美少女との即日婚、冷酷な彼氏からの溺愛 のすべてのチャプター: チャプター 151 - チャプター 160

200 チャプター

第151話

黒崎拓也の父親が黒崎グループを引き継いだ後、その状況は助手によって氷川颯真に報告された。氷川颯真はパソコン画面上の黒崎グループの株式を見つめ、がっかりしたように口を鳴らした。予想していたほどではなかったが、まあ大体予想通りだった。「今月のボーナスは守られたな」助手はほっと一息ついた。橋本美咲もようやく自分の書類の海から抜け出した。ご機嫌な氷川颯真を少し不思議そうにじっと見て、思わず尋ねた。「颯真、何か良いことでもあったの?とても機嫌が良さそうだね」氷川颯真は橋本美咲の頭を撫でながら答えた。「奥さん、もし黒崎グループの半分近くの株式を君に贈るとしたら、どう思う?」橋本美咲は呆然とした。美咲はその意味を知っていた。氷川颯真がその言葉を口にした時点で、既に彼が黒崎グループの大半の株式を握っていることを。彼女は思わず少し驚いた。「颯真、どうやってできたの?」氷川颯真は首を振った。「大したことない。アイツが僕に敵対しようと思った時点で、既に結果は決まっていた」氷川颯真のその態度に、橋本美咲は心から尊敬の念を抱いた。目をキラキラさせて颯真を見上げた。「颯真、本当にすごいわね。そんな短期間で黒崎グループの半分近くの株式を手に入れるなんて」「奥さん、まだ答えていないぞ」氷川颯真は橋本美咲の頭を軽く叩き、不満そうに言った。橋本美咲は自分の頭を押さえながら、悪戯っぽく舌を出した。氷川颯真の質問を暫く考えた後、断固として答えた。「黒崎グループの株式なんていらないよ。颯真が持っていて」氷川颯真は橋本美咲を驚いたように見つめた。「黒崎グループの株式だよ。美咲に渡したら、きっと黒崎拓也の顔色がすごく悪くなると思うが」しかし橋本美咲はそれでも首を横に振った。「もう黒崎拓也には何の感情もないわ。彼の家の株式なんていらない。むしろ汚いと思うわ。だから颯真が持っていて」橋本美咲の答えを聞いて、氷川颯真は心から喜んだ。橋本美咲たちの間の雰囲気はとても良かったが、黒崎グループの方はそうではなかった。陰鬱な雰囲気が漂っていた。黒崎拓也の父親は怒り狂った表情で部下たちを見つめた。「一体どうなっているんだ、なぜ拓也が突然いなくなったんだ?!」部下たちは自社の会長を恐る恐る見つめ、報告した。「私たちも社長がどこに行ったのか分かりません
続きを読む

第152話

何かを思いついたようだったが、次の瞬間、黒崎拓也は心のなかでその考えを否定した。この考えはありえない、橋本月影であるはずがなかった。しかし、家には橋本月影以外に誰もいなかった…とにかく、何とかして外に出ないと。黒崎拓也は周囲を見渡したが、環境が暗く、何も見えなかった。彼は声を出して人を呼ぼうとした。しかし、15分間も叫び続けたが、誰からも返事がなかった。黒崎拓也は悟った。それは、彼の周りに誰もいないから叫んでも無駄だったか。あるいは、防音効果のすごく高い部屋にいるかのどちらかだった。正直、黒崎拓也はなかなか頭がよかった。彼はもう、事実の真相にかなり近づいていた。ただ残念なことに、彼の予想はどちらも的中していた。周りには誰もおらず、しかも彼がいる地下室は、建材が良すぎて完全に音が遮断されていたのだ!黒崎拓也は諦めず、さらに10分間叫び続けた。しかし、最後には、諦めて、口を閉じて体力を節約することに決めた。黒崎の心は焦っていた。今、黒崎グループは大変な事態に見舞われていて、長く離れてはいられなかった。放っておけば大問題になるが、しかし自分はこんなところに閉じ込められている!ちくしょう…その頃、氷川颯真と橋本美咲はシェフが作った夕食を楽しんでいた。突然、助手から一通のメッセージが届いた。黒崎グループから、黒崎拓也を探し出すために、全市の監視カメラを調べる申請が出したという内容だった。社長、お考えは?氷川颯真はテーブルを指で軽く叩くと、助手に返信した。探させてやろう。氷川颯真の許可が下りたことで、黒崎グループの捜索は非常に迅速に進んだ。まもなくある監視映像に行き着いた。それは黒崎拓也が、自分の車を運転して高速道路を走っていた映像だった。それは彼の帰宅ルートだった。他のカメラ映像もその事実を確認できた。その映像を見て、黒崎拓也の父は頭が混乱した。あの小僧は家に帰っていた?!それなら、なぜ会社に戻って来なかった?!彼はまず警察に感謝の意を示した。その後、怒りに駆られて黒崎拓也の別荘に駆けつけたが、中には誰もいなかった。その時、黒崎拓也の父は何かがおかしいと感じた。黒崎拓也は家にいないが、車は外にあって、動かされていなかった。つまり、彼はまだ家の中にいるはずだった。家の中の部屋をほとんど探し尽
続きを読む

