交際0日婚のツンデレ御曹司に溺愛されています のすべてのチャプター: チャプター 91 - チャプター 100

182 チャプター

第91話  

「リンリンリン......」内海唯花の携帯が鳴った。彼女は携帯を持ち上げ、着信の表示が姉であることがわかってから電話に出た。「唯花ちゃん、ツイッターのトレンドを見たかしら。あの人たち憎らしい」 佐々木唯月もひどく腹が立っていた。両親が事故を起こして亡くなった時、彼女はもう十五歳で、妹よりも覚えていることが多かった。彼女の祖父母、叔父たちが姉妹二人に対してどんなに非情だったか、彼女はすべて日記に書いて、その日記帳は彼女がまだ持っていた。 彼らが白黒を逆転させ、姉妹二人の顔に泥を塗ろうとしているとは思っていなかった。「あの人たちが今憎らしい人間になったんじゃなくて、昔から腹黒いやつらだったのよ」「今からネットで弁解するわ」佐々木唯月は電話を切ろうとして、内海唯花に止められた。「お姉ちゃん、弁解なんかする必要はないわ。このことがもっと大きな騒ぎになったら、私たちは説明するの。あいつらの化けの皮を剥いでやるのよ」「あの人たち、私たちの写真と電話番号を公開したの。私たちも準備をしておかないと。証拠を出してこそ、彼らの面子を潰すことができるんだから」「唯花、あなたが何をするにしても、私は全力で協力するわ。そうだ、私は当時日記を書く習慣があって、以前書いた日記帳、私は全部ちゃんと保存しているの。彼らが当初どういう態度で扱ってきたのか、私はすべて覚えているのよ。その内容をネットに投稿しようか」 内海唯花は姉が日記を書く習慣があるとは思わなかった。「お姉ちゃん、日記帳を送ってきて。私が彼らに反撃する証拠をまとめてから、長いツイート文を書いてネットに証拠を公開しましょ。あいつらにこの手を使って後悔させることを約束するわ」彼らはネットを使って彼女たちを攻撃し、炎上したら、彼女は反撃しないとでも思っているのか。「わかった」「お姉ちゃん、この件はあなたが顔を出す必要はない、私が解決するわ。あなたには陽ちゃんがいるんだもん。ネット上で雇われたサクラたちが誹謗中傷してきて、お姉ちゃんと陽ちゃんを傷つけるかもしれない。ここ数日、ネットを使わないで。携帯も暫く電源を切るか、新しい番号に交換して、私たちは新しい番号で連絡しよう」佐々木唯月は「これは姉妹二人のことなのに、どうしてあなた一人に立ち向かわせないといけないの」と不本意そうに
続きを読む

第92話  

佐々木唯月は夫から突然の悪口を聞いて、腹が立って失望を感じた。「安心して、私のことであなたを巻き込まないから。当初は私があの人たちに対してああしてたのも、二度と連絡しようとは思っていなかったの。彼らが厚かましく言い寄ってきて、私たち姉妹にお祖母さんの医療費を負担させようとしているのよ」彼女は冷たく言った。佐々木俊介は非難した後も、自分がこの時に、そんなことを言うのは非情だと気づき、口調を和らげた。「唯月、おまえもツイート文を書いて、このことをはっきりさせよう。反撃するなら俺はお金を使ってネットのサクラを雇って炎上させるぞ。彼らみたいに善悪を逆転させるようなことは許せないんだ」と言った。彼は今、佐々木唯月を嫌っているが、内海家の親戚は本当に卑劣な手を使っていると言わざるを得ない。彼が佐々木唯月と結婚した時、あの親戚たちは二台の車に乗って来て、何十人もの人が、結納金を六百万出すように強要してきた。さもなくば彼と佐々木唯月の結婚に同意しないと言ってきた。彼と佐々木唯月は大学の同級生で、長年付き合っていた。内海姉妹が今日まで来るのがどんなに大変だったかもよく知っていた。ここ数年来、佐々木唯月は他人の前で内海家の悪口を一回もしたことがなかった。彼らを憎んでいるが、あちこち言いふらすのは好きではないのだ。あの人たちは十五年前に両親のいない二人をいじめたうえに、後で夫に結納金を求めに来るなんて、本当にひどいことだった。佐々木唯月は彼らを追い出し、結婚式にも招待せず、結納金を与えないようにした。佐々木唯月にとって、内海家は彼女たちを養ったこともなく、彼女には彼らに恩がないのだ。彼女が結婚した時、もし祝杯を飲みたいだけなら歓迎したが、お金のためであれば、あり得るわけがないだろう。彼女の結婚は親戚たちが決める権利などないのだ。両親が亡くなった後、姉妹たちの戸籍謄本には彼女が筆頭者になり、彼女が結婚した後は、彼女の戸籍は佐々木家に移し、妹だけが戸籍謄本に残った。「この件は私と唯花が解決するから、安心して。あなたを巻き込まないわ。もし彼らがあなたを探しに来て、お金を出させようとしても、私たちが離婚すれば、あなたと私は何の関係もなくなるわ。彼らがあなたに付き纏うこともしないでしょ」「唯月、こんな話してどうするんだ。離婚なんかしないよ。俺は主に陽のこ
続きを読む

