Share

第125話

Penulis: リンフェイ
牧野明凛はそう言った後、従弟をいぶかしそうに見つめ尋ねた。「琉生、なんでこんなこと聞くのよ?

金城琉生はもちろん自分が内海唯花に密かな恋心を抱いていて、彼女が離婚するのを期待しているとは言えず、でたらめを言った。「ただ唯花姉さんの心配してるだけだよ。それ以外の何でもないってば。唯花さんはあんなに優秀な女性なんだ、もし旦那さんが彼女を好きにならないなら、早めに離婚するのも良いと思ってさ。彼女のよさを良く理解してる男性を見つければ幸せになれるに決まってるよ。

「それはそうよ。唯花はとっても良い子なんだから、私は結城さんが唯花のことを愛するようになるって思うわ。もしかしたら唯花が彼を好きになるより、彼のほうが先に唯花のことを好きになっちゃうかもよ」

牧野明凛は親友が幸せな日々を過ごしていくことを望んでいるのだ。

金城琉生はそれを聞いて気が塞いだ。

従姉にも彼が内海唯花に片思いしているなんて告白できないし。

従姉がそれを母親に言うのが怖いのだ。

彼が内海唯花より年下なのは言うまでもなく、内海唯花が既婚者だからだ。もし彼女が離婚したとしても、彼の母親はすぐには彼女を受け入れてはくれないだろう。

十分に状況把握ができるまでは、金城琉生は自分の気持ちをしっかりと隠しておいて、誰かに知られないようにしているのだ。

夕日が西の空に沈み、黒の帳が人々が暮らす大地に降りる。夜がこうして静かに訪れた。

トキワ・フラワーガーデンにて。

内海唯花はキッチンで忙しくしていた。キッチンから時折香る美味しそうな匂いにつられて、結城理仁がキッチンの入口までやってきた。

彼は手伝いをしようと思っていたが、内海唯花がご馳走する側なんだから自分一人でやると言って、彼には休んでてもらったのだ。それで彼はやることがなく、リビングでテレビを見ていたが、特に面白くないと思い、妻が料理を作る様子を見ているほうが面白いと思って来たのだった。

内海唯花の賢く優しい様子に、結城理仁は彼女から目を離さずじっと見つめて、ますます柔らかい目つきになった。彼自身がそれに気づいていないだけで、ただ内海唯花の良いところはたくさんあると思っていた。

「内海さん」

結城理仁はあることを思い出し、突然彼女を呼んだ。

唯花は頭を彼のほうへ向けて目線を送り、引き続き料理に取り掛かって尋ねた。「結城さん、なにかある
Bab Terkunci
Lanjutkan Membaca di GoodNovel
Pindai kode untuk mengunduh Aplikasi

Bab terkait

  • 交際0日婚のツンデレ御曹司に溺愛されています   第126話

    結城理仁は少し悶々としていた。しかし、考えを変えれば弟が内海唯花のハンドメイドの販路拡大をしたことで唯花が儲かったわけで、彼女は今、彼の妻でもあるのだから、利益が他人に流れていったわけではないから、そう思うと、もやもやしていた気持ちは良くなってきた。内海唯花は出来上がった料理を持ってキッチンから出て来ると、食卓の上に並べた。夫婦二人は席につくと、一緒に夜ご飯を食べ始めた。彼は機嫌も良く、美味しそうに食べていた。唯花の料理の腕はとても高く、褒める言葉しか出てこなかった。彼は本当にご馳走に恵まれている。食事の後、皿洗いを済ませると、唯花はソファに置いていた彼に買ったプレゼントの袋を持ち上げ、中から服を取り出して理仁に手渡して言った。「結城さん、これサイズが合うか試してみてもらえない?あなたはあんなに私を助けてくれたのに、ただ料理をご馳走するだけじゃ私が納得できないくて、新しい服を二セット買ったの。それから、ネクタイも二本。服は全部あなたが好きな黒よ」結城理仁はそれが彼に買った服だと気づいていたが、それを表情には出さず、服を受け取ってめくって見てから彼女に尋ねた。「君はどうして俺の服のサイズを知ってるんだ?」「おばあさんに聞いたのよ」理仁は何も言わなかった。「試してみる?」「いいよ、ちょうど良いと思う」彼女は全部彼の好きな色を選んだ。「今度俺に買ってくれる時、何を買ったらいいか迷ったら、直接聞いてくれていいから」おばあさんには聞いてほしくなかった。おばあさんが知ったら、裏でどんな企みを抱いているか分かったもんじゃないからだ。「あなたは仕事が忙しいし、いつも邪魔するわけにはいかないよ」結城理仁は黙ってしまった。彼は確かにとても忙しい。こまごまとした煩わしい事は確かに彼女から聞かれるのはあまり好きじゃない。「結城さん、まだ時間も早いし一緒に散歩しよう。そういえば、私がここに引越してきてからしばらく経つけど、まだ近所を散策してなかったもの」結城理仁は少しためらってから、一緒に行くことにした。彼もトキワ・フラワーガーデンの周りはよく知らないのだ。当初、彼に代わってこの家を買ったのは執事だったのだ。それから、夫婦二人は初めて一緒に散歩に出かけた。結城理仁は寡黙で口数の少ない人だし、この二人は

