All Chapters of 交際0日婚のツンデレ御曹司に溺愛されています: Chapter 111 - Chapter 120

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第111話

内海唯花は自分の夫が、今まさにヤキモチを焼いているとは知る由もなかった。彼女は自分の店に戻り、特にやることがなかったので、またビーズ細工作りを始めた。牧野明凛は友人がまた招き猫を作り上げるのを見てから尋ねた。「唯花、最近どうしていっつも招き猫ばかり作ってるのよ。よく売れてるの?」内海唯花は一つ作り上げると、手を止めて少し休んでいた。親友から尋ねらると笑って答えた。「最近、ネットショップのほうの売れ行きが良くてね、よく売れてるのはこの招き猫で予約も多いのよ」「もしかして、あのツイッターでのあなたの反応を見たネット民たちが、あなたたち姉妹を可哀想に思って、ネットショップを探し出して売上に貢献してくれてるんじゃないの?」内海唯花は少し考えてからこう言った。「そうじゃないと思う。あれには小さい頃の私の写真と電話番号をネットに載せただけだし、私に関する他の情報を彼らは一切知らないはずよ。今はあのツイートもなくなったし、あのフォロワー数が多いアカウントたちですら公式アカウントに載せてた自分たちのコメントも消しちゃってるし」内海家の人たちの巻き添えを食らうのを恐れたのだろう。「タイミングよく、結城御曹司のゴシップ記事があの不孝者孫娘記事を押さえ込んでくれたおかげで関心度もそこまでは上がらなかったし、たくさんのネット民たちが私の仕事を探る前に私が反撃を食らわせたわけだし。だから、ネット民が私のネットショップに貢献しているとは考えにくいけど」結城御曹司のゴシップの話題が出ると、牧野明凛は急に興奮し始め、謎解きでもすると言わんばかりにこう言った。「おばさんの話によるとね、神崎家のお嬢様ったら、あなたと関係あるあのトレンド記事がネット民たちの注目を奪っていったのを見て、相当ご立腹だったらしく、裏で操ってあの検索トップ記事を押さえたから、あいつらのツイートが下火になっちゃったんだって」内海唯花はこのことを初めて知って、笑って言った。「ということは、神崎家のご令嬢が間接的にだけど、私の手助けをしてくれてたってことか」そのことを考えながら、彼女は笑った。「本当に神崎さんに感謝しなくっちゃ。一日も早く結城御曹司とくっつくといいわね。彼女は神崎家のお嬢様でしょう。お金ならいくらでもあるんだから、結城御曹司に何か問題がないかくらいは簡単に調べることができるでしょう
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第112話

二人の会話はそれで遮られた。内海唯花は姉が甥っ子を連れて店に入ってくるのを見て、その手を止め、立ち上がってレジから出てきた。牧野明凛のほうが彼女よりも早く前に出ていき、愛嬌ある佐々木陽を抱っこした。そして陽の顔に何度もキスし、高い高いをして佐々木陽を大笑いさせ喜ばせた。「お姉ちゃん、なんでここに?」内海唯花は時間を気にしていた。この時すでに10時をまわっていて、この時間帯はいつもの姉なら家で昼食の用意をしているはずだ。でなければ、義兄が昼休憩に家に帰ってきてご飯ができていなかったら、また愚痴をこぼすからだ。「家にいてもつまらないんだもの。だからちょっと見に来たの。陽もあなたのところに行くってうるさいのよ」佐々木唯月は日除け帽子を外し、汗をぬぐって言った。「もうすぐ11月なのに、なんでまだこんなに暑いのかしら」ここの秋と夏はあまり変わらない。冬でもそこまで寒くはならないのだ。朝と夜だけ涼しくなる。昼間は太陽が燦々と照っていると、全身に汗をかくほど暑くなるのだ。「もう10時過ぎなのに、お姉ちゃん家に帰ってご飯を用意しなくていいの?」内海唯花は姉が夫のために、ご飯を作ってあげなければならないと思って言ったわけではない。普通の人なら昼になればご飯を食べるから、こう姉に尋ねただけだ。「ここへ来る前に陽にはたくさん食べさせたし、粉ミルクも持ってきたわ。ここで午後まで遊んで帰ったって問題ないわよ。もうちょっとしたらあなたと一緒にデリバリーでも頼みましょ。それか、私が今から近くの市場で買い物してくるから、お店のキッチンで二人にご飯を作ってもいいわ」「あの人なら......ご飯は、お米を洗って炊飯器に水も入れてきたし、コンセントも挿してきたわ。彼が帰ってきたら、自分でボタンを押すだけでいいの。おかずは、野菜はきれいに洗ってキッチンに置いてきたし、彼が自分で茹でたいなら、茹でればいいし、炒めたいなら炒め物でも作ればいいわ。彼の好きにしたらいいのよ」親友の姉のその話を聞いた後、牧野明凛は笑って言った。「唯月姉さん、これって半分だけやってあげたってこと?」「割り勘にするって言うんだもの、もちろんお金に限らず、何をするのも半々でやるべきでしょ。もし私が何でも全部してあげたら、何が割り勘と言えるの?彼が割り勘にしたいって言うんだから、そうして
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第113話

