Share

第98話

Author: リンフェイ
「当時、あの人たちは言っていたわ。あなたたち両親の賠償金の半分を分けてくれれば、一生姉妹の二人から世話にもならないし、お墓のことも気にしなくていいって。それに、あなたのおばあさんの子供たちは、まだたくさんお金があるのよ。あなたたち姉妹がお金を出すまでもないの」

「覚えておいて、あなたたちの両親が亡くなってすぐに、彼らはご両親の賠償金を分け始めて、あなたたちを引き取ることもせず、家も田畑まで占領したのよ。お墓参りにも行かせようとしなかったじゃない。お金を出さなくても悪いと思うことなんてないわ」

玉置おばさんは内海唯花の母親と仲がよかったので、当然当時の出来事を知っていたのだ。

当時、彼女のおじたちはお金を分けた後、彼女の両親が不慮の死を遂げたことを嫌がっていた。亡くなった時はまだ四十歳にもなっておらず、運が悪かった。病気のふりをしたり、言い訳をしたり、事後の処理を手伝いたくはなかったのだ。

村長は見るに見かねて、彼らを叱り、指示を出してようやく彼らは嫌々ながらも事後処理を終わらせたのだ。

「あの人たち人でなしよ」

内海唯花が帰ってきたのを知って、玉置おばさんの家に足を運ぶ村人もいた。唯花の祖父母が村にいないので村人はそんなに怖くなかったからだ。当時のことについてはみんなそれぞれ言い分があって、話が止まらなかった。

その話は全部内海姉妹に対する同情だった。

結城理仁はこの人たちの話を全て録音しておいた。

そしてネットで炎上した件についても村人たちに教えた。それにさっき彼らが話した内容も証拠としてそのネット記事に反撃する手段として使うことも伝えた。

村人たちは結城理仁が録音していたことを知り、火あぶりの刑にでもあったような感覚だった。

退路が絶たれると、彼らはどのみち内海家の人たちの恨みを買うのだから、いっそのこと良い人になろうと思い、内海唯花を手助けすることにした。

そして、みんなはまた当時、内海家が姉妹に対して、どんなひどいことをしたのか話し始めた。これは全て結城理仁が録音して反撃をするための証拠だ。

これと同時刻、東京都中心病院のとある病室で、内海おばあさんはベッドに座り元気そうにしていた。彼女は肝臓癌を患ったのだが、このおばあさんときたら気分が良さそうじゃないか。早期の癌なこともあり、なんともないような感じだった。

内海おじいさんは妻に
Locked Chapter
Continue Reading on GoodNovel
Scan code to download App

Related chapters

  • 交際0日婚のツンデレ御曹司に溺愛されています   第99話

    「彼女たちがネット上で反論してこないか?」じじいは尋ねた。彼はネットに疎い。しかし、孫がネット上でツイートした内容は、でっち上げたもので事実ではないと知っていたので、彼は二人の孫娘が事実を包み隠さず投稿するのではないかと心配していた。そうなれば最終的に彼らは、金を巻き上げられないばかりか、面子を潰す羽目になってしまうのだ。「誰があいつらのことを信じるんだよ。ネット上のサクラをあんなに雇ったんだ。彼らがずっと情報を曝け出してる。彼女たちが出てきたって、すぐに怒り狂ったネット民たちから叩かれるのがオチだよ」じじいは言った。「智明、ばあさんの携帯から唯花にまた電話してみてくれ。彼女がそうなりたくないなら、すぐに金をよこせってな。唯月は結婚してるからそんなに金はないだろう。だから唯花から搾り取れるだけ金を巻き上げるんだ!」「彼女が千二百万よこせば、おまえのツイート文を消すと言ってな。じゃないと、彼女を社会的に殺して名誉もなくし、結婚できなくしてやるぞ」「じいちゃん、私たちは自分から動いたらだめだ。彼女たちから連絡が来るのを待とう。それで目的が達成できるんだから」内海智明はこのネット炎上によって、二人の従姉妹が彼らに連絡せざるを得ないと考えていた。じじいも考えた。確かにその通りだ。この件は先に動いたほうが負けになると。内海ばあさんは考えて言った。「あんたたちの使った写真は、たぶん彼女たちだって誰もわからないよ。ありゃあ十数年前の写真じゃないか。この間唯月に会った時、あのクソ娘母親にだんだん似てきた。唯花のほうは父親にそっくりだ」内海智明はどうしようもなく言った。「私たちが持っている写真はただこの写真だけなんだ。彼女たちが大人になってから連絡してこなかったから、最近の写真なんてあるわけないだろ」女の子は大人になると美しく変わるもので、二人の従姉妹の大人になった後の変化は著しいものだった。「ネット検索のランキングがどうして下がってるんだ?」内海智明はネット検索ランキングの順位が下がっているのに気づいた。数分ごとに更新すると順位が何位も下がっていく。もうすぐ検索ランキング外になりそうで、彼は急いで友人に電話をかけた。その理由を知り、内海智明はどうしようもなかった。「どうしたんだ?」じじいは心配して尋ねた。「検索ランキン