  • 交際0日婚のツンデレ御曹司に溺愛されています   第127話

    コミュニティを散歩している人たちはたくさんいた。そのほとんどは子供連れの家族で、手を繋いで歩いている若い夫婦もいて、とても熱々な様子だった。二人は他の夫婦がとても仲むつまじいのを見ていた。それとは反対に、彼らは相変わらず肩を並べて歩いているだけで、自分から手を繋ごうとはしなかった。なのに、すれ違った人がこの夫婦を振り向く割合は非常に高かった。美男美女カップルだからだ。最後に内海唯花はコミュニティ内にある子供遊園地に来て足を止め、隣にいる男性に言った。「ここでちょっと休みましょ、子供がたくさんいるし」彼女は大の子供好きなのだ。甥っ子の佐々木陽のことも非常に可愛がっている。結城理仁は何も言わず黙ったまま彼女に付いて、石で作られたスツールに腰掛けた。「陽ちゃんがここにいたら、絶対楽しく遊んでいるでしょうね」理仁は、うんと答えた。唯花は頭を傾けて彼を見た。理仁は彼女にこのように見つめられて、なんだかそわそわした。ところが、警戒心を持って彼女に尋ねた。「そんなふうに俺を見つめて、どうしたんだ?」「カッコイイから、たくさん見つめて、目の保養してるだけ」結城理仁「......」「結城さんって、ハンサムだし、優秀だし、素晴らしい遺伝子を持っているってことよ。もし将来子供ができたら、きっと利口で賢い子が生まれるでしょうね」「俺の子供が欲しくなった?」唯花は笑って「おばあちゃんったら、いっつも私にあなたを襲えって言うのよ。女の子のひ孫が欲しいんだって」と言った。それを聞いて、理仁はこっそり彼女のほうにおしりをずらし、唯花との距離を縮めた。唯花はそれに気づいておらず、続けて言った。「結城さんが私のことをなんとも思ってないって分かってる。実際、私自身もあなたに対して愛なんて持ってないし、お互いに気持ちのない夫婦なのに、本当に私があなたを襲ったら、夫婦同士のプラトニックな心の触れ合いじゃないわ。もしお金を出したらあなたを買ったみたいになるわね」結城理仁はそれを聞いて不機嫌になった。「私たちには、子供なんてできっこないわ。おばあちゃんのために、辰巳君たちに頑張ってもらいましょ」彼らに本当に子供ができる可能性がないだろうか?結城理仁はこの言葉を聞いて、とても不機嫌になった。しかし、彼女に何か言い返すわけでもなく、依然

  • 交際0日婚のツンデレ御曹司に溺愛されています   第128話

    結城理仁「......」彼は実際、彼女と何を話せばいいのか分からないのだ。周りにいるあの若い夫婦は結婚して間もなく、はちみつのように甘くラブラブで手を絡め合わせて歩いている。子供のいる夫婦は主に子供の話題で話は途切れないだろう。彼ら二人のように、感情も子供もない者同士が何か話そうと思っても、それは難しい話だ。結城理仁の言葉に詰まった様子を見て、内海唯花は笑って立ち上がると、理仁を引っ張った。「さあ、そろそろ帰りましょう。なんだか、あなた、ぎこちない感じだし、まるで私がいつでもあなたを襲おうとしているみたいだわ」「内海さん、君は女の子だろ!」「女だからってどうしたの?言っただけで何も失うものなんかないわよ」内海唯花は彼を引っ張って行った。引っ張ると言っても、彼の服を掴んでいるだけで実際には彼の手には触れていない。もし彼に触れでもしたら、彼は帰ってから百回手を洗うかもしれない。「二日前のトレンドワードを見てないよね。結城御曹司と神崎グループのご令嬢のゴシップよ。神崎さんは結城御曹司のことが好きで、みんなの前で彼に告白して追いかけてるの。男の人が好きな子に出会ったら、もちろん追いかけるだろうし、女の人が好きな人に出会ったら、それももちろん追いかけるでしょ。どちらも本当の愛を追い求めてるんだわ。私は神崎さんのこと、とてもすごいなって思うの。彼女は間接的にだけど私を助けてくれたわ。彼女は私のことなんて知らないけど、私は裏で彼女が本当の愛を手に入れて彼と結婚できるように応援してるわ。今は彼になかなか振り向いてもらえなくて大変だと思うけど、いつか彼が彼女に振り向いて彼女を好きになったら、立場が逆転して溺愛されるはずよ」神崎姫華が間接的にだが『不孝者の孫娘』の注目検索をランキングから押し下げてくれて、内海唯花姉妹への影響が軽減されたのだ。だから、唯花は神崎姫華に対して好感を持っていた。さらに神崎姫華の自分の気持ちに正直に恐れず突き進むストレートな性格に、唯花は彼女を気に入っていた。結城理仁は自分の妻の話を聞いて、眩暈がするほど呆れてしまった。そして、心の中で否定した:もしその結城御曹司とやらが自分の夫だと知っていたら、まだそんなふざけた話ができるのか?「結城御曹司は神崎さんのことを嫌っているようだけど」結城理仁は自分に代わ