「この前、唯花と結城さんが買ってきてくれたプレゼント、あの時私は割り勘のことでとても怒ってたから、全部私の部屋に持っていったの」佐々木唯月は椅子に腰掛けた。内海唯花はキッチンへと行き、冷蔵庫からフルーツを取り出して、きれいに洗った後お皿に盛って、姉に持ってきた。牧野明凛は唯月に温かいお茶を渡した。彼女はそのお茶を数口飲んだ。佐々木唯月は家庭事情を周りに知られるのは怖くなかった。今日彼女が来たのは、溜め込んでいた悔しさと怒りを妹にぶちまけたかったからだ。これ以上溜め込んだものを誰かに打ち明けなければ、うつ病を発症してしまいそうだった。それに、牧野明凛も知り合ってから何年も経つ。彼女はなんといっても口が固い子だ。彼女はこう言った。「私が翌日起きた時、あいつらは俊介がもう送ってしまった後だったわ。帰りたいなら勝手に帰ればいい。さっさと帰ってほしいって思ってたんだし。でも、あいつら帰る前に、唯花たち夫婦が買ってきてくれた贈り物を全部持っていったのよ。陽にくれたおもちゃも、義姉さんにいくつも取られたの。ほんっとに腹が立つわ!俊介もうちにはそういう贈り物がいらないから、彼の姉に渡して食べてもらうって。あいつの姉が何か足りないものある?あの人たちはどっちも働いてるし、収入もあるし、子供は義父母が面倒みてるじゃない。あの二人も若いころは年金もしっかり払ってたし、今二人とも退職金もらって食べるのだって困ってないわよ。それなのに、俊介に毎月お金をもらってさ、そのお金は義姉さんの家に払ってるようなものでしょ?義姉さん夫婦が稼いだお金は全部貯金に回してるのよ。自分の親のお金と、弟のお金で生活してるの。弟に妻子がいなくて姉のためにお金を出すっていうなら、誰も文句は言えないけど、私と彼はもう一つの家庭を持っているのよ。家のローンも返さないといけないのに、恥もせず弟のお金を使って自分たちの生活をしているなんて」佐々木唯月は自分の夫の愚かさと理不尽さに腹が立っていた。両親が彼のお金を愛娘に渡していると知りながら、依然として何がなんでも両親に毎月お金を振り込んでいるのだ。なのに、彼女に対してはケチでお金を惜しむのだから、彼女の怒りはすでに頂点に達していた。さらに、夫の家族たちはうまく本性を隠し通していたと罵った。結婚する前、それぞれ彼女に対して良い態度を取っており
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第114話