第153話

「会社は今のところ無事だ。儂が間に合ったおかげで、大株主が持ち株をさらに売却するのを阻止した。つまり、今も儂らが会社の主導権を握っているということだ」彼は少し間をおいてから尋ねた。「一体どういうことか、早く教えてくれ」会社が無事だと聞いて、黒崎拓也はほっとした。その時になって初めて、自分の体の痛みに気づいた。黒崎は2、3時間縛られていた手足と、鈍く痛む後頭部を揉みながら、頭を振った。「わからない。月影ちゃんが急に家に帰ってほしいと言ったから。しかし、家に着いた途端に目の前が真っ暗になって、後頭部が痛んで、気を失った。目が覚めたらここにいたんだ」その話を聞いた黒崎会長は眉をひそめた。「自分の体に、何か欠けているものがないか確認しろ」黒崎会長は別荘を見回した。中の物は整然と置かれていて、荒らされた形跡はなかった。これは押し込み強盗ではなさそうだ。一方、黒崎拓也は自分の体を調べ、何も失われていないことを確認した後、携帯を開いた。すると、助手からの十数件の電話と一通のメッセージが目に入った。黒崎はそのメッセージを開いてみると、引き落とし通知だった。正確に言うと、橋本月影の会社の口座への送金だった。黒崎拓也は黙って、携帯を父親に渡した。「父さん、別荘に来る前に、俺は橋本月影に、この金を振り込んでいないわ」彼の心の中の疑いが確信に変わった。黒崎会長はこれまで長い間ビジネスをしてきたので、当然ながら、人を見る目はあるのだった。息子の言葉を聞いて、すぐに理解した。彼は目を細めた。「行くぞ。橋本月影の会社に行って彼女を探そう」氷川颯真がこの知らせを知ったのは翌朝だった。颯真は助手からの報告を聞いて驚いた。事の成り行きを把握すると、颯真は奇妙な表情で電話を切り、橋本美咲を呼んだ。「奥さん、良い知らせがあるんだが、聞きたいか?」橋本美咲は茫然とした顔で聞いた。「どんな良い知らせなの?」「橋本月影が黒崎グループの親子に精神病院に入れられたんだ!」「何?!」橋本美咲は驚愕した。どういうこと?黒崎拓也は橋本月影のことが好きではなかったの?氷川颯真は、助手から得た情報を橋本美咲に伝えただけだった。「僕の知る限りでは、あの黒崎会長と黒崎拓也の二人が、怒り狂って橋本月影の会社に押し入って、激しい争いを繰り広げ
続きを読む