第93話  

「私たちはここで何年も店をやっているから、唯花ちゃんがどんな人なのか、みんな知っているの。ネット上は絶対にデタラメを書いて、善悪を逆転させているんだ」内海唯花は詳しく説明していないが、牧野明凛は他人が親友を誤解しているのを見てはいられないので、親友のために懸命に説明していた。彼女は内海家の人が、姉妹二人をどう扱っていたのかをすべて話した。また、おばあさんが病気になった後、あの人たちが内海唯花にすべての医薬費を出すように要求し、従兄弟たちの交通費、ガソリン代まで清算させることも話した。内海唯花の人柄は誰の目にも明らかで、競争関係のある他の書店の店主からも、内海唯花が親不孝な人だとは思えなかった。経緯が明らかになった後、彼らも怒りを感じて、みんなすぐにネットで説明しようと言っていた。内海家に思い通りにさせてはいけない。恥知らずな人を見たことがあるが、ここまでの恥知らずは見たことがない。内海姉妹が両親を亡くしたのをいじめているのではないか。結城理仁が来たのを見て、牧野明凛は何か書いている内海唯花に触った。この事件が起こってから、内海唯花は携帯の電源を切っていないし、番号も変えていないが、着信はよく知っている人からのに出て、見知らぬ番号には出なかった。ネット民たちは彼女に大量のメッセージを送り、説教する内容ばかりを送ってきたが、内海唯花は一切見なかった。彼女は冷静で、紙に反撃の方法を書いていた。「唯花、ご主人さんが来たよ」牧野明凛は結城理仁への好意が急上昇した。親友がトラブルに巻き込まれると、すぐ結城理仁が駆けつけたのだ。たとえスピード結婚であっても、責任感のある夫だ。内海唯花が頭を上げて見ると、やはり結城理仁が着実な足取りで入ってくるのが見えた。すぐに、彼は内海唯花の机の前に立った。牧野明凛は気が利き、すぐ避けた。結城理仁はまず内海唯花の様子を見つめていたが、彼女が落ち着いているのを見て、彼は安心した。レジの上の紙を見て、彼は手を伸ばしその紙を手に取って見た。見終わった後、彼は賞賛する目つきで彼女を見た。「どうして来たの」と内海唯花が尋ねた。実は、結城理仁が入ってくるのを見てすぐに内海唯花の心は温かくなった。俺がいる。そう彼が言ったのだ。彼は本当にそれを有言実行した。彼女が何かあっ
続きを読む