  • 交際0日婚のツンデレ御曹司に溺愛されています   第100話

    結城理仁は何も言わず携帯を内海唯花に手渡した。たくさんのネット民が内海唯花にメッセージや電話をかけてくるので、彼女の携帯は電池切れになり、彼女も静かに過ごすことができた。彼女のことを心配している人が連絡がつかないという不利な点もあったのだが。「誰?」「ばあちゃんだ」内海唯花は急いで携帯を受け取った。「おばあちゃん」「唯花ちゃん、おばあちゃんね、さっきネットに繋いで今ようやくあなたが困ってることに気づいたのよ。どう?何か手伝えることはある?構わずに理仁に言ってね。彼は社会人で何年も苦労してきたから、たくさん権力者に知り合いがいるんだから。こういう事は思いものままに処理できるわ。朝飯前よ」「あなたも遠慮しなくていいの、夫婦なんだからね。あの子がこんな小さい事も手伝わないなら、彼が帰ってきたらおばあちゃんがぶん殴ってやるわ」結城おばあさんは確かについさっき、ようやくこの件について知ったのだ。ただネットでのプチ炎上はあまり影響力がなく、結城理仁と神崎姫華とのゴシップ記事で埋もれてしまい、検索ランキングからは外れてしまった。彼らは自分の友人に頼ってリツイートするしかなくなり、今のところ影響力には限度があったのだ。おばあさんは、二番目の孫から可愛い孫娘が実家の親戚たちにいじめられているというのを聞いて知ったのだ。「おばあちゃん、大丈夫よ。おばあちゃんも言ったでしょ、これは小さな事よ、私もどうにかできるわ。でも、理仁さんもすごく手助けしてくれたの。今日一日中私に付き合ってくれたんだから」それを聞いて、おばあさんは笑って言った。「あの子ったら、良心と責任感はあるようね」心の中で内海唯花に何か困ったことがあると、孫はいつもそれを解決しているから、夫婦で一緒にいる時間が長くなれば、きっとお互いに愛し合うようになると思っていた。これは愛を育む絶好のチャンスじゃないか。孫は内海唯花の日々努力して向上する人柄に魅了されて、内海唯花は孫の冷たい仮面に隠された細やかな心遣いに気づくだろう。彼女は、この小さな夫婦が本当の夫婦になって、ひ孫を抱く予定だ。もちろん、おばあさんは実際には面と向かってそのようなことを言ったりはしないのだ。内海唯花を気遣った後、おばあさんは自分の孫に特に何も言うことはなく電話を切った。結城理仁は自分

  • 交際0日婚のツンデレ御曹司に溺愛されています   第101話

    佐々木唯月は言った。「うん、あれからなんだけど、あの人たちは良心的なフォロワーから助けてもらって、おばあさんは無事に入院して手術の日程まで決まったとか言ってた。ネット民は私たちのことを恩を仇で返す恩知らずな人間だとか散々罵ってたわ。おじいさんとおばあさんが苦労して立派な大人に育ててくれたのに、不孝者の姉妹だってね。おばあさんが病気になって入院しているのに、お見舞いにも来ない義理も人情もない冷たい人間だ。おじいさんとおばあさんにも、天国にいる両親にも顔向けできない最低な奴らだって」佐々木唯月は一日中家でネット上のコメントを読みながら、だんだん怒りが溜まっていった。自分の両親のことにも触れられて、更に憎しみが増していった。彼女の両親がまだ生きていた頃、おじさんたちよりも祖父母には孝行していた。しかし、両親が亡くなってから彼らは彼女たちにどのような仕打ちをした?「お姉ちゃん、あんなネット弁慶たちの言うことなんて気にしないで。ああいう人たちは本当のことなんか知らないで表面的なことだけ見て簡単に信じ込む奴らよ。自分が利用されてるってのに全く気がついていない。自分は正義感溢れる善良な人間だと思ってる。でも彼らは誰かの駒になって無実の人を傷つけているなんて知りもしないんだから」ネット上の物事は、いつだって180度方向がコロコロと変わるものだ。内海唯花は今までそういうのをたくさん見てきた。この時、結城理仁が低く落ち着いた声で言った。「内海さん、君のおばあさんはネット民からの手助けで入院できたんじゃないぞ。あいつらは自分で費用を払い、入院手続きし、手術を受けることになったんだ。そのネット上に書かれているのは、あいつらが自分で勝手に書き込んだものなんだ」姉妹は彼の方を向いた。結城理仁は説明を加えて言った。「俺が君と一緒に君の故郷に行っていた時、サービスエリアで電話して俺の会社と付き合いがある木下社長に調査を依頼したんだ。彼は君の親戚たちはとても良く過ごしていると言っていたよ。君の祖父母、おじ、いとこ、みんな病院からそう遠くないホテルに泊まっているようだ。そんなことをするのは、どうせ君たちにお金を出させるためだろうな」神様は不公平だ。あのような一族たちを世間にのさぼらせているのだから。お金はあるが、良心は皆無。15年前二人の孤児をいじめ

  • 交際0日婚のツンデレ御曹司に溺愛されています   第102話

    文章には悲しみと怒り、絶望と無力感がびっしりと詰まっていた。内海唯花は姉の日記をめくりながら昔のことを思い出し、さめざめと泣いていた。『おじいさんとおばあさんはなるべく多くのお金を手にするために、母方の祖父母やおじさんたちと収拾がつかないほど喧嘩してた。彼らはどちらも自分たちが相手よりも多くお金を分配されるためだけに争って、誰一人として私たち姉妹のことを考えてくれる人なんかいなかった。私たちを引き取って育てようともしなかった。私の両親はどちらも亡くなったのに、あの人たちはお金のことばかりで、私たちの気持ちも考えてくれなかった。これを家族、親戚と呼べるの?お父さん、お母さん、早く帰ってきてよ。娘の私たちが今辛い目に遭ってるんだよ?どうして私と妹を放ったらかしにするの?ひどすぎるよ。雨が降ってきたわ。神様が私たち姉妹が両親を亡くして、可哀想と思って涙を流してくれてるのかな?私たち親がいない孤児になっちゃった。お父さんって呼んでも、もう返事してくれない。お母さんって呼んでも、もう聞こえないみたい。妹はまだ小さくて何も理解できていないみたい。私が泣いたら、彼女も泣くの。妹はいつも私にパパとママはいつ帰ってくるの?って聞くの。彼女はお父さんとお母さんが恋しいんだよ。妹を抱きしめながら泣いて、教えてあげたわ。お父さんとお母さんはもう二度と帰ってこないんだって。私と妹を置いて、天国に行っちゃったんだって。私たち親がいない孤児になっちゃった......』......『おじいさんとおばあさんはお金を多くもらうために、六千万を渡せば、これからは私たちが彼らの世話をしなくていいって。おじいさんたちが死んでも葬式とかお墓のこととかは、息子や孫がたくさんいるから心配する必要ないって言ってた。彼らの頭の中はお金のことばっかり。金、金、金。お金は親族に対する情よりも大切なのよ。孫娘よりもお金が大事だなんてことがある?あのお金はあなたたちの息子とそのお嫁さんが命と引き換えにしたものじゃない。あの人たち、お金欲しさにここまで騒いで、自分の息子とお嫁さんの気持ちを考えたことがあるの?あ、そっか、お父さんとお母さんはもう死んだんだもの、あいつらが死人の気持ちなんて考える必要ないよね。あいつら、とうとうお金を手に入れることができたわ。父方の祖父母に六千万円。母方の祖