  • 交際0日婚のツンデレ御曹司に溺愛されています   第129話

    内海唯花は「......あなたは会社でもチーフでしょ?社長に会う機会もそんなに少ないなんて、あなたたちの社長って本当に……うん、お高くとまってて、謎が多いわね」ネット上にも全く結城御曹司の写真は出回っていない。結城御曹司はどこへ行くにもボディーガードがついている。以前パーティーでもボディーガードの数が多すぎるし、みんな背も高く体格が良くて彼女と親友がつま先立ちしても彼を一目見ることすらできなかった。結城理仁が結城グループで働いていて、しかもホワイトカラーであっても結城御曹司に会う機会が少ないのを思い、内海唯花の心が落ち着いた。結城理仁は彼女の話に返事をしなかった。誰かが彼をどう評価しようとも彼は全く気にしなかった。彼は何をするのも自分の意向に従って行っているからだ。結城御曹司の話題を夫婦で話しながら彼らの住むB棟に帰ってきた。結城理仁のボディーガードは付近を一緒に歩き回っていた。自分たちの主人とその奥さんにくっついて回ってはいなかったが、夫婦二人が行く場所には彼らもついて行き、ひと時も視線を彼らから離していなかった。もちろん、内海唯花は常に誰かから見張られているということは知らなかった。彼女が何気なくあたりを見回すと、そう遠くないところにいるあるボディーガードが見えた。その瞬間、その人に見覚えがある気がして立ち止まり、結城理仁に「あの男の人、なんだか見覚えがあるんだけど」と言った。結城理仁はギクリとした。そのボディーガードは、あの七瀬だ。七瀬は自分の主人と奥さんが自分を見ていることに驚き、すぐに何事もなかったかのように歩いて来た。「こんばんは。あなたはあの時の代行業者の方ですよね?」内海唯花は思い出した。この見覚えのある男性は、結城理仁が酔っ払った時、運転代行で彼を連れて帰って来た運転手だった。七瀬「はい、そうです」若奥様は視力も記憶力もピカイチだ。「あなたもここに住んでいるんですか?」「ええ、でも私はただ借りているだけです。普段は配車サービスをしていて、たまに運転代行の仕事もしているんです」内海唯花は「そうなんですね」とひとこと言った。彼女はこの代行業者の男を覚えていたが、知り合いでもないし、たまたま会っただけなので軽く挨拶しただけで、特に気にはしなかった。結城理仁は七瀬をチラ

  • 交際0日婚のツンデレ御曹司に溺愛されています   第130話

    結城理仁は弁当箱を下げて出かけた。会社に行く途中、彼は車の中で妻が彼のために作ってくれた愛妻弁当を味わった。美味しそうに食べていて、とても満足そうだった。運転手と同乗していたボディーガードは少しおかしいと思っていた。若奥様が作った朝食はとてもシンプルなものなのに、若旦那様のようなグルメな人がこんなに味わって食べているのだから。恐らく、若奥様の料理の腕は相当高いのだろう。結城理仁が出かけてから、内海唯花はいつものように姉に電話をかけ、姉に何も問題ないことを確認してから彼女も出かけた。彼女が出かけた時間帯は、すでに通勤通学ラッシュで、道は混み始めていた。彼女が半分まで来たところでさらに渋滞が激しくなった。多くの出勤時間に焦っている人たちが、イライラしていた。そして神崎姫華も悪態をつこうとしていた。彼女は兄と義姉がイチャつきながら朝食を食べている隙をついて、こっそりと家から出てきていた。そして、彼女はこっそりと結城理仁にも朝食を弁当箱に詰めて用意していた。それは彼女が特別に家のシェフにお願いして作らせたものだった。そして、家の庭園から花を摘み取り大きな花束まで用意していた。花束を抱え、愛のこもった朝食をぶら下げ、神崎姫華は家を出ると、すぐに結城グループへと向かって行った。結城理仁が会社に到着する前にたどり着きたかったのだ。そして、いつもの方法で理仁の車を妨害し、彼のために心を込めて用意した愛を詰めた朝食を渡そうとしていたのだ。義姉からも結城理仁を諦めるように諭されたが、神崎姫華はこんな形で彼のことを諦めたくなかったのだ。彼女の言葉を借りて言えば、彼女が結城理仁のことを忘れられるものなら、もうとっくに忘れているのだ。忘れられないから、このような方法で試してみているわけだ。三年から五年追いかけてみないと、彼女はどうしても諦めきれない。この時、前方の渋滞がひどく、みるみる時間だけが過ぎていった。だから神崎姫華はこのように焦っているのだ。これ以上渋滞が続くと、彼女が結城グループに到着する頃には、結城理仁はすでに会社に着いているだろう。彼女はこんなところで渋滞しているところではないのだよ。ダメだ、こうやってただ待っているだけでは。神崎姫華はまずボディーガードに電話をかけ、彼女が路肩に車を止めるから、ボディーガードに家か

  • 交際0日婚のツンデレ御曹司に溺愛されています   第131話

    内海唯花は電動バイクだから、渋滞もなんのそのだ。たった十数分で結城グループに到着した。内海唯花はバイクを止めると、後ろを振り向いて神崎姫華に言った。「着きましたよ」神崎姫華はヘルメットを外して唯花に手渡し、彼女にお礼を言った。「大した事じゃないですから、お礼なんていりませんよ」神崎姫華は内海唯花を見ながら言った。「あなたのお名前を伺ってもいいかしら?なんだかあなたに見覚えある気がするんだけど、以前どこかでお会いしたことある?」「私は内海です。あなたには好感を持ってますけど、残念ですが、以前お会いしたことはないかと思いますよ」きれいな女性に出会えば、必ず覚えているはずだ。でも、この美人さんには全く印象がなかった。「内海さんて言うんだ。あ、思い出した。最近話題になった不孝者の孫娘の話、あの責められてた子も確か内海だったわね。その時、写真もあったけど、その写真に映ってた女の子にちょっと似ているわ。もしかしてあなたなの?」神崎姫華にとって、あの自分のゴシップ記事を押しのけた『不孝者の孫娘』の話題はとても印象に残っていたのだ。アップされた内海家のあの姉妹二人の写真も覚えていた。その時、彼女は自分への注目度を下げたあの話題にぶち切れしただけでなく。内海唯花姉妹へも悪態をついていた。しかし最後に真実が明るみになり、今度は内海家の人たちを罵ることになるとは。母親は彼女に、もう二十歳過ぎだというのに、物事をちゃんと見極めることもできないで、ただ物事の一面だけを見て簡単に内海姉妹をみんなと同じように貶すなんてと注意していた。彼女が家で内海姉妹を何度も批判しているので、母親は少し興味が出てあのトレンド記事を見たいと思ったのだ。しかし、状況が真逆になった後、内海家の人たちは怒ったネット民たちによって責め立てられると、耐えられずすぐにそれに関するツイートをネット上からきれいさっぱり消したのだ。どうやら内海家の人たちも少しはコネがあるようだ。そうだ、内海家の次男の息子は神崎グループ傘下の子会社の重役だ。内海家と姉妹の状況が逆転した後、怒りを爆発させた多くのネット民たちがネット上で内海家の親族を探し出し、内海智文がどのような人物なのかまで探り、神崎グループの公式サイトで本社に内海智文を解雇するように求めるメッセージまで送ったのだった。内