内海唯花はうんと一言答えた。彼女は甥っ子にキスをし、あやしていた。「陽ちゃん、幼稚園に行きたい?」「やだ」この年齢の子供はなんといっても母親にべったりな年頃なのだ。内海唯花は笑って、姉に言った。「お姉ちゃん、陽ちゃんをどの幼稚園に通わせるか決めてるの?もし決めてるなら、週末陽ちゃんをそこに連れて行って遊ばせてみよう。そこの環境になれさせるのよ。たくさん遊んで楽しかったら、幼稚園に行くのも嫌がらないわ」週末、多くの幼稚園が親が子供を連れてきて見学し、遊べるように開放しているのだ。佐々木唯月はうんと一言返事し、また続けて言った。「もう一つ死にそうなくらい腹立たしいことがあるの。あの義姉さんが俊介に自分の二人の子供をこの街に連れて来て、ここで学校に通わせるって言うのよ。私の家に一緒に住んで、その子供の送り迎えとご飯、宿題の面倒まで見ろですって。私のことを都合の良いタダの家政婦だとでも思ってるのかしら?俊介はそれなら喜んで三万円の食費を出すって。今子供一人面倒みてるんだから、あと一人二人増えたくらいなんともないって。自分のお腹を痛めて生んだ子供ならいくら大変でも、きつくてもお世話はできるわ。でも、他所の子供の面倒って、こんなんじゃ骨折り損で何の割にも合わないわ。しかも、家の名義を姉に譲るですって。こうすれば彼女の子供も地区の学校に通えて、二人の子供が通うのにも便利だからって。本当に馬鹿なんじゃないの、家の名義を他人に譲って、後から取り戻せるとでも本気で思ってるのかしら?」内海唯花と牧野明凛はもはや何も言えなかった。「......」普段彼女たちはネット上で、一部のネット民がこのような事を言っているのを見たことがあったが、まさか佐々木唯月も彼らと同じような目に遭っているとは。佐々木唯月は一度口を開けたら、もうなりふり構わず、全てをぶちまけた。彼女はまた二口お茶を飲み、続けた。「唯花、私も義兄さんに言ったのよ、もし家の名義を義姉さんに譲るって言うなら、私が出した内装代を返せって。もし家を取り戻せなかったら、私にとっては損でしかないもの。当時内装代に800万も私使ったんだから」彼女が長年仕事で稼いだお金は、全部その家のために使ってしまっていた。「もしその費用を私に返さないって言うなら、即離婚よ。離婚しても絶対にあの内装代は返し
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第115話

そして、すぐに佐々木唯月は言った。「でも、全ての男性が佐々木俊介みたいな人じゃないわ。明凛ちゃん、私がこうだからって怖くなって結婚を諦めちゃダメよ。これは私のせいでもあるんだから」彼女は妹のこの親友がまだ結婚しておらず、家族から結婚の催促をされていることを覚えていた。牧野明凛は笑って言った。「男でも女でも頭おかしい奴はいるって分かってます。結婚するかしないかは、やっぱり相手のことを好きかどうか、人生を捧げたい相手かどうかをしっかり見なきゃですよね。唯月姉さんの影響を受けたりしませんから安心してください。でも、もし将来結婚するなら、相手の一家がどのような人たちなのかしっかり見極めてから決めようと思います」彼女の母親は結婚するということは、その相手の男性だけ見ればいいということではないといつも言っていた。相手の男性の家族、それから彼の友人たちとも親交を深めていく必要があり、学ばなければならないことは多い。牧野明凛はちらりと親友を見た。そして、心のうちでとても感服していた。佐々木唯月のこのような結婚は、誰が見ても明らかなほど、決して良いものだとは言えない。子供の佐々木陽がいることで、離婚をしたいと思っても衝動に駆られてできるようなものではないのだ。離婚するに当たって、いざというときの逃げ道も確保しておかなければならない。母親である自分のさまざまな条件も整え、子供の親権を取るための資格と気力をもって男性側と争ってこそ離婚することができるのだ。内海唯花と結城理仁はスピード結婚で、結婚する前はお互いの詳細も知らなかったし、会ったことすらなかった。このような結婚にはとても勇気が必要だろう。牧野明凛は自分にはこのような勇気はないと思った。会ったこともない面識のない男性とスピード結婚するなんて。今のところ、結城理仁は佐々木俊介よりも立派な人で、内海唯花が何か困っていれば彼は全力で彼女の手助けをし、決して手を抜いたりしていない。しかし、彼は内海唯花と半年で離婚するという契約を交わしているのだから、この点だけが牧野明凛は納得いかなかった。親友の将来をとても心配しているのだ。内海唯花は何も言わなかった。言いたいことは姉と二人きりになった時に言うつもりだったのだ。「リンリンリン......」内海唯花の携帯が鳴った。彼女は携帯を取り出し画
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第116話