  • 交際0日婚のツンデレ御曹司に溺愛されています   第103話

    内海唯花は姉の日記をツイッター上にアップして『不孝者の孫娘』に対する反応を見せた。姉の日記のほかに、彼女が故郷に戻った時に集めた証拠もだ。二人のこの老人は非常に良い生活を送っていて、何百万もの貯金があり、彼らの子供たちは村の中でも一、二を争うお金持ちだという証明もした。結城理仁は妻と一緒に義姉の家に行く途中、内海唯花におじいさんから電話が来て、電話の向こうから聞こえてくる元気な声が、車に搭載されているレコーダーに録音されているかもしれないと思い出していた。彼が確かめに行ってみると、本当にその声は録音されていた。内海唯花はそのおじいさんとの通話記録を一緒にネットにアップした。その後は、ネット民が大騒ぎし、いかに怒り狂ったのかは言うまでもないだろう。結城理仁は九条悟に内海家を調べさせた資料を、唯花のツイートには一緒に掲載せず、九条悟に任せて彼女のネットフレンドとして、内海家の子供や孫たちの現在の仕事や収入の状況を暴露した。はじめ『不孝者の孫娘』というツイートのトレンドワードへの関心は高かったが、今や多くのネット民たちは怒りに燃え滾っていた。本来、内海唯花姉妹が不孝者だと罵っていた者たちは、『不孝者の孫娘』を書いた作者に怒りの矛先を向けた。突如風向きが変わり、内海智明のメディア関係者の友人たちは急いで公式アカウントに掲載していた文章を削除した。怒り狂ったネット民たちから叩かれるのを恐れたのだろう。「お姉ちゃん、もう大丈夫よ。心配しなくていいわ。あいつらはもう二度と私たちにお金の要求なんかしてこないわ。もし来たとしても、それは私たちに大目に見てくださいって言って謝罪するためよ」内海唯花は姉を慰めて言った。「私はあいつらに本当に腹が立ってるの」佐々木唯月はぐっすりと眠っている息子を抱いていた。「私たちがやるべきことはもう全部やったわ。正義は人々の心の中にある。神様が私たちを公平に扱ってくれるのを信じましょう。唯花、あなたと結城さんは一日中走り回っていて疲れたでしょう。急いで帰って休みなさい」「お姉ちゃん、陽ちゃんを連れて部屋に戻って休んでね」姉が甥っ子をベッドに寝かしつけて部屋から出てきた後、内海唯花夫婦はおやすみの挨拶をし、帰って行った。一日中忙しく動き回り、内海唯花もとても疲れきっていた。それでも家に着い

  • 交際0日婚のツンデレ御曹司に溺愛されています   第104話

    内海唯花はそれからすぐには部屋に戻らなかった。彼女はベランダに行き、ハンモックチェアに座って、そこに置かれた花たちと暗い夜空に点々と輝く星を見つめた。心が穏やかになってから彼女はようやく体を起こし部屋へと戻って行った。夫婦二人の夜は、このように静かで平穏だった。一方、病院にいる内海家の人々は、ネットからの激しい攻撃を受けていた。彼らは先に内海唯花姉妹にネット暴力を浴びせたのだが、彼女たち二人に与えた影響は少なかった。逆に、内海唯花の彼らに対する反応には、佐々木唯月が当時書き記していた日記だけでなく、当時の真相、村民たちの音声による証言もあった。さらに村役場は内海唯花の証言に間違いはないとお墨付きを与えていたのだ。彼らの仕事、収入、家などの詳細がネット上では何でもできるネット民たちによってかき集められた。自分で建てた別荘に住み、なかなか良い仕事に就き、年収は少なくとも数百万から数千万あり、多い者で数千万から億もあるのだ。彼ら若者ならまだしも、二人の老人ですら数百万から一千万を超える貯金があるのだ。彼らの経済状況がとても良いことは明らかだった。それなのに、おばあさんが病気になりその医療費を二人の孫娘に支払わせようとしているのだ。特に内海おじいさんと唯花の通話記録がネット上に晒されると、ネット民たちからの罵りの嵐だった。「自分らの金は惜しむくせに、孫娘に金を出してもらおうってモラハラじゃん。子供も孫もたくさんいて、それぞれ金稼いでるってのに、なんで自分の子供に金出させないんだ?」「自分の子供じゃなくて孫なんでしょ。しかも当時二人の両親が亡くなって、その賠償金を分ける時に老人のお世話とお墓のこととかも関わる必要ないってサインまでしたのに。よくも今になって、いけ図々しくも道徳なんか振りかざして、孫娘にお金出させようとするよね」「録音聞いてみるとさ、あのじじいの言いっぷり、本当に人として終わってるっしょ?しかも、孫娘にあいつらが来るときにかかった交通費とガソリン代まで出してもらおうって。しかもしかも、ホテル代までだよ。自分の親が病気で入院したんだから、それは息子、娘の責任じゃないわけ?」「孫たちが孝行者だから、ちょっとお金と労力を出すのはよく分かる。でも、孫娘ばっかりに執着してさ。孫息子に一円も出させないのは一歩譲ったとしても、孫娘の