第154話

正確な病院名を確認した後、橋本美咲は車を飛ばしてその精神病院へ向かった。精神病院に到着すると、目に入ったのは病院のロビーだった。看護師が一人、受付に座りながら暇そうに自分のネイルを眺めていた。誰かが入ってきたのを見て、少し姿勢を正したが、特に何も言わなかった。橋本美咲は前に進み、彼女に尋ねた。「すみません、橋本月影さんはどの病室にいますか?」看護師は微笑みを浮かべた。「お嬢さん、もし橋本月影さんにお見舞いしに行くのなら、やめた方がいいですよ。彼女は旦那さんに連れられてきたんですけど、かなりの攻撃性が持ってるんです」橋本美咲は、自分の名誉にかけて、以前の橋本月影が精神病患者ではなかったと断言できる。しかし、なぜ月影が精神病院に送られてきたの?橋本美咲は少し考えた後、やはり看護師に近づいて言った。「それでも彼女をお見舞いしたいです。私は姉の、橋本美咲です。これが身分証明書です」美咲は自分の身分証明書を見せた。受付の女性は橋本美咲の身分証明書を受け取り、情報が正しいことを確認すると、これ以上美咲を止めることはなかった。ただ記録を取って、橋本月影が入院している病室の位置を告げた。橋本美咲は看護師の指示に従い、橋本月影の病室に向かった。美咲は中に入ることができず、ただ窓の外から橋本月影を見ていた。理由はスタッフによる制止だった。彼らの説明によれば、橋本月影には凄く強い攻撃性があり、美咲の安全のために、病室への立ち入りを禁止した。橋本美咲は仕方なく、窓越しに橋本月影を見つめた。最初、橋本月影は橋本美咲に気づかず、手に持ったユリの花を弄っていた。橋本美咲が窓をノックすると、橋本月影はぼんやりと顔を上げ、美咲に気づいた。月影は凶悪な表情を浮かべ、橋本美咲の方へ突進してきた。しかし、病室のガラスに阻まれた。橋本美咲は橋本月影に驚かされ、怖くて一歩後退した。目の前の凶暴な月影を見つめ、自分の記憶を疑い始めた。もしかして、橋本月影は本当に精神病患者なのか。そうでなければ、なぜこんな表情をするのだろう。病室の中の橋本月影は橋本美咲に向かって大声で罵った。「このアマ、私をこんな目に合わせて。私の会社を倒産させただけでなく、たっくんの会社まで巻き込んで。拓也、黒崎拓也もクソ野郎だ…」月影の残りの言葉が、橋本美咲には
続きを読む

第155話

その姿、橋本美咲は見覚えがありすぎた。だからこそ、今の彼女はただ胃がひっくり返るような感じで、少し吐き気を覚えた。美咲は眉をひそめて視線を自分の助手に移した。隣の助手は汗だくで立っていて、橋本美咲の視線に気づくとすぐに謝罪した。「申し訳ございません、美咲さん。この黒崎さんが無理やり入ってきて、どうすることもできませんでした」橋本美咲は少し無力感を覚えたが、助手を責めはしなかった。もし黒崎拓也が強引に入ってこようとしたら、助手にはどうしようもなかっただろう。放っておかれた黒崎拓也は不満げに咳払いをし、目の前の人の注意を引こうとした。橋本美咲は冷たく黒崎拓也に言った。「何の用があって来た?」その一言に、黒崎拓也はその場で動けなくなった。橋本美咲がこんな態度を取るとは思ってもみなかったので、面子が立たなかった。黒崎はしばらくその場に固まったが、ついに自分の来た目的を橋本美咲に伝えることにした。「橋本美咲、俺の会社のことなんだけど…」黒崎拓也の言葉を半分聞いただけで、橋本美咲は黒崎が何を言いたいのかすぐに分かった。しかし、何となく察しているからといって、そんな面倒なことに巻き込まれたくはなかった。そのため、黒崎の話を遮ることはなかった。黒崎拓也は続けた。「俺の会社のこと、お前が氷川社長に頼んだのだろう?」橋本美咲は可笑しくてたまらなくなった。何を言いに来たのかと思ったら、このことだったとは。そもそも、たとえ彼女が氷川颯真に頼んだとしても、だから何だというの?ビジネスの世界はまさに戦場であり、いつどこで攻撃されるかわからないものだわ。敵が攻撃してくるときに、「ごめんね、これから攻撃するから。準備しといてね」なんて言ってくると思ったか?冗談でしょ?!黒崎拓也、甘すぎるわよ!橋本美咲は冷笑を浮かべながら、その場に立っていた。何も言わなかった。逆に黒崎拓也は非常に居心地が悪くなった。彼は誰かに頭を下げることなどあっただろうか?特に目の前の人物、かつて彼と一緒にいた橋本美咲。彼の言うことを何でも聞き、何でも彼の言いなりになる橋本美咲。黒崎拓也はこんな経験をしたことがなかった。「もし黙っているなら、黙認と見なすからな」黒崎拓也は必死に言葉を続けた。橋本美咲は白目をむいた。「そもそも、あんたが言っ
続きを読む