  • 交際0日婚のツンデレ御曹司に溺愛されています   第132話

    彼女は内海唯花とは貸し借りなしにしたいのだ。また唯花とは、まるで昔からの知り合いのように感じでいた。だから、神崎お嬢様は内海唯花に名刺まで渡したのだ。内海唯花もあの高級車の列が見えて、状況を理解して言った。「神崎さん、頑張って。成功するといいですね」「ありがとう」神崎姫華は花束を抱え、弁当箱を下げてあの高級車の列の方にではなく、会社のゲートまで行き、その真ん中に立った。内海唯花はそれを見て驚きあっけにとられてしまった。神崎家のお嬢様は本当に勇猛果敢だなあ。さて、結城理仁は今朝早くに家を出た。彼は別荘に必要なものを取りに帰って出てきた後、しばらく車を走らせ、また渋滞に引っかかってしまった。渋滞に巻き込まれたら、どんな車を運転していても、どんな地位の人間だとしても、誰もが無力だ。それで結城理仁は、この時ようやく会社に到着したのだ。助手席に座っていたのはちょうどあのボディーガード、七瀬だった。彼の視力はとても良いので、内海唯花を見つけて理仁のほうを向いて言った。「理仁様、奥様と神崎のお嬢さんが一緒にいますよ」それを聞いて、結城理仁は眉間にしわを寄せた。彼女たち二人がどうして一緒にいるんだ?全くつながりのない二人だろう。彼は前方を見た。彼は神崎姫華を認識することはできなかったが、内海唯花のことはすぐに分かった。なんと言っても、彼らはひとつ屋根の下でしばらくの間一緒に生活したし、キスまでした仲なのだ。もし、それでも彼女を見分けられないのであれば、彼の目は節穴と同然だ。「彼女たちのことは無視しろ」結城理仁は冷たくそう言い放つと、座席に寄りかかった。そしてだんだん彼女たちのほうへと近づいていった。七瀬は内海唯花に気づかれないように、わざと顔を背けて反対のほうを向いて唯花から顔を見られないようにした。車の列は内海唯花の前では止まらなかった。唯花は結城御曹司の派手な登場シーンを見ながら、心の中で感嘆した。あのロールスロイスを彼女は見覚えがあった。彼女のマンションで何度も見かけたあの車に似ていた。結城社長の身分を考えると、内海唯花はその車がマンションで見かけるあの車ではないとそのまま否定した。彼女は結城御曹司の車の列が神崎姫華の死を恐れず車を無理やり止めるという手段と対峙し、最終的に車を止めるところを見て笑

  • 交際0日婚のツンデレ御曹司に溺愛されています   第133話

    神崎姫華が会社のゲート前で道を塞いでいるので、運転手は車を停止させるしかなかった。「理仁様、車を降りて神崎さんをどかしましょうか?」運転手が結城理仁のほうを向いて彼の指示を仰いだ。結城理仁は少し黙った後、車の窓のボタンを押した。神崎姫華は彼が窓を開けたのを見て、嬉々としてすぐに浮かれた様子で花束を抱え、弁当箱を持ってやってきた。「理仁」この時、神崎姫華はようやく寝ても覚めても想っている男性に会えた。彼女はいつもここまで来て、結城理仁に告白しているわけではなく、実際、彼女はもう長い間、理仁とは会っていなかったのだ。彼女は会いたくて会いたくてたまらなかったのだ!そして彼は、やはりいつものクールな様子で、彼女の中で世界一カッコイイ男性だった。結城理仁のあの固く閉じた薄い唇に視線を向け、神崎姫華は近寄ってキスをしたいと思った。彼の唇は柔らかいのかな?神崎姫華は獲物を狙う獣のように結城理仁を見つめていて、彼は顔をしかめた。「神崎さん」「理仁、私のことは姫華って呼んで」神崎姫華はキラキラした笑顔を作り、まず弁当箱を車の窓から中へと押し込み「今日は特別にあなたに朝食を届けに来たの。冷めないうちに食べて。それから、この花束はあなたにあげる」と言った。結城理仁はその弁当を受け取らなかった。もちろん花束はいうまでもないだろう。彼は男だから、花束なんて好きではないのだ。「あんなにひどい渋滞だったのに、おまえはどうやってこんなに早くここまで来たんだ?」結城理仁は神崎姫華と内海唯花が一体どうやって知り合ったのか知りたかったのだ。結城理仁に聞かれて、神崎姫華は包み隠さず微笑んで言った。「私って頭良いのよ。車をそこらへんのお店の前に止めて、うちのボディーガードにその車を運転して帰るように伝えたの。それから、一台の電動バイクを止めて、ここまで何の障害もなくスムーズに辿り着くことができたわけよ」なるほどな。それでこの二人が知り合ったというわけか。「理仁、聞いてよ、本当に不思議なのよ。私がそうやって呼び止めた人が、なんとあの最近ネットで超話題になってた人物だったの。あの『不孝者の孫娘』の張本人よ。内海さんって言うんだけど、彼女すっごく良い人で、私と彼女はまるで昔からの知り合いだったみたいに意気投合したの」結城理仁は