  • 交際0日婚のツンデレ御曹司に溺愛されています   第105話

    内海唯花の伯父の一人が甥に言った。「智文の仕事が一番重要だ。もし今回の件で智文が仕事を失いでもしたら」内海家の上から二番目の伯父は、その続きを言わなかった。彼の智明を見る目には責める色が見えた。ツイッターを利用して内海姉妹にモラハラをしたのは智明の意思だ。「おじさん、智文はあの会社で長年働いてきて、本社からの信頼も厚いんだ。こんな些細なことで仕事をクビになったりしないさ。俺がこの件は智文とは全くの無関係だと釈明すればいいだけの話さ」智明は個人経営をしているので、彼はネット上のことが彼の仕事に影響を与えるとは思っていなかった。内海家の二番目の伯父は、甥の話を聞いてすぐに安心した。そして息子に電話をかけ、ネットで今回の件は自分とは無関係だと説明し、巻き添えを食らって、仕事に影響を与えないようにと言った。「あの二人のクソガキどもは残酷な奴らだ」内海家の伯父は怒鳴った。「金を出したくないってんなら、出さなきゃいい話だろうよ。俺らを容赦なく窮地に追い込む必要なんかねえだろ。今や俺らは面目丸潰れだぞ」先に彼らが『不孝者の孫娘』をツイートをして、検索ワードには上がったが、その影響力は足りなかった。しかし、内海唯花からの反撃はかなりの影響力を持っていた。彼らには、親戚友人たちからの電話が絶えなかった。さらに知らない人間からも彼らを罵る電話がかかってきた。唯花姉妹がネット暴力に晒されたかどうか彼らは知らないが、彼らのほうはしっかりとネットからの攻撃を受けていた。ネット上は彼らへの怒りの声に満ち、わざわざ病院まで来て彼らを罵る者さえ現れた。病院の警備員がそのネット民たちを追い出したり、警察を呼ばなければ、彼ら一族は恐らく怒りに満ちたネット民たちから散々な目に遭わされていたことだろう。さらに卵を投げつけられていたかもしれない。ずっと黙っていた内海家のおばが口を開いて言った。「あんたたちがあんなことするって言った時、私は反対したでしょう。十数年前に、父さんと母さんは佐々木唯月たちと契約書にサインしたんだよ。そこには今後、彼女たちのお世話はいらない、葬式や墓のこともやる必要ないって書いてあったんだ。今母さんが病気になって、一致団結してあの子たちからお金を巻き上げようとするなんてさ。父さんと母さんだって子供がいないわけじゃないだろ。私らだって

  • 交際0日婚のツンデレ御曹司に溺愛されています   第106話

    内海家のおばあさんは村の中でも気が強く理不尽な人として知られていた。昔からずっと強硬な態度で、決して低い姿勢を見せない人だった。彼女はどうしても子供や孫たちに頭を下げて謝らせようとはしなかった。彼女は一体いつまでその姿勢を貫けることだろうか。内海唯花は故郷の親族たちがこの夜どのように過ごしているのかなど全く知らず、ぐっすりと眠っていた。空が明るくなる時間に両親が夢に現れ、彼女はお父さん、お母さんと叫び両親の手を掴もうとしたが、その手は虚しく空を切った。目が覚めた時、枕カバーが涙で濡れていた。しばらくの間ぼんやりと天井を見つめ、内海唯花はベッドから体を起こした。ティッシュを二枚手に取り、頬に残った涙の跡を拭って呟いた。「お父さん、お母さん、あなたたちの娘がいじめられてるってもしかして分かってるの?心配しないで、私とお姉ちゃんはもう15年前のような子供じゃないの。あいつらはもう私たちを容易く扱うことなんてできないのよ」彼女は携帯を手に取った。昨晩寝る前に携帯をマナーモードに設定しておいたのだ。見ると、多数の着信と未読のショートメッセージが来ていた。彼女が着信を見てみると、全て知らない番号からのものだった。おそらく内海家の人間がかけてきたものだろう。二つのショートメールを適当に開いてみると、やはり彼女にツイート文を消せという内容のものだった。しかも彼女たちはなんといっても同じ内海家の血が流れている家族なのだからとまで、ほざいているのだ。彼女がこのようにするのは、別に同じ血が流れている家族を窮地に追い込む気があるわけじゃないだろう。彼女がツイッターの記事を削除すれば、これ以上は言い争わないし、おばあさんの治療費を出せとも言わない。もし良心があって、お見舞いに来るなら祖父母への恩に報いることだなどと言っている。内海唯花はそれ以上ショートメッセージを見る気は失せてしまった。あの人たちは未だに自分たちは道理にかなっていて、彼女はやり過ぎだと、冷酷無情で容赦のない人間だと思っているのだ。どちらが先に手を出してきたのか等、全く考えてもいないのだ。もし彼女が十分な証拠を揃えて来なければ、姉妹二人のほうが彼らによって窮地に追い込まれていただろう。彼らは全く彼女たちに慈悲など示したことはない。さらには、図々しくも祖父母に対する恩に報いるべ