結城理仁は、軽く返事をし、続けて言った。「今回の件で、やつらはもうしつこく付き纏ってくることはないだろう」内海家の人間は後悔するしかない。「普段昼食はどこでとってるの?」「外で食べてるよ」結城理仁は返事をして、すぐ聞き返した。「奢ってくれるつもりか?」内海唯花は笑って言った。「あなたに時間があるなら、奢ってあげてもいいわよ。いろいろ助けてもらって、すごく感謝してるもの。ご飯を奢るくらいしか他に何も恩返しできないし、でも、高級なお店はお金出せないかもしれないから、無理よ」結城理仁はそれがおかしく思えた。感謝して彼に食事をご馳走したいと思っているけど、高級なレストランは彼女には無理だと言うのだから、はたして誠意があるのかないのかわからなかった。「昼休みはそんなに長くないし、昼休憩は近くのレストランに人も多いから、もし本当に奢ってくれるなら、夜早めに帰って来て何か美味しいものを作ってくれればいいよ。でも俺たち夫婦二人なんだから、そんなにたくさん作らないでくれよ」彼は今後、絶対に結城辰巳に彼女の料理を包んで食べさせるつもりはない。どうして彼の奥さんが作った手料理をわざわざ結城辰巳の奴に持って行ってやらなきゃならないんだ?彼の従弟だからってなんだっていうのだ?家庭料理が食べたいと言うなら、辰巳自身が結婚して奥さんを作ればいいだけの話だ。そうすれば妻お手製の家庭料理を毎日毎日味わうことができるのだから。結城辰巳:兄貴、やっぱりヤキモチ焼いてんじゃん!はははは、面目丸潰れだな!ちょっと前まで絶対にヤキモチなんか焼かないって言ってなかったっけ?ヤキモチがどんなものかも分からないとかなんとか。今やっとそのヤキモチってものが何なのか兄貴は分かったのかな?内海唯花は笑って「いいよ、今日は早めに帰ってご飯用意するから帰ったら一緒に食べましょう」「ありがとう」結城理仁は妻が必ずしも夫のためにご飯を作らなければならないとは思っていない。内海唯花が自分から進んで彼に作ってくれると言うのだから、彼もそれを嬉しく思っていた。彼も唯花もどちらも同じように働いているのだから、どちらのほうが大変か、楽かなんてないのだ。家庭が円満で幸せな生活を送るためには、夫婦どちらも同じように努力し、共同で歩んでいかなければならない。夫婦二人は5分も話さ
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第117話

内海唯花は携帯をポケットに突っ込み、店に戻ろうとしたところに姉が出てくるのが見えた。「お姉ちゃん、どこ行くの?」「ちょっと買い物してくるわ、あなたたちにご飯作ってあげる。昼はデリバリー頼まなくていいわ、やっぱり自分で作ったほうが健康的だし」「唯花、陽のことちょっと見ててね」唯花は姉の言うことを聞き、ただ電動バイクで行くのに気をつけてとだけ伝えた。彼女は新車で出勤しておらず、いつもの電動バイクで来ていた。なんといってもそのほうが便利で早いからだ。通勤ラッシュで道が混むのが本当に困る。「お姉ちゃん、送金するね」姉が夫からもらっている生活費を使わせたくなかったので、唯花は姉に送金した。佐々木唯月は電動バイクに乗って遠くまで行った。妹のために食材を買うお金くらいなら彼女にはあるのだ。遠ざかっていく姉を見送り、内海唯花は店に戻った。佐々木陽がここに来たのは初めてのことではないので、牧野明凛のこともよく知っていて、母親が彼を置いていっても泣き喚くことはない。それとは逆に店の中をあちこち歩き回り、本を手に取ったり、ペンを触ったりしていた。とても好奇心旺盛な様子だった。「あんたんとこの旦那さん、何か用事だったの?」牧野明凛は探りを入れているのだ。「仕事中にあなたに電話かけてくるなんて、会いたくなったんじゃないの?」「私のクズ親戚がなにか言ってきてないか聞いてきただけよ」牧野明凛は「あら」と一言漏らし「ってことは自分のことのようにあなたを心配してるってことでしょ。唯花、あなたと結城さん、本当の夫婦になれるように頑張ってみてもいいんじゃないの」結城理仁は依然として彼女に警戒心を持っていて、彼女が近づくのを拒んでいる。だから彼女も急速に彼に近づきたいとは思っていない。自然に任せるのが一番だろう。今朝のあのキスを思い出した。あれは実際、ただお互いの唇と唇が触れた程度で、どちらもそれ以上の関係になろうとしているわけではなかったが、十分に彼女をびっくりさせた。結城理仁が男女関係において純粋であるのを思うと、内海唯花は自分が宝物を手に入れたような気分だった。このご時世、あの年齢の男性でこんなに純粋な人なんて、もはや絶滅危惧種でしょ!また別の角度から見てみれば、結城理仁という人間は、感情というものに対して本当に冷めた人であ
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第118話