Bab terbaru

  • 交際0日婚のツンデレ御曹司に溺愛されています   第206話

    今すでに結婚してから一か月過ぎていて、あと五か月の期間がある。それを過ぎれば夫婦は独身に戻ることができるのだ。離婚した後、それぞれ結婚したい人と結婚して、もう赤の他人になる。九条悟と東隼翔は顔を見合わせた。東隼翔は言った。「お前ら結城家の男子は離婚しちゃいけないんじゃなかったか?」「俺だけ例外だ」結城理仁は低く冷たい声で言った。「俺と内海さんとの結婚はどういう経緯なのか二人も知っているだろう。俺が離婚したとしても、ばあちゃんも何も言えないさ。それ以外の人間なんてさらに俺に何か言う資格はない。俺の本当のことを知れば可哀そうだと思うだろ」そうだ。彼は本当に辛いのだ。祖母の恩返しのために、彼が全く知らない内海唯花という女性を妻とし、結婚した後は彼女に気前よく、寛大に接していたというのに、一方の彼女はどうだ?姉の家に行くと嘘をつき、結局金城琉生と一緒に食事していたじゃないか。自分がヤキモチを焼いているのを断固として認めない結城坊ちゃんは、自動的に牧野明凛の存在を消し去っていた。それに牧野明凛と金城琉生がいとこ同士で仲が良いという事実も無視していた。九条悟、東隼翔「……」「今後は彼女を社長夫人と呼ぶなよ、あいつにそんな資格なんかないからな!」結城理仁は低く冷ややかな声でそう言った。端正な顔も氷のように冷たく厳しくなった。九条悟は彼に言った。「二日前は奥さんからもらった服を来て会社に来て、一日中自慢していたじゃないか。今日になって態度がガラッと変わるなんて、君たちもしかして喧嘩したのか?」結城理仁は九条悟を睨みつけた。「あまり調子に乗って余計なことを言わないほうが身のためだぞ」九条悟にこのように言われて、彼は少し恥ずかしさで怒りが込み上げてきた。彼があのスーツを着たことに関して、生まれてはじめてあのような安物を身に着けたのは、彼女が買ってくれたものだし、二人はまだある程度の期間パートナーとして一緒に過ごしていくからだ。彼女の顔を立てて、彼女からプレゼントされた服を着たまで。その結果はどうだ?丸一日中、彼女は彼がその服を着ていることに気づかなかったじゃないか。彼は彼女が自分で贈った服がどんなものだったか覚えていないのではないかと、ものすごく疑っていた。「彼女と喧嘩なんかしている暇すらないさ!行こう、俺の経営するホ

  • 交際0日婚のツンデレ御曹司に溺愛されています   第205話

    内海唯花はそれにうんと返事した。「ただちょっとこのことを頭の隅に置いといてもらいたくて。仕事に関しては、あまり焦らないで」牧野明凛も言った。「ゆっくり探してください。なかなか自分に合った仕事が見つからなかったら、私と唯花の店を手伝ってください。私がお給料を出しますから。それか、唯月さんも自分のお店を出しませんか?」佐々木唯月は息子が遊んでいるのを見て、どうしようもないといった様子で言った。「私にはそんな資金はないもの。それに、どんな店を開いたらいいのかもわからないし。実店舗経営はやっぱり難しいでしょうし」妹の本屋は星城高校の目の前に開いているから、生徒たちが来ることも多く、まあまあ儲かっている。もしも他の場所で商売をすれば、うまくいくかはわからない。星城高校付近にある店はどれも家賃がとても高い。しかも、誰でもそこで店を借りられるというわけではない。やはりコネがなければ難しいのだ。内海唯花のあの店は牧野明凛の家族が表に出て話をつけてくれたおかげでやっと借りることができたのだ。「お姉ちゃん、だったら、ビーズ細工の作り方を教えるから、ネットでお店を開いたらいいじゃない。そうすれば家でお金も稼げるし、陽ちゃんの面倒を見ることもできるでしょ。私のネットショップは今売れ行きが良くて、ほとんどの商品は予約しないと買えないくらいよ。予約がたくさん入ってるから、私は毎日作るのに忙しいの」今月彼女がネットショップで稼いだお金は本屋での自分の稼ぎ分をはるかに上回っていた。高校生の試験が近いため本屋で売れた参考書の数も多かったのだが、それにしても彼女のネットショップの売り上げのほうが多かった。内海唯花は人生において金運が今まさにやってきたのだと思った。ネットショップも商売を始めてから数年経っている。売り上げはずっと良くも悪くもなく平坦なものだったが、なぜか今月は爆発的人気が出て、評価も五つ星ばかりだ。「ネットショップをもっと大きくしたいと思ってて、ハンドメイドの置物だけじゃなくて、ヘアアクセサリー作りも勉強したいの。ちょっとレトロな雰囲気のが好きだから」牧野明凛は親友の話には大賛成だった。親友のこの考えはとても良いと思ったのだ。佐々木唯月は苦笑いして言った。「唯花、お姉ちゃんにはそんな創作センスはないわ。あなたのハンドメイドで使う材料を見ただけで