Latest chapter

  • 交際0日婚のツンデレ御曹司に溺愛されています   第322話

    俊介は母親に言った。「母さん、姉さんと一緒にショッピングして来なよ。何か好きな物があったら買えばいい」そう言うと、彼は携帯を取り出してペイペイを開き母親にショッピング用に十万円送金した。「わかったわ、後でお姉ちゃんと買い物に行って新しい服でも買って来る。あなたは早く仕事に戻って、仕事が終わったら早めに帰ってくるのよ」佐々木母は息子を玄関まで行って見送り、仕事が終わったら唯月にプレゼントを買うのを忘れないように目配せした。佐々木唯月はベビーカーを押してきて、息子を抱きかかえてその上に乗せ、淡々と言った。「私は陽を連れて散歩してきます」「いってらっしゃい」佐々木母は慈愛に満ちた笑顔を見せた。佐々木唯月はその時、瞬時に警戒心を持った。義母がこのような様子の時は絶対に彼女をはめようとしているのだ。はっきり言うと、義母と義姉が何か彼女に迷惑をかけようとしているのだろう。彼女たちがどんな要求をしてこようとも、唯月は絶対にそれに応えることはしない。そう考えながら、佐々木唯月はそれ以上彼女たちに構うのも面倒で、ベビーカーを押して出て行った。一方、内海唯花のほうは夜の店の忙しさが終わり、夕食を済ませていた。牧野明凛は先に家に帰っていて、彼女はハンドメイドの商品をきれいに包み、宅急便に電話をかけて荷物の回収をしてもらおうとしているところだった。今日発送ができるハンドメイド商品をお客に送った後、内海唯花は十一時になる前に店を閉めた。結城理仁がこの日の昼、佐々木俊介の不倫の証拠を持って来てくれた。また姉妹を助けてくれたから、内海唯花は理仁にお礼をしようと思い、理仁にまた新しい服を二着買いに行こうと決めたのだ。今度は彼にブランドのスーツを二着買おうと決めた。彼はカッコイイから、ブランドの良いスーツを着ればそのカッコよさに更に磨きがかかるだろう。夫がカッコイイと皆に褒められると、妻である彼女も鼻が高い。内海唯花は店を閉めた後、車を運転して行った。某ブランド服の店に着いた後、内海唯花は駐車場に車をとめ、携帯を片手に結城理仁にLINEをしながら車を降りた。結城理仁はこの時、まだスカイロイヤルホテルで顧客と食事をしながら商談をしていた。内海唯花からLINEが来ても彼の表情は変わらなかった。細かく見てみると、彼がLINEを見た後、

  • 交際0日婚のツンデレ御曹司に溺愛されています   第321話

    佐々木英子は声をさらに抑えて言った。「ちょっとお金使って何か彼女にプレゼントを買ってさ、ご機嫌取りをすればすぐに解決するわよ。どう言ったって、彼女は陽君の母親よ。その陽君のこともあるし、あんたの甥と姪の世話が必要なんだってことも考慮して、あんたから先に頭下げて、あいつをなだめるのよ。大の男は臨機応変な対応をしていかないと」佐々木母もやって来て娘の話に続いて小声で息子を説得した。「俊介、陽ちゃんのためにもあんた達二人は一緒に暮らしていったほうがいいわ。お姉ちゃんの言うことを聞いて、唯月に何か買ってやって、機嫌でも取ってきなさいよ。以前彼女があんたのことをしっかり世話してくれていたでしょ。それなのに今あんたはどう変わったかしっかり考えてみなさい。ちょっとくらい頭を下げたって、損ないでしょ」佐々木母は今日息子の家に来てみて、息子が一家の大黒柱としての威厳で嫁を制御できないことにとても心を痛めていた。しかし、こうなってしまったのも彼女と娘が俊介を唆した結果なのだ。もし彼女たち二人が息子に唯月と割り勘制にしたほうが良いと唆したりしなければ、唯月だって彼らと本気になって細かいところまでケチになったりしなかったのだ。「それか、お母さんとお父さんが一緒にここに住んで、子供の送り迎えをしてあげようか?」佐々木母は「陽ちゃんが幼稚園に上がったら、私も英子の子供たちと一緒に送り迎えできるし、唯月は仕事に行けばいいじゃない」と言った。佐々木英子は口を尖らせて言った。「あいつがどんな仕事するっての?陽君が幼稚園に上がったら、第二子を産むべきよ。佐々木家には男が少ないんだからさ。私には弟の俊介しかいなくて、もう一人多く弟が欲しくたってそれも叶わないんだから。今陽君には弟も妹もいないのよ。今国の出生率も落ちてるし、俊介、あんた達も二人目を考えないとだめよ。早めに唯月と二人目産みなさい。今ちょうどいいわ、来年には陽君は幼稚園に上がるから、次を産むのにはタイミングが良いのよ」佐々木英子は唯月に仕事をさせたくなかった。あの女は結婚する前はなかなか能力があった。もし唯月が仕事に復帰したら、すぐに結婚前のあの自信を取り戻し、高給取りとなり勢いに乗るはずだ。そんなことになれば、彼らは彼女をコントロールすることなどできなくなってしまう。だから佐々木唯月に二人