第94話

内海唯花は少し黙った後、彼の言うとおりに行くことに決めた。レジから出ると親友に大きな声で言った。「明凛、ちょっと出かけてくる。店のことはあなたに任せたわよ。それと私のお姉ちゃんが来たら、私の代わりに慰めてあげて。今回の件、ちゃんとどうにかするから、彼女に心配しないでって伝えて」「わかったわ」牧野明凛は親友によく言い聞かせて、彼女が結城理仁と一緒に出ていくのを目で見送った。結城理仁の車に乗り、内海唯花は彼に尋ねた。「結城さん、メディア関係の友達がいるの?」「いるよ。君は彼らの助けが必要なの?」内海唯花は言った。「私、実家に帰っておじたちの家を撮ってこようと思って。もし第三者に証明できれば、もっと有利だと思うの。今私のおじや従兄弟たちがどんな仕事をしているのかわからないし」祖父母は今、彼女の両親が当時建てたばかりの家に住んでいて、彼女はこの二人の老人の住処の現状も撮る必要があった。どうしても少しずつ反駁していく必要があった。それから確固たる証拠も。今現在ネット民が彼女をどう貶そうが、彼女に関して激論を繰り広げようが、彼女は気にしなかった。結論は焦らず、とりあえずザワザワ騒いでいればいいさ。今あれらの噂を広めるために雇用されたサクラたちの勢いは、ネット民たちが彼女たち姉妹を罵る勢いを加速させていた。事が反転した時、利用されたと気づいたネット民たちは、さらに怒りを増して内海家の者たちへと向かうだろう。彼らが今彼女にやったことを、彼女は後できっちりお返ししてやるのだ。「俺は友人に君の従兄弟たちがどんな仕事をして、収入はどのくらいなのか調査してもらった。君があいつらの家の状況を撮って東京に戻ってきたら、当時の出来事を全て書き出したらいい。もし君が書けないなら、誰かを探して君の代わりに書かせるから。君は口頭でその話をしてくれたらいいよ」「ありがとう、誰かに代筆してもらわなくて大丈夫。別にツイッター文を書く必要はないの。お姉ちゃんは日記をつける習慣があって、当時のことは日記に書いてあるわ。その日記帳はまだ残してあるから、その日記に書かれていることを写真に撮ってネットにアップすればいいと思う。みんなに当時の出来事を知ってもらうのよ」「それから祖父母が、最初に両親の賠償金を分けて奪っていった時、私たちと一緒に合意書を作成したの。全
続きを読む

第95話

内海唯花はあっけにとられたが、笑って言った。「大変なことがあっても、それぞれ自分のことで精一杯な夫婦が多いわ。私たちみたいなスピード結婚の夫婦には感情もなにもないし、結婚してからたった半月足らずなのに。でもあなたが私と一緒に今回の件に立ち向かってくれて、本当に嬉しいわ」もしうまくいかなければ、今回のこの件は彼女の周りの人にも影響を及ぼすだろう。「お姉ちゃんと義兄さんは長く同級生で、何年も付き合ってから結婚して子供を産んだの。私たち姉妹が人気検索ワードに上がって、しかもよくない情報だと知ってから義兄の態度は悪くなったわ」結城理仁は少し黙ってから、口を開いた。「内海、君のお義兄さんと他の男を比べちゃダメだ。それじゃ他の男に対して不公平だよ。人それぞれ、一人一人の考え方は違うんだから」彼は佐々木俊介の唯月に対する感情が悪化したと思った。彼はただ妹の夫で、しかも本当の夫とは言えないような人だ。証拠がない限りは彼も佐々木俊介が不倫したとは強く言えなかった。ただ直感的に佐々木俊介はちょっと問題があるやつだと感じていた。「それもそうだね」姉の結婚は、唯花に愛や結婚そのものを少し受け入れがたくさせた。まあいい、彼女の夫とはまだ暮らしていける。ただたまに彼のやり方には、自尊心を傷つけられるような感じがあるが、重要なことに直面した時には、結城理仁は責任感が強かった。親友が彼女をからかってきたのを思い出した。彼女と結城理仁が半年で離婚する合意書にサインした以上、この半年間に夫婦間の情を育てる必要があるのか?「前方にサービスエリアがあるから、トイレに行ってくるか?ガソリンを入れないと」「うん」内海唯花は特に意見はなかった。数分走ると、結城理仁は車をサービスエリアの駐車場にとめた。夫婦は一緒に車を降りた。しかし結城理仁は手を洗ってすぐ車に戻り、九条悟に電話をかけた。九条悟が電話に出ると、彼は低い声で指示を出した。「悟、どんな手を使ってもいい、内海家の村にいる当時の内情に詳しいやつに唯花に代わって証言させてくれ」九条悟「......そんな簡単なこと、俺が一つ電話すればすぐ片付くさ」また小さいことに彼という最終兵器を使うとは。彼はすでに内海家の人間に関しては調査済だ。もちろん内海家の村人には接触していた。「奥さんはどうするつもり
続きを読む

