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第50話

里香は凍りついた。

雅之はどうしたの?意識が朦朧としているの?

里香が激しく抵抗し始めると、男女の力の差が顕著になった。里香が少しもがいただけで、雅之の野性が引き出された。一方的に里香の両手首を掴んで頭の上に押さえつけた。

熱い息が唇の端から胸元にかけて降りてきた。突然、冷たい感触が胸元に広がり、その後すぐに灼熱と湿り気が襲ってきた。

里香は目を見開き、「雅之、何やってるの?」と叫んだ。

雅之は病気じゃなかったのか?

だが、雅之が元気そうに見えるのは、まるで病気とは思えない。

それとも、里香を他の女性と勘違いしているのか?夏実と?

その考えが浮かぶと、里香は胸に刺すような痛みが走り、思い切り膝を突き上げた。

雅之の動きは一瞬で止まり、その重い体は里香の上に倒れ込んだ。

「起きて!」

里香は不快感から体を動かしたが、雅之は腹を立てて里香の鎖骨に噛みついた。

「寡婦になってもいいのか?」

里香のことが認識しているんだ。

だが、里香は「勘違いしてるんじゃない?私たちはもうすぐ離婚するんだから、寡婦になるつもりはないわ」と、里香は息を整えながら言った。

「起きて!」

里香は再び繰り返した。里香の一撃は大した力ではなく、雅之を目覚めさせるために十分だった。

しかし、雅之は起きず、里香をしっかりと覆ったままだった。

「君はどうしてここに?」

しばらくして、耳元で雅之のかすれた低い声が聞こえた。

里香は「こっちが聞きたいよ。アンタが間違って私にかけたじゃないか」と答えた。

再び沈黙が訪れた。

里香は手を押さえつけられて不快だったので、動かそうとした。

「私を放して」

「放したら、逃げるつもりだろ?」

雅之は突然そんな意味不明なことを言った。

里香は驚いて、「アンタ、本当に目が覚めてるの?それともまだ朦朧としているの?」と聞いた。

雅之は離婚しようとしていなかったのか?夏実に責任を取るためじゃなかったのか?

どうして里香にこんな訳のわからないことを言うのか?

雅之は自分が何を言っているのか分かっているのか?

雅之は顔を上げ、その黒い瞳が依然として混濁しており、明瞭な意識がないようだ。

「一体どうしたの?」

里香は眉をひそめた。

「苦しい」

雅之は突然言った。その声はさらに低くなった。

そして、雅之は里香に近づき、
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