  • 交際0日婚のツンデレ御曹司に溺愛されています   第320話

    佐々木英子は自分の家族がどれだけ悪いことをやっているのかはっきりとわかっていたが、ただ反省する気などまったくなかった。高学歴女子だったとしても、一度結婚して子供を産んでしまえば、結婚生活や情というものに囚われてしまい、どんな理不尽なことに遭っても手を放すことができなくなってしまうものだ。「姉さん、俺あいつには言ったよ。断られた」佐々木俊介は今この状況では姉に胸を張って保証ができなかった。この間の家庭内暴力をきっかけに、夫婦関係は全く改善されていない。彼は成瀬莉奈がいて、その浮気相手のご機嫌取りばかり考えているので、家にいる見た目の悪い妻に構っている暇などなかったのだ。佐々木唯月も頑固だった。以前の彼女であればすぐに謝ってきたのに、今回は何がなんでも自分から頭を下げるつもりがないらしい。それ故、この夫婦二人の関係はずっとこのように硬直状態が続いていた。一緒に住んでいるが、別々の部屋で休み、各々自分のことをやっている。子供のこと以外で二人はお互いに話などしたくなかった。「こんな簡単なこともやってくれないって?私だって別にタダで手伝ってくれって言ってるんじゃなくて、毎月二万あげるってのに。あの子今稼ぎがないんだから、二万円は彼女にとってとっても多いでしょ」もし弟夫婦が喧嘩して、彼女もそれに加担して彼女と義妹である唯月の関係が更に悪化していなければ、佐々木英子は一円たりともお金を出したくはなかった。「俺もあいつにあと三万の生活費を出してやるって言ったのに、あいつそれでも首を縦に振らないんだ。家の名義については問題ないよ。俺の姉さんなんだし、同じ母親から生まれたんだから、姉さんを信じてるよ。この家は俺が結婚する前に買ったやつで、今も毎月ローン俺が返してるんだ。唯月はリフォーム代だけしか出してないから、家の名義を書き換えることになったとして、彼女が反対してきても意味はないさ」佐々木唯月は彼が家の名義を姉にするつもりなら、リフォーム代を返せと言ってきたのだ。それに対して彼もそんなの受け入れられず、一円たりとも返さないと反発した。もし佐々木唯月に度胸があるというなら、壁紙も全部剥がしてみるがいい。佐々木英子は言った。「うちの子の送り迎えやご飯の用意、宿題の指導とか誰もしてくれないなら、私にこの家を譲ってくれても意味ないじゃ

  • 交際0日婚のツンデレ御曹司に溺愛されています   第319話

    野菜炒めは昨日作った時に余った材料を半分冷蔵庫に入れていたのだった。ただその量は多くなく、彼女一人が食べる分しかなかった。これは彼女のお金で買ったものだから、あの母子三人にはあげなかった。佐々木英子「……」このクソデブ女、まさか先に自分の分のご飯とおかずを残しておいただなんて。これじゃお腹を空かすことはないじゃないか。佐々木唯月はご飯とおかずを持って出て行き、テーブルに座ると、優雅に自分の夕食を楽しんだ。内海唯花は姉がいじめられないか心配で忙しい中時間を作って彼女に電話をして尋ねた。「お姉ちゃん、あいつら手を組んでいじめてきてない?」「この前包丁で俊介を追いかけ回した件からは、あいつらは今ただ口喧嘩しかしてこないわ。夫のことなんか気にしなくなった女性はその夫とその家族の不当な行いに二度と寛容ではいなくなるのよ」内海唯花は姉がそのように言うのを聞いて、安心した。「お姉ちゃん、ご飯ちゃんと食べた?」「今食べてるわ。あなたはご飯まだなの?」「一区切りついたら食べるわ。お姉ちゃん、じゃ、電話切るわね」「うん」佐々木唯月はこの時間帯、妹はとても忙しいのがわかっていた。妹との電話を終えた後、彼女は引き続き夕食を食べ始めた。佐々木英子が食器を洗い終わってキッチンから出て来た時に佐々木唯月はもうお腹いっぱい食べていた。子供ができてから、彼女がご飯を食べるスピードはとても速くなった。「俊介、あなたに話したいことがあるのよ」佐々木英子は弟のところまでやって来て横に座ると小声で言った。「あなたが仕事終わって帰ってくる前、唯月が唯花に何か渡していたわ。大きな袋よ。ちょっと家の中でなくなったものがないか確認してみて。何か美味しい物でも買って家に置いていたりした?私が思うにあの中は食べ物だと思う」佐々木俊介は眉間にしわを寄せた。唯月が内海唯花にこの家から何かをあげるのは好きではないのだ。姉が何か食べ物ではないかと言ったので、彼は眉間のしわを元に戻し言った。「姉さん、俺は今何か食べ物を買ってきて家に置いたりしてないから、俺が買ったものじゃないよ」「そうなんだ。それならいいけどね。もしあなたが買った物をあいつの妹に持っていかれたりしたら、それを取り返さないと。損しちゃうわよ」「姉さん、俺は損したりなんかしないって。ねえ、姉

  • 交際0日婚のツンデレ御曹司に溺愛されています   第318話

    内海唯花がご飯を食べる速度はとても速く、以前はいつも唯花が先に食べ終わって、すぐに唯月に代わって陽にご飯を食べさせ、彼女が食べられるようにしてくれていた。義母のほうの家族はそれぞれ自分が食べることばかりで、お腹いっぱいになったら、全く彼女のことを気にしたりしなかった。まるで彼女はお腹が空かないと思っているような態度だ。「母さん、エビ食べて」佐々木俊介は母親にエビを数匹皿に入れると、次は姉を呼んだ。「姉さん、たくさん食べて、姉さんが好きなものだろ」佐々木英子はカニを食べながら言った。「今日のカニは身がないのよ。小さすぎて食べるところがないわ。ただカニの味を味わうだけね」唯月に対する嫌味は明らかだった。佐々木俊介は少し黙ってから言った。「次はホテルに食事に連れて行くよ」「ホテルのご飯は高すぎるでしょ。あなただってお金を稼ぐのは楽じゃないんだし。次はお金を私に送金してちょうだい。お姉ちゃんが買って来て唯月に作らせるから」佐々木英子は弟のためを思って言っている様子を見せた。「それでもいいよ」佐々木俊介は唯月に少しだけ労働費を渡せばいいと思った。今後は海鮮を買うなら、姉に送金して買ってきてもらおう。もちろん、姉が買いに行くなら、彼が送金する金額はもっと多い。姉は海鮮料理が好きだ。毎度家に来るたび、毎食は海鮮料理が食べたいと言う。魚介類は高いから、姉が買いに行くというなら、六千円では足りるわけがない。佐々木家の母と子供たち三人は美味しそうにご飯を食べていた。エビとカニが小さいとはいえ、唯月の料理の腕はかなりのものだ。実際、姉妹二人は料理上手で、作る料理はどれも逸品だった。すぐに母子三人は食べ終わってしまった。海鮮料理二皿もきれいに平らげてしまい、エビ半分ですら唯月には残していなかった。佐々木母は箸を置いた後、満足そうにティッシュで口元を拭き、突然声を出した。「私たちおかず全部食べちゃって、唯月は何を食べるのよ?」すぐに唯月のほうを向いて言った。「唯月、私たちったらうっかりおかずを全部食べちゃったのよ。あなた後で目玉焼きでも作って食べてちょうだい」佐々木唯月は顔も上げずに慣れたように「わかりました」と答えた。佐々木陽も腹八分目でお腹がいっぱいになった。これ以上食べさせても、彼は口を開けてはくれない。佐々木