第96話

「もちろん、おまえがお見合いに行って、スピード結婚したいというなら、もう一日多めにやってもいいぞ」九条悟はそのまま上司兼親友の電話を切った。 あいつを闇に引きずり込みたい!思い通りになんかなるか!結城理仁のスピード結婚は、彼のおばあさんから強制的にさせられたものである。結城おばあさんは内海唯花を気に入り、どうしようもないくらいで、自分の大切な孫の結婚ですら犠牲にするほどだった。九条悟に指示を出した後、結城理仁はまた車を降り、少し食べるものを買いに行った。内海唯花が車に戻ってくると、それを唯花に手渡して言った。「行って帰ってくるのにはまだ時間がかかるから、君は先に少し食べておけ。こんなことでお腹を空かせて胃を壊さないようにな」「あなたは食べた?」結城理仁は一声うんと返事した。彼は腹ペコにならないように適当に少し食べた。お腹いっぱいになりたかったら、このような軽食は彼の口には合わないのだ。彼が食べたというので、内海唯花は遠慮せずに食べた。そして、結城理仁は車を出し、内海唯花はお腹を満たしていた。内海家の村は東京から高速を利用して、車で一時間ちょっとかかる場所にあった。内海唯花は十年近く村に戻っていなかった。昔は姉妹二人、冬休みと夏休みには帰っていたが、帰るたびに祖父母に嫌な顔をされていた。彼女たちにご飯もあげなかった。だから自分たちで米や野菜を買ってきて作らなければならなかった。これはまだいい。最後のほうになると、祖父母は彼女たちの荷物ですら全て捨ててしまった。そして、彼女たちの部屋には燃料にする柴や雑用品を置き、彼女たちが帰ってきた時に寝る場所さえなかったのだ。両親が亡くなり、祖父母は彼女たちにとっては最も近しい血縁者だったのに、彼女たちを引き取ることはせず、両親が残した家を占拠し、彼女たちを追い出したのだ。姉妹はまだ若く村には基盤もなかった。誰かが彼女たちに同情しても、祖父母とやりあうような人はいなかった。彼女の祖母は特に気迫があり、誰かを罵ろうものなら、三日三晩罵り続けられる。村にはこのばあさんと、もめごとを引き起こそうとするような人はいなかった。お盆に帰って両親の墓参りをしたいと思ってもできなかった。かれらは姉妹が女の子だから、墓参りをさせないと言った。さらに自分勝手にある従兄を『養子』として両親の
続きを読む

第97話

内海唯花は素早く目じりの涙を拭き、そのおばあさんのほうを見た。すぐに相手が誰なのかわかった。「もしかして、玉置おばちゃん?」彼女の母親がまだ生きていた頃、母親と仲が良かったおばさんだった。「そうよ、帰ってきたの?」玉置おばさんは内海唯花にとても親切だった。「うちに来てちょっとお話する?」彼女は目の前の家を見て内海唯花に言った。「あなたのおばあさんは病気になって都内の病院で治療を受けてるって聞いたわ。おじいさんたち大勢で、都内に送って行ってたわよ。あの人たち小さい車で行って、よく知らない人は、おばあさんを連れて結婚式に行ったかと思っていたわ」「普段は彼らのあんな積極的な様子なんて見ないのに、あなたのおばあさんが病気になったとたん積極的になっちゃって、村人にただ見せかけのふりをしているだけよ」玉置おばさんはネットを見ないので、ネット上で騒がれていることは知らなかった。しかも数時間トレンドに上がっただけで、みんながみんな知っているわけではなかったのだ。「玉置おばちゃん、あの人たちは普段、祖父母には構っていないんですか?」「新年や祭日に果物でも買って、あなたのおじいさんとおばあさんに会いに来るくらいね。おじいさんは退職金と、あの時、あなたたちから分けてもらった大金があるから、おじいさんとおばあさんは生活に困ってないの。貯金は六百万から八百万くらいあるって聞いたわよ」玉置おばさんは、村の中のあの小さな別荘数棟を指差して唯花に言った。「あの別荘はあなたのおじさんたちのよ。あの人たちは村で一番お金持ちの家なの。あなたのおじいさんはいつも自分の子供や孫が能力があるって吹いて回るのが好きなの」「もし当時......こちらはあなたの彼氏さん?」玉置おばさんは、内海唯花のおじさんたちがこんなに良い生活ができるのは、当時二人の老人が両親を失った幼い孫娘たちから賠償金を半分持ち去り、自分の子供たちに分けたからだと思っていた。彼らはそのお金を資金にしてこのように成功できたのだ。今、内海唯花のおじさんたちの中に財産が二千万を超えていない者がいるだろうか?逆に内海唯花の家はどうだ。一家は没落し、家すらも占拠されてしまった。姉妹二人は長年なにも情報を得ていなかった。今日、内海唯花が帰ってきたのを見て、玉置おばさんは嬉しく、唯花に代わって憤慨した
続きを読む

