方法で試してみているわけだ。三年から五年追いかけてみないと、彼女はどうしても諦めきれない。この時、前方の渋滞がひどく、みるみる時間だけが過ぎていった。だから神崎姫華はこのように焦っているのだ。これ以上渋滞が続くと、彼女が結城グループに到着する頃には、結城理仁はすでに会社に着いているだろう。彼女はこんなところで渋滞しているところではないのだよ。ダメだ、こうやってただ待っているだけでは。神崎姫華はまずボディーガードに電話をかけ、彼女が路肩に車を止めるから、ボディーガードに家か
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