  • 交際0日婚のツンデレ御曹司に溺愛されています   第204話

    「私はまだ気がかりがあるのよ。俊介は今莉奈さんの言うことをなんでも聞いてるでしょう。あのお嬢さん、頭が良いわ、ずっと俊介とは関係を持とうとはしないもの。彼女がなかなか手に入らないと、もっと求めるようになるものだわ。彼女は俊介をもっともっと自分に溺れさせようとしているのよ。二人が結婚することになって、俊介の給料を彼女が管理するようになったら、私たちの生活は厳しくなるわよ」佐々木英子は毎月弟が両親に結構な生活費をあげていることを思い出した。両親はそのお金で彼女の家を支えてくれているわけだから、彼女が得ている利益も少なくはない。だから、新しい弟の嫁にこの美味い汁を取られてしまうわけにはいかず、こう言うしかなかった。「いいわ、これは俊介と唯月二人のことだもの。彼ら夫婦に任せましょ。俊介がずっと唯月に不倫を隠して気づかれない限り、私も彼のことには関わりたくないわ。男は一度成功してお金を持ってしまえば、外でやりたいようにやるもんだし」佐々木母は息子が父親になっても、外で若くてきれいな女の子を捕まえられるくらい、よくできた男だと思っていた。どのみち彼女の子供は男だから、何があっても損することはないだろうという昔の男尊女卑的考えを持っている。佐々木唯月は義母と義姉が彼女の悪口を言っていることは知っていたが、この母娘が俊介の不倫を隠しているとは知らなった。人の気分を害するこの母と娘が去った後、唯月は妹と明凛に言った。「唯花、明凛ちゃん、あなた達またどうしてこんなにたくさん買ってきたのよ」「唯月姉さん、ただのフルーツとお菓子だから、別に高いものじゃないですよ」牧野明凛は笑って言った。「お姉さんと陽ちゃんが家にいるって思って、二人に食べてもらいたくて買ってきたんです。今はおうちに二人だけで、誰にも取られることはないから、たくさん買ったんですよ。食べきれなかったら、冷蔵庫に入れてゆっくり食べてください」彼女は佐々木英子が家を出る前にこの買って来た買い物袋をちらりと見ていたのを気にしてこう言ったのだ。この間、内海唯花夫婦が姉に持って来た物は、佐々木俊介が両親と姉にあげてしまい、唯月はあまりの怒りで失神しそうなくらいだった。内海唯花は甥にご飯を食べさせると、新しいおもちゃを取って彼に渡した。甥は傍で遊ばせておいて、姉に言った。「お姉ちゃん、佐々木

  • 交際0日婚のツンデレ御曹司に溺愛されています   第203話

    佐々木唯月にこのように言われて、佐々木母は何か言おうとしたが、言葉が出てこなかった。なんと言っても、息子と嫁の割り勘制を提案したのは彼女だ。割り勘にしていなかったとしても、息子の金は嫁が管理することはないと知っていた。「お母さん、もう行こう」佐々木英子は唯月の態度が気に入らず、これ以上は母親に話をさせたくなかったので、母親を引っ張って行った。出て行く前に、内海唯花と牧野明凛が持ってきた荷物をちらりと見た。下に降りて、佐々木英子は母親に言った。「お母さん、内海唯花のスピード結婚相手の旦那さんって大企業で働いてるでしょ、給料ってすごく高いんじゃない?あの子、結婚してからいっつもあんなにたくさん買ってくるでしょう。さっきちょっと見たけど、買って来たあのフルーツってどれも高いやつだったわよ。メロンとかイチゴとかよ。ああいうのって高いじゃん。メロンだって一つ三千円くらいするでしょ。イチゴだって一パック安くても五百円はするし」佐々木母は言った。「あなたの弟の収入を考えてみて。唯花の旦那さんは結城グループで働いているのよ。俊介があの会社は東京でも一、二を争う大企業だって言ってたでしょ。そんな会社に入れる人はエリート中のエリートよ。俊介の能力でも結城グループに入って働くのは難しいって言ってたわ。唯花の旦那さんの能力が高いってのは明らかよ。収入も俊介よりもかなり多いに決まってる。彼女は昔から姉によくしてたから、今俊介が唯月にお金をあげないのを知って、姉にお金を渡して助けているのでしょうね。今は彼女とあの結城さんって人は新婚よ。新婚の時は相手は必ず彼女のためにお金を使うでしょう。だけど、彼女がいっつも姉を助けるためにお金を渡していたら、彼だっていつかは不満が出てくるはずよ。どこの誰が自分の妻がいつも実家のほうにお金を渡すのを喜ぶ?」佐々木母はあくどく誹謗した。「そのうちわかることよ。内海唯花はすぐに夫から捨てられるわ。あんなごくつぶしの女たちなんか誰が欲しがるのよ。帰ったら俊介に言うのよ、絶対に唯月にお金を渡しちゃだめだって。唯月にはずっと妹に金を恵んでもらって、唯花の旦那の機嫌を損ねさせるのよ。それでも偉そうにしていられるかしらねぇ?彼女のあの店だって、共同経営者がいるだろう、いくら稼げると思う?唯月のあの気丈な態度は唯花が助けてくれるって思っ