第156話

橋本美咲の動きが止まった。彼女は黒崎拓也の方へ顔を向け、信じられないような目で彼を上から下まで見やった。なんてことだ!以前はこの男が、こんなに厚かましいとは気づかなかった。しかも、厚かましいだけでなく、身の程も弁えないとは。以前の自分は目が見えなかったのか、こんな男に惹かれたなんて!「あんたが間違っていないと言うのなら、その間違いを誰のせいにしたいの?「橋本月影?それとも…」黒崎拓也は橋本美咲の軽蔑の眼差しに全く気づかなかった。「確かに一部は橋本月影のせいだ。彼女が俺を誘惑しなければ、そんな過ちを犯すことはなかっただろう?」ましてや…彼は数日前の橋本月影の狂ったような行動を思い出すと、数日前から月影に対する嫌悪が爆発したように感じた。そんな狂った女、以前はなぜ優しくて純真だと思ったのだろう?そして、目の前のきちんとしている橋本美咲と、彼女が会社を見事に運営している能力を見ると、黒崎拓也は後悔の念を抱かずにはいられなかった。自分は以前、きっと彼女を誤解していた。目の前の橋本美咲は以前の陰鬱な姿とは全く違った。やはり自分が彼女をよく理解していなかったのだ。きっと橋本月影が自分の目を欺いていたに違いない。そうに決まっている!橋本美咲は黒崎拓也がこれを言い放った時の確信に満ちた表情と、自分に向ける段々柔らかくなる視線に、ぞっとした。美咲は全身に鳥肌が立つのを感じた。なんてことだ!黒崎拓也は本気でこんなことを考えているのか!まさにクズ男とビッチのコンビだわ!橋本美咲は呆れて無言になった。彼女は黒崎拓也と関わりたくなかった。ただ、この気持ち悪い男が、自分から遠ざかることを望んでいた。言い訳を見つけた黒崎拓也は、まるで自分を納得させたかのようだった。彼は橋本美咲が黙り込んだのを見て、何かいい策を見つけたかのように感じた。黒崎は一歩前に進み、橋本美咲に近づいて、情熱的に彼女を見つめた。「橋本美咲、俺が間違っていた。多分この件には解決策がないと思う。だから橋本月影を精神病院に送ったんだ。「もう怒らないで。もし可能なら、氷川さんに我々の黒崎グループを攻撃しないように頼んでくれないか?」黒崎拓也は、心の中で得意げに企みを練っていた。もし橋本美咲の許しを得られれば、氷川颯真もきっと黒崎グループをもう攻撃しないだろう。それに
続きを読む

第157話

黒崎拓也は信じられない様子で橋本美咲を見つめた。彼女は本当に助手に警備員を呼ばせたとは!「いや、ちょっと待て」黒崎は外に向かおうとする助手を止めた。助手はただの女の子なので、黒崎拓也のような身長180センチの大男に立ちはだかれ、しかも顔が険しく、怒りがこもったのを見て、恐れて立ち止まった。今、黒崎拓也はドアを塞いでいて、助手は出て行けなかった。彼女は唾を飲み込み、思わずこのまま駆け出してしまおうかと考えた。しかし、黒崎拓也が怒りで暴力を振るいそうな気配を感じ、一歩後退し、橋本美咲の前に立ちはだかった。警備員は後で呼べばいい。もしこの男が美咲さんを殴ろうとしたら大変だった。自分がここにいれば、美咲さんを守れるかもしれない。しかし、もし警備員を呼びに行っている間に、この男が暴れたら、美咲さんが怪我を…以前、氷川社長から橋本美咲をしっかり見守るように言われたことや、氷川颯真がくれた謝礼金を思い出すと、助手は決意を固めた。氷川社長に美咲さんを見守ると約束した以上、反故にはできないわ。橋本美咲は逆に自分の前に立つ助手の姿に少し驚いていた。美咲は氷川颯真が、助手に彼女を守るように、指示したことを知らなかった。ただ、この助手がとても忠実で、彼女に対して非常に親切だと感じていた。橋本美咲は心の中で、後で助手に昇給してあげようと考えながら、冷ややかな目で黒崎拓也を見つめた。「どういうつもりなの?もし黒崎グループのことなら、私に言う必要はないわ。この件は黒崎グループの株式を買い取った人と話すべきよ。「それと、さっき私に謝ったことについて、残念ながら、受け入れられないわ」橋本美咲は、以前、黒崎拓也が橋本月影と結婚したとき、自分に向けたあの冷たい目と、四年間の裏切りを思い出した。橋本美咲の心は氷のように冷たくなった。「どんな勘違いをして、私があんたを許せると思っているのか理解できないわ。しかし、今のところ、私はとても快適に過ごしているし、夫婦の関係もとても良好よ。「もし言いたいことが、それだけなら、今すぐ私の会社から出て行って。まだ仕事があるの」橋本美咲の決然とした態度が黒崎拓也を激怒させた。彼の内なる男尊主義とプライドが、美咲が彼にこんなことを言うのを許さなかった。黒崎は無意識に橋本美咲に近づき、真っ赤な目をして、美咲を掴も
続きを読む