第98話

「当時、あの人たちは言っていたわ。あなたたち両親の賠償金の半分を分けてくれれば、一生姉妹の二人から世話にもならないし、お墓のことも気にしなくていいって。それに、あなたのおばあさんの子供たちは、まだたくさんお金があるのよ。あなたたち姉妹がお金を出すまでもないの」「覚えておいて、あなたたちの両親が亡くなってすぐに、彼らはご両親の賠償金を分け始めて、あなたたちを引き取ることもせず、家も田畑まで占領したのよ。お墓参りにも行かせようとしなかったじゃない。お金を出さなくても悪いと思うことなんてないわ」玉置おばさんは内海唯花の母親と仲がよかったので、当然当時の出来事を知っていたのだ。当時、彼女のおじたちはお金を分けた後、彼女の両親が不慮の死を遂げたことを嫌がっていた。亡くなった時はまだ四十歳にもなっておらず、運が悪かった。病気のふりをしたり、言い訳をしたり、事後の処理を手伝いたくはなかったのだ。村長は見るに見かねて、彼らを叱り、指示を出してようやく彼らは嫌々ながらも事後処理を終わらせたのだ。「あの人たち人でなしよ」内海唯花が帰ってきたのを知って、玉置おばさんの家に足を運ぶ村人もいた。唯花の祖父母が村にいないので村人はそんなに怖くなかったからだ。当時のことについてはみんなそれぞれ言い分があって、話が止まらなかった。その話は全部内海姉妹に対する同情だった。結城理仁はこの人たちの話を全て録音しておいた。そしてネットで炎上した件についても村人たちに教えた。それにさっき彼らが話した内容も証拠としてそのネット記事に反撃する手段として使うことも伝えた。村人たちは結城理仁が録音していたことを知り、火あぶりの刑にでもあったような感覚だった。退路が絶たれると、彼らはどのみち内海家の人たちの恨みを買うのだから、いっそのこと良い人になろうと思い、内海唯花を手助けすることにした。そして、みんなはまた当時、内海家が姉妹に対して、どんなひどいことをしたのか話し始めた。これは全て結城理仁が録音して反撃をするための証拠だ。これと同時刻、東京都中心病院のとある病室で、内海おばあさんはベッドに座り元気そうにしていた。彼女は肝臓癌を患ったのだが、このおばあさんときたら気分が良さそうじゃないか。早期の癌なこともあり、なんともないような感じだった。内海おじいさんは妻に
続きを読む