  • 交際0日婚のツンデレ御曹司に溺愛されています   第202話

    内海唯花は買い物袋をテーブルの上に置き、佐々木陽を抱き上げて優しく尋ねた。「陽ちゃん、お粥食べてるの?」佐々木陽は頷き「うん、たべてる」と返事した。「じゃあ、お腹いっぱいになった?」佐々木陽は自分の小さなお腹をさすり、少し考えてから首を横に振った。彼はまだご飯を食べてなくて、ちょっとお腹が空いていると思った。内海唯花は笑ってソファの前に座り、姉の手から半分残ったお粥を受け取った。「おばちゃんが食べさせてあげようか?」「いいよ」牧野明凛は佐々木唯月に挨拶をし、同じように荷物をテーブルの上に置いた。佐々木家の母娘に対しては、少し会釈をしただけで、それを挨拶代わりにした。佐々木唯月は妹が代わりに息子に食事をさせてくれているので、義母と義姉のほうを向いて言った。「私は俊介を迎えにいったりしないわ。彼が帰って来たいなら、帰って来ればいい。帰りたくないっていうなら、悪いけどお二人に彼の世話は任せるわ」彼は生活費でさえも彼女に返すよう要求してきた。夫婦がもうこんなに冷めた関係になったら、後は他に何が言えるというのだ?佐々木唯月は自分も間違っていたとわかっていた。それは佐々木俊介をあまりに信用しすぎたことだ。佐々木英子はまだ何か言いたそうだったが、それを母親に止められてしまった。佐々木母は無理やり笑顔を作って言った。「わかったわ。帰って俊介に帰るように伝えるから。唯月さん、俊介が戻って来たら、あなた達はもう喧嘩したり手を出したりしないでちょうだいね。俊介は外ではちゃんとした仕事があるんだから、面子がとても重要なのよ。あなたが彼をあんな顔にしちゃったら、誰かに会ったりできないから、仕事にも行けなくて収入も減るでしょうが。損をするのはあなたたち一家なのよ」佐々木唯月は冷たく笑った。「彼は以前一か月に六万円の生活費しかくれなかった。それ以上は少しでも拒んでたし。今割り勘制にして、彼は三万円しかくれてないから、それで陽を養っているだけよ。彼の給料がいくらなのかなんて、今の私には関係のない話ね」彼女も以前、仕事をしていなかったわけではない。結婚前は彼女と佐々木俊介は同じ会社にいた。佐々木俊介が今就いている役職は、一か月に数十万円の給料がある。しかも副収入もあるから、それよりもずっと多く稼いでいるのだ。少なくても一か月に百五十万前

  • 交際0日婚のツンデレ御曹司に溺愛されています   第201話

    佐々木陽はパパが恋しいとも恋しくないとも言わず、ただ「パパおしごと」と言った。彼は母親と叔母が世話をしている。普段、彼が朝起きると父親は仕事で家にはおらず、夜寝てから帰って来る。だから、父親という生き物は週末にやっと会える程度なのだ。佐々木陽の父親への感情はまったく深くない。父親が家にいたとしても、息子と一緒に遊ぶことはなく、ただ携帯をいじっているだけだった。「唯月さん、見てごらんなさい。陽ちゃんは数日パパに会ってないから、こんなに冷たい態度になっちゃってるわ。このままじゃ、子供の成長に悪影響しかないわ。男の子は成長過程で父親からの愛がなくちゃいけないのよ。多くのことはパパから教えてもらわなくちゃいけないんだから」佐々木母は本来、孫が父親が恋しいと返事すると思っていた。そして彼女はそれを利用して嫁に息子のためにプライドを捨てさせようとしたのだ。だが、まさか孫が想像したような返事をしないとは。しかし、幸いなことに彼女の頭は冴えていて、孫のその対応にも上手に唯月を言いくるめようとした。佐々木唯月は義母を見て、冷ややかな口調で言った。「佐々木俊介が家にいたとして、あなた達は彼が息子の世話をするのを見たことある?陽は私と彼の子だけど、ずっと私一人で面倒を見て来たのよ。子供の世話をしないのはまだいいとして、一緒に遊ぶこともしないのよ。週末家にいて暇でも、携帯を持ってずっと誰かとしゃべったり、動画を見たりしてバカみたいに笑って息子とはまったく遊ばないわ。こんな父親、この子が彼に対して情が深くなるとでも言うの?」親子の情というものは培っていかなければならない。血の繋がった父子だとしても、コミュニケーションを取って関係を築き上げていかなければ、うまくいくはずはないのだ。佐々木母は口を開いたが、何も言葉が出なかった。やはり佐々木英子がその言葉に続けて言った。「俊介は普段、仕事がとても忙しいでしょう。週末家にいる時だってリラックスして休みたいのよ。あんたは仕事もせず、ずっと家で子供の世話をしてさ。家事が多いなんて言わないでよね、前は妹がここにいてほとんどの家事は妹がやっててあんたは何もしてなかったじゃない。あんたの専門は食べることで、見てごらん、今のこの醜態をさ」彼女の弟だけが佐々木唯月が太って醜くなったのを嫌っているのではなく、佐々木英

  • 交際0日婚のツンデレ御曹司に溺愛されています   第200話

    内海唯花と牧野明凛は佐々木唯月の住むマンションに到着した。唯花が車から降りると、見慣れた車が目に飛び込んできた。そして、彼女の顔に緊張が走った。「どうしたの?」「あれは佐々木俊介の姉の車よ。またお姉ちゃんのところに押しかけてきたらしいわ。あの人は紛れもなくクズ中のクズよ。うちのあの親戚たちといい勝負なの」牧野明凛はそれを聞いて慌てて言った。「早く上に行きましょう。もしその人が唯月さんをいじめてたら、うちらで追い出してやるわよ」内海唯花はすでに荷物を持って歩き出していた。牧野明凛は急いでその後を追った。佐々木家の人たちがまたやって来た。来たのはやはり佐々木英子たち母娘だった。彼女たちは佐々木俊介を迎えに唯月を佐々木家に行かせたいのだ。佐々木俊介は実家に帰っている。しかし、両親は姉の家に孫たちの世話に行っているので、ご飯は姉の家に行って食べていた。ちょうど両親の家から姉の家まで近い。同じコミュニティ内で、マンションは向かい側にある。毎日両親が弟に美味しい物をたくさん買って食べさせていた。もちろん彼女一家もそれを一緒に食べることはできるが、心の中ではやはり両親のその様子が不愉快だった。両親は弟に対してひいきしていると思っているのだ。弟が帰ってきたとたんに、高い物をたくさん買ってくるから。佐々木英子は確かに最低な人間であるが、幸いにも身の程はわきまえていて、その不愉快だと思っている心のうちを見せることはなかった。両親のサポートを長い事受けていた佐々木英子は両親からの恩恵を独占することに慣れきってしまっているのだ。弟が家に数日泊まっていて、彼女が一番積極的に弟夫婦の仲直りをさせようとしているのは、この弟を自分の生活圏から早く追い出したいからだ。「唯月さん、夫婦が一生一緒にいるからには口喧嘩や手が出ることだって避けられないことよ。一生全く喧嘩をしない夫婦なんてごく稀よ。すれ違いで喧嘩して、冷戦も数日続いたんだし、もう十分でしょう。これからも一緒にやっていかないといけないんだし、そうでしょう?俊介も男だから、プライドも高いけど実際はちょっと後悔しているのよ。あの日はあの子が先に手を出したんだから、あの子が悪かったの。私たちもわけを聞かずに彼に合わせて喧嘩しちゃって、間違えてたわ。彼の面子も考えて、迎えに行ってやってち