第158話

彼女はもう退くことができなかった!橋本美咲の目が大きく見開いた。今どうすればいいの?!彼女は初めて黒崎拓也が大人の男性であり、自分がただの小柄な女性に過ぎないことに気づいた。橋本美咲は恐怖に震えながら目の前の黒崎拓也を見つめていた。側には昏倒した助手が倒れていた。今どうするべきか?!彼女は目を閉じ、頭の中は混乱していた。「やめろ!」馴染みのある声が黒崎拓也の後ろから聞こえた。すぐに黒崎は誰かに押さえつけられた。橋本美咲はまだ目を強く閉じていた。強い恐怖で、目を開けることを忘れていた。しばらくして何の動きもないことに気づいた橋本美咲は、ようやく少しずつ正気を取り戻した。彼女は心臓がまだドキドキしているのを感じながら、氷川颯真によって地面に押さえつけられていた黒崎拓也を見つめた。恐怖に震える橋本美咲はその場で十五分間も動けなかった。その後、ようやくゆっくりと心の中の恐怖を抑え込むことができた。美咲は地面に座り込んで、手足に力が入らなかった。隣の氷川颯真は凄く心配そうに橋本美咲を見つめていた。きっとすごく怖がっているに違いない。ちくしょう!氷川颯真は、自分が押さえつけていた黒崎拓也を、鬼気迫る眼差しで睨みつけた。全部、コイツのせいだ!「警備員!警備員!」颯真は大声で叫んだ。オフィスの外の人々はようやく異変に気付いた。彼らによって呼ばれた警備員が、慌てて駆け上がってきた。そして、目にしたのは、荒れ果てたオフィスと、氷川颯真に押さえつけられていた黒崎拓也、後は床に昏倒した助手と、恐怖に震える橋本美咲だった。警備員の額には冷や汗が滲み出た。どうしてこんなミスをしてしまったの!「何をぼーっとしているんだ、早く手伝え!」氷川颯真が叫ぶと、警備員は慌てて颯真の側に駆け寄ったが。どうしたらいいか、わからず立ち尽くしていた。氷川颯真は冷たい視線を向けた。「役立たずが!「ここを押さえるんだ。全力で押さえつけて、絶対逃がすな。聞こえたか?!」氷川颯真の指示で、警備員はようやく黒崎拓也を完全に制圧した。ようやく手が空いた氷川颯真は、すぐに橋本美咲の側に駆け寄り、彼女を支えてゆっくりと立たせた。颯真の顔には心配と悲しみが溢れていた。「奥さん、大丈夫か?どこか怪我とかは?」自分の妻が無事であることを確認すると、氷川
続きを読む

