ウェイターは里香が招待状を見せないのを見て、彼女を連れ出そうとした。その時、誰かが近づいてきて、里香を自分の後ろに引き寄せた。「坊ちゃん」その人を見て、ウェイターはすぐに敬礼をした。祐介は冷静に雅之らを見つめ、「俺の友達に何をするつもりだ?」と尋ねた。その言葉にウェイターは驚き、慌てて「申し訳ありません。この方が坊ちゃんの友達だとは存じませんでした」と答えた。祐介は冷たく「消えろ、もう二度と顔を見せるな」と命じた。二人のウェイターは心の中で不満を抱えつつも、急いで去っていった。誰が招待状を持たない人がいると教えたんだ?それで叱られるなんて、とんだ迷惑だ!祐介は振り返り、少し驚いている里香を見て、微笑んだ。「また会ったね、奇遇だね」里香は一瞬言葉を失った。このクルーズ船はそんなに大きくないから、再会するのは当たり前じゃないか。それでも祐介が助けてくれたことに感謝して「ありがとう」と言った。スーツ姿でもその不良っぽさを隠せず、祐介はその綺麗な顔に不良っぽい笑みを浮かべながら「口頭での感謝だけ?もし俺がいなかったら、君は海に放り込まれてたかもね」と軽く冗談を言って、里香に近づいた。その言葉に里香は少し引き、無意識に二歩下がった。「ちょっと…」その時、里香の手首が突然強く掴まれた。その力は彼女の骨を砕こうとしているかのようだった。「痛い!」里香は小さく叫び、振り返ると、雅之の冷たい顔が見えた。「何をしているの?」里香は低い声で問いかけた。雅之が少し前まで夏実の隣で、問い詰められていた里香を見ていたことを思い出し、胸が痛んだ。さっきは他人事のふりをしていたのに、今さら何をしに来たのか?存在感を示すために?雅之は里香に目を向けず、祐介に向かって「喜多野さん、妻に用があれば、私に言ってください」と冷静に言った。祐介は目を細め、チャラい笑みを浮かべて「俺は里香が友達だと言ったばかりだけど」と返した。雅之は冷たく「そんなことを里香が認めるはずがありません」と言い切った。祐介は里香に目を向け「小松さん、どう思う?」と問いかけた。雅之も視線を里香に向け、手首を掴む力が強まった。里香がいつも自分の言うことを聞いてくれた。昔からずっとそうだった、今日もきっと同じだと雅之は信じて
Last Updated : 2024-09-03 Read more