  • 交際0日婚のツンデレ御曹司に溺愛されています   第199話

    牧野明凛は意外そうに尋ねた。「本当に?フラワーガーデンが高級マンションってのは間違ってないけど、まさかロールスロイスを運転してる人までいるとはね。なんでその人って一戸建ての大きい家に住まないんだろ?」「結城さんが、近くの学校に通ってる子供がいるから、通学に便利なようにフラワーガーデンの部屋を買って住んでるんじゃないかって言ってた。もしかしたら、その人いくつも家を持ってるかもよ?」牧野明凛は笑った。「それもそうだね。さあ、スーパーに行こう。あ、そうだ、結城おばあさんが来るって言ってたよね?」「来ないって」「なんで?」「家の持ち主が同意しなかったんでしょうね」牧野明凛「……」親友の家の持ち主と言えば結城理仁じゃないのか?彼は結城おばあさんの孫だろう。おばあさんが週末来たいというのに、孫がそれを拒否するなんて……祖母不孝者め!二人は牧野明凛の車に乗り込むと、カフェ・ルナカルドを後にした。少し車を走らせて、大きなショッピングモールに車をとめた。モール内をぶらぶらして、二人は両手にたくさんの買い物袋をぶら下げて出て来た。この時、内海唯花は以前、結城理仁と一緒にモールを回ったのを懐かしく思っていた。彼がいれば、彼女がどれだけ買っても、代わりに持ってくれた。牧野明凛は荷物を車に載せた後、ぜえぜえ息を切らして言った。「ショッピングする時は、男性がいればいいのにって思っちゃうわね。買い物してる時は、あれもこれもってなるけど、いざ荷物を持つとなると、まったく、重くて死んじゃう。なんであんなに買っちゃったんだろうって後悔しかないわ」内海唯花はそれを聞いて思わず笑った。さすが、彼女と牧野明凛が親友になるはずだ。二人の考え方はまったく同じだった。これって、彼女がさっき考えていた結城理仁と一緒にスーパーを回った時の良いところを、親友が口に出したんじゃないか。「だったら、早く彼氏を見つけることね。これから先ショッピングする時は楽ちんでしょ」牧野明凛は運転席に座り、シートベルトを締めながら言った。「見つけたいと思ってすぐ見つかると思うの?自分に合った人を見つけないといけないし、いいなって思うような人じゃないといけないじゃない。そんなに簡単に見つかるんなら、私だってずっと独り身でいないわよ。家族から結婚の催促ばかりされて家に帰りたく

  • 交際0日婚のツンデレ御曹司に溺愛されています   第198話

    九条悟も少し呆気に取られていた。この上司は彼の前で何度も妻がいることを自慢していたが、あれは全部演技だったというのか?だけど、結城おばあさんはすでに会社のことは全て孫に任せていて、会社に来ることは稀だ。だから、結城理仁は彼の前でそんな演技をしてみせる必要はないはずだ。ボケちゃったのか?まあいい、それは結城理仁のプライベートな事だ。彼は自分でどうにかできるだろう。彼ら親友たちは何か面白いことがあれば、椅子とポップコーンでも持って来て、かたわらでそれを食べながら座って見ていればいいのだ。何も面白いことがないなら、家に帰って寝るまでだ。二時間後のこと。内海唯花は時間を確認し、もう三時になったので親友に言った。「明凛、そろそろ帰ろっか。お姉ちゃんのとこにも行かないといけないから」「わかったわ」牧野明凛も時間を見て、親友が帰るというのに何も意見はなかった。「後でちょっとスーパーに行こう。フルーツとおもちゃ二つ買って私もお姉さんの家に一緒に行く。家に帰りたくないのよ。母さんのあの意地悪な継母みたいな顔といったら、帰る気なくすわよ」内海唯花は笑って言った。「大塚家のパーティーで誰かさんが床に寝ちゃったせいでしょ?あなた自身も恥かいたのに、牧野のおばさんの面子も潰しちゃって。お母様が怒って当然よ」牧野明凛は自分がやらかした事を思い出し笑って言った。「恥くらいかけばいいのよ。母さんとおばさんに私は大和撫子で優秀な女性だからお妃様にでもなれるっていう妄想を消し去ってもらいましょう。今やあの人たちも大人しくなって、私も静かに過ごせるってもんよ。「あれ、ねえ唯花、あのテーブルに座ってる三人組、あの人あんたんとこの結城さんじゃないの?」牧野明凛が立ち上がって結城理仁を見て親友の手をポンポンと叩き内海唯花に確認させようとした。内海唯花は親友に促されて見てみると、本当に彼女の夫がそこにいた。「彼だわ」結城理仁が全身から漂わせるあの冷たく厳しい雰囲気を持っている人間は滅多にお目にかかれない。内海唯花は一目ですぐ彼だとわかった。「ちょっと挨拶しに行かなくていい?」内海唯花はためらって言った。「彼は友達と一緒みたいだし、彼らとは知り合いじゃないわ。声かけるのもあまり良くないんじゃないかな」実際、結城理仁の友人とは一人も会っ

Pindai kode untuk membaca di Aplikasi
DMCA.com Protection Status