さくらは沢村紫乃に声をかけ、木幡青女を自分の背中に乗せるのを手伝ってもらった。二人で協力して青女を素早く馬車まで運ぶと、さくらは優しく声をかけた。「ここでお待ちください。必ずお探しいたしますから」青女は全身を震わせていた。髪は雨に濡れ、顔には涙か雨水か分からない水滴が伝っていた。青ざめた唇は激しく震え、「お願い......どうか、お願いです......」と震える声で懇願した。「下車なさらないで!」さくらは思わず強い口調になった。「ご自分のお体を大切になさってください。天国の旦那様も、きっとそれを望んでいらっしゃるはずです」青女は両手で顔を覆い泣き崩れた。さくらは御者に青女を見守るよう命じ、再び捜索に戻った。小一時間ほどして、通りの馬車も徐々に減っていったが、雨は依然として降り続いていた。不気味なほど暗い空の下、安告侯爵家の御者を含む四人は腰が痛むほど探し回ったが、耳飾りは見つからなかった。みんなが諦めかけた瞬間、さくらは書院の門前で微かな輝きを見つけた。急いで駆け寄ると、それは確かに探していた真珠の耳飾りだった。だが手に取ってみると、耳飾りは既に壊れており、真珠が一粒残っているだけで、金の細工や装飾の金箔は消えていた。ここは青女が転んだ場所ではない。おそらく馬車に轢かれ、誰かに蹴られてここまで飛ばされたのだろう。さくらは周辺を更に探し、薄い金箔の破片を一枚見つけたものの、それ以外は何も見つからなかった。一行が全身濡れたまま馬車に戻った。さくらは、両手で真珠と金箔の破片を大切そうに木幡青女に差し出した。青女は震える手でそれらを受け取り、しっかりと握りしめた。突然、彼女は馬車の中でさくらの前に跪き、深々と頭を下げて声を上げて泣き崩れた。さくらは青女を抱き寄せ、自分の肩で泣かせた。その熱い涙が、さくらの心を痛く焼いた。やがて泣き声は静まっていった。まるで感情を抑えることに慣れているかのように、青女は素早く心を落ち着かせ、涙を拭ってさくらの肩から顔を上げた。蒼白い顔に、まだ涙が光っていたが、苦笑を浮かべて言った。「ただ......夫の遺体のように、見つからないのではと怖かったのです。見つかって本当に良かった。王妃様、ありがとうございます」侍女に支えられながら馬車を降りる時、青女は再度さくらにお礼を言い、足を引きずりながら自
Last Updated : 2024-11-24 Read more