結城おばあさんは内海唯花が孫の好みを聞いてきたので、すぐに夫婦二人に進展があったのだと思った。嬉しそうに孫の数少ない好みを唯花に教えた。孫が普段何色のトランクスを着るのが好きなのかという秘密まで全て彼女に教えてくれた。結城理仁が着ているものはすべてオーダーメイドで、出来上がると家まで届けてくれるのだ。おばあさんはその時に、孫がどんな色のトランクスを着るのが好きなのか観察していたのだ。「唯花ちゃん、理仁が特に好きなものってそんなに多くないの。あなたもそんなに悩まないでいいわ。適当に服を選べばいいのよ。服のサイズはあなたに教えてあげるから」「もし私が買った服を彼が気に入らなかったら?」おばあさんは笑って「あなたの贈り物をしたいというその気持ちが大切でしょ。彼がそれを受け取って着るか着ないかは彼が決めることよ。でも、私は理仁はもらったものを絶対に着ると思うわ」と言った。あの子は思うことを絶対口に出さないところがあるんだよ。おばあさんが彼に買った服を、彼は嫌いな素振りを見せるが、実際はその服を着て会社に行き見せびらかしているのだ。おばあさんは彼の会社のことには一切関わらないが、孫が会社で何をしているのか知りたいと思えばいつでも知ることができるのだ。結城理仁はいつも九条悟の前で、自分に奥さんがいることを自慢している。おばあさんの話を聞いて、内海唯花は新しい服を二着と、ネクタイを二本買うことに決めた。結城理仁の数少ない好みの物は彼女のお財布の状況を見ると、到底プレゼントできるようなものではないからだ。彼女は昔から現実を見て何事も決める性質の人間なのだ。自分にいくら使えるかを先に考えてから、それに見合うものを買う。その実力がないのに見栄を張るようなことは絶対にしない。そう決めてから、昼の忙しい時間帯が過ぎた後、昼食を食べて電動バイクに乗ってショッピングへと出かけて行った。そのついでに姉と甥っ子を家まで送り届けた。「お姉ちゃん、帰った後、たぶん義兄さんがまた喧嘩し始めると思う」彼女たちが忙しくしていた時、姉に夫から電話がかかってきて、どうしてご飯を作っていないのかと詰問していた。彼女は姉が答えるのを聞いて、考えるまでもなく義兄は姉からご主人様のような待遇を受けていることが分かり、腹が立っていた。佐々木唯月は少し黙った後
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第119話