  • 交際0日婚のツンデレ御曹司に溺愛されています   第317話

    佐々木俊介は彼女を睨んで、詰問を始めた。「俺はお前に一万送金しなかったか?」それを聞いて、佐々木英子はすぐに立ち上がり、急ぎ足でやって来て弟の話に続けて言った。「唯月、あんた俊介のお金を騙し取ったのね。私には俊介が六千円しかくれなかったから、大きなエビとカニが買えなかったって言ったじゃないの」佐々木唯月は顔も上げずに、引き続き息子にご飯を食べさせていた。そして感情を込めずに佐々木俊介に注意した。「あなたに言ったでしょ、来たのはあなたの母親と姉でそもそもあんたがお金を出して食材を買うべきだって。私が彼女たちにご飯を作ってあげるなら、給料として四千円もらうとも言ったはずよ。あんた達に貸しなんか作ってないのに、タダであんた達にご飯作って食べさせなきゃならないなんて。私にとっては全くメリットはないのに、あんた達に責められて罵られるなんてありえないわ」以前なら、彼女はこのように苦労しても何も文句は言わなかっただろう?佐々木俊介はまた言葉に詰まった。佐々木英子は弟の顔色を見て、佐々木唯月が言った話は本当のことだとわかった。そして彼女は腹を立ててソファに戻り腰掛けた。そして腹立たしい様子で佐々木唯月を責め始めた。「唯月、あんたと俊介は夫婦よ。夫婦なのにそんなに細かく分けて何がしたいのよ?それに私とお母さんはあんたの義母家族よ。あんたは私たち佐々木家に嫁に来た家族なんだよ。あんたに料理を作らせたからって、俊介に給料まで要求するのか?こんなことするってんなら、俊介に外食に連れてってもらったほうがマシじゃないか。もっと良いものが食べられるしさ」佐々木唯月は顔を上げて夫と義姉をちらりと見ると、また息子にご飯を食べさせるのに専念した。「割り勘でしょ。それぞれでやればいいのよ。そうすればお互いに貸し借りなしなんだから」佐々木家の面々「……」彼らが佐々木俊介に割り勘制にするように言ったのはお金の話であって、家事は含まれていなかったのだ。しかし、佐々木唯月は徹底的に割り勘を行うので、彼らも何も言えなくなった。なんといっても割り勘の話を持ち出してきたのは佐々木俊介のほうなのだから。「もちろん、あなた達が私に給料を渡したくないっていうのなら、ここに来た時には俊介に頼んでホテルで食事すればいいわ。私もそのほうが気楽で自由だし」彼女も今はこの気分を

  • 交際0日婚のツンデレ御曹司に溺愛されています   第316話

    しかも一箱分のおもちゃではなかった。するとすぐに、リビングの床の上は彼のおもちゃでいっぱいになってしまった。佐々木英子は散らかった部屋が嫌いで、叫んだ。「唯月、今すぐ出てきてリビングを片付けなさい。陽君がおもちゃを散らかして、部屋中がおもちゃだらけよ」佐々木唯月はキッチンの入り口まで来て、リビングの状況を確認して言った。「陽におもちゃで遊ばせておいてください。後で片づけるから」そしてまたキッチンに戻って料理を作り始めた。陽はまさによく動き回る年頃で、おもちゃで遊んだら、また他の物に興味を持って遊び始める。どうせリビングはめちゃくちゃになってしまうのだ。佐々木英子は眉間にしわを寄せて、キッチンの入り口までやって来ると、ドアに寄りかかって唯月に尋ねた「唯月、あんたさっき妹に何を持たせたの?あんなに大きな袋、うちの俊介が買ったものを持ち出すんじゃないよ。俊介は外で働いてあんなに疲れているの。それも全部この家庭のためなのよ。あんたの妹は今結婚して自分の家庭を持っているでしょ。バカな真似はしないのよ、自分の家庭を顧みずに妹ばかりによくしないで」佐々木唯月は後ろを振り返り彼女を睨みつけて冷たい表情で言った。「うちの唯花は私の助けなんか必要ないわ。どっかの誰かさんみたいに、自分たち夫婦のお金は惜しんで、弟の金を使うようなことはしません。美味しい物が食べたい時に自分のお金は使わずにわざわざ弟の家に行って食べるような真似もしませんよ」「あんたね!」逆に憎まれ口を叩かれて、佐々木英子は卒倒するほど激怒した。暫くの間佐々木唯月を物凄い剣幕で睨みつけて、佐々木英子は唯月に背を向けてキッチンから出て行った。弟が帰って来たら、弟に部屋をしっかり調べさせて何かなくなっていないか確認させよう。もし、何かがなくなっていたら、唯月が妹にあげたということだ。母親と姉が来たのを知って、佐々木俊介は仕事が終わると直接帰宅した。彼が家に入ると、散らかったリビングが目に飛び込んできた。そしてすぐに口を大きく開けて、喉が裂けるほど大きな声で叫んだ。「唯月、リビングがどうなってるか見てみろよ。片付けも知らないのか。陽のおもちゃが部屋中に転がってんぞ。お前、毎日一日中家の中にいて何やってんだ?何もやってねえじゃねえか」佐々木唯月はお椀を持って出て来た。先