第99話

「彼女たちがネット上で反論してこないか?」じじいは尋ねた。彼はネットに疎い。しかし、孫がネット上でツイートした内容は、でっち上げたもので事実ではないと知っていたので、彼は二人の孫娘が事実を包み隠さず投稿するのではないかと心配していた。そうなれば最終的に彼らは、金を巻き上げられないばかりか、面子を潰す羽目になってしまうのだ。「誰があいつらのことを信じるんだよ。ネット上のサクラをあんなに雇ったんだ。彼らがずっと情報を曝け出してる。彼女たちが出てきたって、すぐに怒り狂ったネット民たちから叩かれるのがオチだよ」じじいは言った。「智明、ばあさんの携帯から唯花にまた電話してみてくれ。彼女がそうなりたくないなら、すぐに金をよこせってな。唯月は結婚してるからそんなに金はないだろう。だから唯花から搾り取れるだけ金を巻き上げるんだ!」「彼女が千二百万よこせば、おまえのツイート文を消すと言ってな。じゃないと、彼女を社会的に殺して名誉もなくし、結婚できなくしてやるぞ」「じいちゃん、私たちは自分から動いたらだめだ。彼女たちから連絡が来るのを待とう。それで目的が達成できるんだから」内海智明はこのネット炎上によって、二人の従姉妹が彼らに連絡せざるを得ないと考えていた。じじいも考えた。確かにその通りだ。この件は先に動いたほうが負けになると。内海ばあさんは考えて言った。「あんたたちの使った写真は、たぶん彼女たちだって誰もわからないよ。ありゃあ十数年前の写真じゃないか。この間唯月に会った時、あのクソ娘母親にだんだん似てきた。唯花のほうは父親にそっくりだ」内海智明はどうしようもなく言った。「私たちが持っている写真はただこの写真だけなんだ。彼女たちが大人になってから連絡してこなかったから、最近の写真なんてあるわけないだろ」女の子は大人になると美しく変わるもので、二人の従姉妹の大人になった後の変化は著しいものだった。「ネット検索のランキングがどうして下がってるんだ?」内海智明はネット検索ランキングの順位が下がっているのに気づいた。数分ごとに更新すると順位が何位も下がっていく。もうすぐ検索ランキング外になりそうで、彼は急いで友人に電話をかけた。その理由を知り、内海智明はどうしようもなかった。「どうしたんだ?」じじいは心配して尋ねた。「検索ランキン
続きを読む

第100話

結城理仁は何も言わず携帯を内海唯花に手渡した。たくさんのネット民が内海唯花にメッセージや電話をかけてくるので、彼女の携帯は電池切れになり、彼女も静かに過ごすことができた。彼女のことを心配している人が連絡がつかないという不利な点もあったのだが。「誰?」「ばあちゃんだ」内海唯花は急いで携帯を受け取った。「おばあちゃん」「唯花ちゃん、おばあちゃんね、さっきネットに繋いで今ようやくあなたが困ってることに気づいたのよ。どう?何か手伝えることはある?構わずに理仁に言ってね。彼は社会人で何年も苦労してきたから、たくさん権力者に知り合いがいるんだから。こういう事は思いものままに処理できるわ。朝飯前よ」「あなたも遠慮しなくていいの、夫婦なんだからね。あの子がこんな小さい事も手伝わないなら、彼が帰ってきたらおばあちゃんがぶん殴ってやるわ」結城おばあさんは確かについさっき、ようやくこの件について知ったのだ。ただネットでのプチ炎上はあまり影響力がなく、結城理仁と神崎姫華とのゴシップ記事で埋もれてしまい、検索ランキングからは外れてしまった。彼らは自分の友人に頼ってリツイートするしかなくなり、今のところ影響力には限度があったのだ。おばあさんは、二番目の孫から可愛い孫娘が実家の親戚たちにいじめられているというのを聞いて知ったのだ。「おばあちゃん、大丈夫よ。おばあちゃんも言ったでしょ、これは小さな事よ、私もどうにかできるわ。でも、理仁さんもすごく手助けしてくれたの。今日一日中私に付き合ってくれたんだから」それを聞いて、おばあさんは笑って言った。「あの子ったら、良心と責任感はあるようね」心の中で内海唯花に何か困ったことがあると、孫はいつもそれを解決しているから、夫婦で一緒にいる時間が長くなれば、きっとお互いに愛し合うようになると思っていた。これは愛を育む絶好のチャンスじゃないか。孫は内海唯花の日々努力して向上する人柄に魅了されて、内海唯花は孫の冷たい仮面に隠された細やかな心遣いに気づくだろう。彼女は、この小さな夫婦が本当の夫婦になって、ひ孫を抱く予定だ。もちろん、おばあさんは実際には面と向かってそのようなことを言ったりはしないのだ。内海唯花を気遣った後、おばあさんは自分の孫に特に何も言うことはなく電話を切った。結城理仁は自分
続きを読む
前へ
1
...
89101112
...
19
コードをスキャンしてアプリで読む
DMCA.com Protection Status