第159話

「マジか!この人、自分を何様だと思っているんだ?警察を脅すなんて。本当に命知らずだな!」「こんな社会のゴミがまだこの世に存在しているの?」「この人、自分が黒崎グループの社長だって言ってなかった?よし、お前の会社の商品はもう使わない」「お巡りさん、かっこいい!よく言った!」予想通り、黒崎グループの株価は大幅に下がり、ほとんどストップ安に近づいた。その上、自分の株を売ろうとしていた株主も我慢できずに、手持ちの株を売り出した。しかし、今の黒崎グループはそれどころではなかった。自社の社長が事件で拘留された。黒崎会長が自社のグループで切り盛りしてるため、リーダー不在とは言わないまでも、かなりの混乱状態だった。多くの社員が黒崎会長に退職届を提出した。その理由は様々だったが、明らかに黒崎グループが崩壊する前に、早く新しい道を探したいという意図だった。黒崎会長はもともと高齢で、加えて若い頃から遊び好きだったため、ご自身の健康状態は芳しくなかった。今回のことで激怒し、持病が悪化したせいで、そのままオフィスで倒れてしまった。幸い、助手がすぐに気づき、急いで病院に運んだため、黒崎会長は一命を取り留めた。目が覚めた黒崎会長は、休む間もなく病床から降りた。理由は二つあった。一つは、今の黒崎グループには彼がいなければ、組織が混乱しかねないこと。もう一つは、警察の知り合いに黒崎拓也を、救い出さなければならないことだった。プルルル、プルルル…黒崎会長は電話の呼び出し音が、これほどまでに焦燥感を、もたらすものだとは思ってもみなかったが、幸いにも相手が電話に出た。黒崎会長の顔に喜びが浮かべた。「もしもし、星川署長か?」星川署長は気だるそうに電話を見つめながら答えた。「そうだ、黒崎。今日は何か用事かい?」黒崎会長の声には焦りが満ちていた。「星川、儂らは長い付き合いの友人だろう」「もういいって。そんなに気を遣わなくても」星川署長の声にはあからさまな苛立ちが感じられた。「用事があるなら早く言って。こっちも忙しいんだ。たくさんの仕事を抱えていてね」星川署長のその態度を聞いて、黒崎会長は何か凄く悪い予感がした。しかし、ダメな息子のためには、頭を下げて頼まざるを得なかった。「そんなに大したことでもないけど。ただ、うちの倅が最近ちょっとした
続きを読む

第160話

黒崎会長は疲れ果てて椅子に倒れ込んだ。どうしてこんなことになってしまったの?黒崎家はこの町でそれなりの影響力を持っていて、少なくとも地元の有力者といえる存在だった。ところが今、自分の息子は拘置所に入れられ、黒崎グループの株価は大きく変動し、あの大株主も持ち株を売り払っている。このままでは黒崎グループは、黒崎家の手を離れてしまうだろう。これらは一体いつから始まったのか?黒崎会長は振り返ってみた。どうやら息子が橋本月影と結婚してからのようだった!一瞬の閃きが黒崎会長の頭をよぎった。きっと橋本月影が災いをもたらしたのだ。彼女が黒崎家に悪運をもたらしたに違いない。それに、この前、息子を殴り倒したこともあった!黒崎会長は深呼吸をして、なんとか心を落ち着かせようとした。橋本家を責めたい気持ちでいっぱいだったが、今は橋本家と衝突する時ではなかった。しばらく様子を見よう…黒崎会長は橋本父に電話をかけた。「もしもし、橋本か」怒りを抑えた黒崎会長は、普段と変わらぬ口調で話しかけた。対する橋本父も特に異変を察知することはなかった。しかし、彼は黒崎会長に対してあまり良い感情を抱いていないようだった。「何の用だ?」「橋本よ、今黒崎グループが少し問題に直面しているんだ。お前のコネを使って、拓也を拘置所から出してもらえないか?儂は今手が離せないんだ、頼むよ」橋本父は眉をひそめ、鼻で笑った。「お前は儂の娘を精神病院に送ったくせに、儂に黒崎拓也なんかを助けろって?冗談も休み休み言え!」実は、橋本月影が精神病院に入れられた時、橋本美奈は既にこのことを夫に伝えた。当時の橋本家は黒崎家と対立するつもりでいた。しかし、黒崎家は数多くの恩恵を与えて、さらにはビジネス上の便宜も約束した。だから、橋本父はその利益に目がくらみ、この件を見て見ぬふりをすることにした。橋本美奈に関しては…彼女は当然納得していなかった。娘はあんなに素晴らしいのに、どうして精神病院に送られなければならないのか。だから、家の中で大騒ぎしたが、橋本父に抑えられてしまった。もちろん、それは元々の話しだった。今や、黒崎家が大きな問題に直面していることを、橋本父が知らないはずがなかった。しかも、黒崎拓也が拘置所に入れられた理由も、既に調べが付いた。もう黒崎家からの大きな利益が得られ
続きを読む
前へ
1
...
1415161718
...
20
DMCA.com Protection Status