  • 交際0日婚のツンデレ御曹司に溺愛されています   第315話

    それを聞いて、佐々木英子は唯月に長い説教をしようとしたが、母親がこっそりと彼女の服を引っ張ってそれを止めたので、彼女は仕方なくその怒りの火を消した。内海唯花は姉を手伝ってベビーカーを押して家の中に入ってきた。さっき佐々木英子が姉にも六千円出して海鮮を買うべきだという話を聞いて、内海唯花は怒りで思わず笑ってしまった。今までこんな頭がおかしな人間を見たことはない。「お母さん」佐々木英子は姉妹が家に入ってから、小さい声で母親に言った。「なんで私に文句言わせてくれないのよ!弟の金で食べて、弟の家に住んで、弟の金を浪費してんのよ。うちらがご飯を食べに来るのに俊介の家族だからってはっきり線を引きやがったのよ」「あんたの弟は今唯月と割り勘にしてるでしょ。私たちは俊介の家族よ。ここにご飯を食べに来て、唯月があんなふうに分けるのも、その割り勘制の理にかなってるわ。あんたが彼女に怒って文句なんか言ったら、誰があんたの子供たちの送り迎えやらご飯を作ってくれるってんだい?」佐々木英子は今日ここへ来た重要な目的を思い出して、怒りを鎮めた。しかし、それでもぶつぶつと言っていた。弟には妻がいるのにいないのと同じだと思っていた。佐々木唯月は義母と義姉のことを全く気にかけていないと思ったのだった。「唯月、高校生たちはもうすぐ下校時間だから、急いで店に戻って店番したほうがいいんじゃないの?お姉ちゃんの手伝いはしなくていいわよ」佐々木唯月は妹に早く戻るように催促した。「お姉ちゃん、私ちょっと心配だわ」「心配しないで。お姉ちゃんは二度とあいつらに我慢したりしないから。店に戻って仕事して。もし何かあったら、あなたに電話するから」内海唯花はやはりここから離れたくなかった。「あなたよく用事があって、いつも明凛ちゃんに店番させてたら、あなた達がいくら仲良しの親友だからって、いつもいつもはだめでしょ。早く店に戻って、仕事してちょうだい」「明凛は理解してくれるよ。彼女こそ私にお姉ちゃんの手伝いさせるように言ったんだから。店のことは心配しないでって」「あの子が気にしないからって、いつもこんなことしちゃだめよ。本当によくないわ。ほら、早く帰って。お姉ちゃん一人でどうにかできるから。大丈夫よ。あいつらが私をいじめようってんなら、私は遠慮せずに包丁を持って街中を

  • 交際0日婚のツンデレ御曹司に溺愛されています   第314話

    両親が佐々木英子の子供の世話をし、送り迎えしてくれている。唯月は誰も手伝ってくれる人がおらず自分一人で子供の世話をしているから、ずっと家で専業主婦をするしかなかったのだ。それで稼ぎはなく彼ら一家にこっぴどくいじめられてきた。母と娘はまたかなり待って、佐々木唯月はようやく息子を連れて帰ってきた。母子の後ろには内海唯花も一緒について来ていた。内海唯花の手にはスーパーで買ってきた魚介類の袋が下がっていた。佐々木家の母と娘は唯月が帰って来たのを見ると、すぐに怒鳴ろうとしたが、後ろに内海唯花がついて来ているのを見て、それを呑み込んでしまった。先日の家庭内暴力事件の後、佐々木家の母と娘は内海唯花に話しに行ったことがある。しかし、結果は唯花に言いくるめられて慌てて逃げるように帰ってきた。内海唯花とはあまり関わりたくなかった。「陽ちゃん」佐々木母はすぐにニコニコ笑って彼らのもとに行くと、ベビーカーの中から佐々木陽を抱き上げた。「陽ちゃん、おばあちゃんとっても会いたかったわ」佐々木母は孫を抱きながら両頬にキスの嵐を浴びせた。「おばあたん」陽は何度もキスをされた後、小さな手で祖母にキスされたところを拭きながら、祖母を呼んだ。佐々木英子は陽の顔を軽くつねながら笑って言った。「暫くの間会ってなかったら、陽君のお顔はぷくぷくしてきたわね。触った感じとても気持ちいいわ。うちの子みたいじゃないわね。あの子は痩せてるからなぁ」佐々木陽は手をあげて伯母が彼をつねる手を叩き払った。伯母の彼をつねるその手が痛かったからだ。佐々木唯月が何か言う前に佐々木母は娘に言った。「子供の目の前で太ってるなんて言ったらだめでしょう。陽ちゃんは太ってないわ。これくらいがちょうどいいの」佐々木母は外孫のほうが太っていると思っていた。「陽ちゃんの叔母さんも来たのね」佐々木母は今やっと内海唯花に気づいたふりをして、礼儀正しく唯花に挨拶をした。内海唯花は淡々とうんと一言返事をした。「お姉さんと陽ちゃんを送って来たんです」彼女はあの海鮮の入った袋を佐々木英子に手渡した。「これ、あなたが食べたいっていう魚介類です」佐々木英子は毎日なかなか良い生活を送っていた。両親が世話をしてくれているし、美味しい物が食べたいなら、いつでも食べられるのに、わざわざ弟の家に来

Scan code to read on App
DMCA.com Protection Status