「義兄さんは、お姉ちゃんと割り勘にするつもりですよね。お姉ちゃんは今仕事をしていないし、家で義兄さんとの子供を世話してます。義兄さんがこんなふうにするなら、じゃあ私の姉は夫がいるのといないのと、何が違うんですか?義兄さんは姉が家で何もしていないっていつも言いますけど、今日確かに姉は何もしてないですかね。あれ、でも姉は半分はしてるはずですよ。少なくとも食材を買ってきて、お米もあらって炊飯器に水も入れて、義兄さんはボタンを押すだけだし、残りの半分をするだけでいいじゃないですか」佐々木俊介は何か言おうと口を開いたが、内海唯花は彼が話す機会を与えず、続けた。「義兄さんは家の中が毎日きれいなのは、箒に足が生えて勝手に床掃除してるとでも思ってるんですか?陽ちゃんはまだ小さいし、おもちゃで遊んだ後は部屋中散らかってるんですよ。陽ちゃんだって自分で片付けはまだできないし。義兄さんはまさか、あのおもちゃたちにも足が生えて、自分で元の場所に戻ってるとでも思ってるんですか?それから、義兄さんが食べたり、飲んだり、使ったりしてるもの、他はさておき、あなたが毎日着替えている汚れた服も、お姉ちゃんが洗ってないっていうんですか?あなたが毎日食べてる三食のご飯も姉が作ったものじゃないって?いっつも姉が今、お金を稼いでなくて収入がないのを煙たがってるけど、もし姉が家でこの家のことを何もしてなかったら、安心して会社で真面目に働くことなんてできませんよね?この家庭はあなたと姉が共同で築き上げていくものでしょう。あなたは外で働いて、姉は家庭を守る。あなたたち二人は、どっちもこの家庭のために努力してるじゃないですか。姉は今働いてお金を稼いでいないからって、この家庭のために何も努力していないとでも思ってるんですか。実際問題、姉はあなたが会社で働くよりも疲れる仕事をしているんですよ。だったら、あなたと姉と立場を入れ替えてみたらどうです?あなたが家で洗濯、食事の準備、子供の世話、部屋の片付けをして、姉に仕事に行ってもらったら?」姉の結婚前の収入も義兄とそこまで変わらないのだ。佐々木俊介は内海唯花に何度も反論しようと試みたが、何も言い返せなかった。しばらくして、彼はばつが悪そうにこう言った。「唯花ちゃん、俺は一言しか言ってないのに、君はこんなにまくし立ててきて、まるで俺が君のお姉さん
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第120話

クソ不味い!しかも甘いぞ!なんで甘い?まさか彼は塩と砂糖を入れ間違えたのか?佐々木俊介はキッチンに戻り、調味料入れを持ち上げて見てみると、砂糖と塩、そして味の素が同じケースに入っていた。さっき彼が作っている時、絶対に砂糖と塩を入れ間違えたのだ。結婚する前、佐々木俊介は家にいて母親が食事を作ってくれていて、結婚した後は唯月姉妹が作っていたのだ。だから彼は全くと言っていいほど料理を作ることができない。砂糖と塩を間違える人が作り出した料理を食べられるほうがおかしいだろう。そして炊飯器のご飯を見てみると、それは佐々木唯月が水を入れて用意していたものだから、食べることができる。でも、おかずがないのでは、美味しい物を食べ甘やかされてきた佐々木俊介には白米だけを食べることはできないのだ。自分が会社で半日働き、家に帰って熱々の料理を食べることができないことを思い、佐々木俊介は怒りがどっとこみ上げてきた。頭に血が上ったまま部屋まで行き、唯月がベッドの上で携帯をいじっているのを見て、怒りが更に燃え上がった。急ぎ足で彼女のもとへ向かって行き、片手で唯月の携帯を叩き落とすと、髪を引っ張り、そのまま床に引きずり下ろした。そして、彼女に殴る蹴るの暴行を加えた。その時、彼は子供が目を覚まさないように、怒鳴ったりしなかった。佐々木唯月は油断していて、彼に髪を掴まれて床に倒されてしまったのだ。彼女はハッと我に返ると、すぐに彼に抵抗した。佐々木俊介は男でもあるし、先手を取った側だから、唯月がいくら抵抗しても不利な状況だった。佐々木俊介に殴られて顔に青あざができ、鼻が腫れても、唯月は負けを認めようとはしなかった。彼女は以前、同僚から夫婦が殴り合いの喧嘩になった時に、何があっても勝て、負けてはいけないと言っていたのを覚えていた。男に自分は簡単にはいじめられない女なのだと分からせるためなのだと。そうすれば、男を抑え込むことができる。もし負けてしまえば、男のほうは暴力に覚えて癖になってしまうのだ。家庭内暴力は、一度許してしまえば、それは永遠に繰り返されることになる。佐々木俊介がまた拳を振り下ろして、彼女が激痛を感じている時でも必死に彼のその手を掴み、腕を思い切り噛み付いた。力いっぱいに噛み付かれて俊介は叫び声を上げ、もう片方の手で彼女の髪の毛を引っ張った
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