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第42話

雅之は墨色の瞳で二人の背中をじっと見つめ、その場の空気が凍りつくほどの冷気を放っていた。他の人々も近づくことができなかった。

「雅之」

夏実が心配そうに近づいてきた。

「大丈夫?」と尋ねながら、眉をひそめた。

「小松さんは何を考えているのかしら?雅之の妻として、たとえ離婚が近いとはいえ、夫の気持ちを全く考えずに喜多野さんと行動を共にするなんて、ひどいわ」

雅之は視線を逸らし、「用事があるから、先に行く」とだけ言い、夏実の反応を気にせず立ち去った。

夏実はその場に立ち尽くし、唖然としていた。

さすがの彼女も危機感を感じた。

雅之にとって里香の存在がかなり大きいのかもしれないと感じた。

やっとここまで来たのに、雅之のために足を一本失った。この男を誰にも奪わせるわけにはいかない。

一方、里香は祐介を見て、「祐介、ごめんね。ご飯はまた今度にしよう。今、大事な用事があるから、お先に失礼するわ」と言った。

祐介は「俺の番号知らないのに、どうやって連絡するつもり?ただの口約束じゃないよね?」とからかった。

里香は「ペンを貸して」と言って、祐介からペンを受け取った。

そして、周りを見渡し、彼のシャツに自分の電話番号を書いた。

「これに電話してくれればいいわ。その時にこのシャツも洗わせてもらうから」と言った。

祐介は少し驚いた表情を見せた。

里香が彼のシャツに番号を書くとき、彼女から漂うほのかな香りが彼を少し動揺させた。こんなに大胆に接近してくる女性は初めてだった。

まったく…

里香のおかげで、これまで何度も「初体験」をしてきた。

里香はペンを返し、ためらうことなくその場を去った。

今夜の目的は松本社長を見つけることだ。イケメンとのおしゃべりは後回しだ。

里香は松本社長が去った方向に向かったが、入口で招待状がないと入れないと止められた。

仕方なく入口で待つことにした。

時間が少しずつ過ぎ、夜が深まっていった。

海で見上げる星空がキラキラと輝き、思わず息を呑むほどの美しさだった。

デッキの人々は減っていったが、里香はせっかくのチャンスを逃したくなくて、その場に留まることにした。

里香は隅にしゃがみ込み、入口の方をじっと見つめていた。

夜の海風が冷たく、里香は震えながら自分を抱きしめ、頭もぼんやりとしてきた。

半分眠りかけていると
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