影森玄武は彼らを目にした瞬間、心臓が喉元まで飛び上がりそうになった。どこからこれほどの人数が現れたのか。しかも、その中には明らかに武芸の心得が浅い者もいる。鉄鉤と縄を使わなければ城壁も登れないほどだ。一体何者なのか。深夜に衛所に忍び込む目的は何なのか。もし彼らが物音を立てでもしたら、今夜の救出計画は水の泡となってしまう。玄武たちは暗がりに身を潜めていたが、城壁に沿って素早く近づいてくる彼らに声をかけることもできない。仕方あるまい。衛兵の交代も終わりに近づいている。一刻も早く潜入を開始せねばならない。天方十一郎たちも前方に潜む三人の気配を察知した。しかし、闇に紛れて黒装束に身を包んだ彼らの姿は、顔こそ隠していないものの、はっきりとは見分けられなかった。敵か味方か判断がつかないまま、その三人は燕のように身軽く、彼らの目指す方向へと瞬く間に消えていった。天方たちは一瞬呆然とした。まさか、自分たちと同じ救出の目的なのだろうか。だが、それはありえないはずだ。本営との連絡は途絶えているとはいえ、元帥が交代して親房甲虎となったことは知っている。親房甲虎といえば、天方にとっては義理の兄だ。武将の出でありながら、長らく戦場から遠ざかり、机上の空論を得意とする男。実力が皆無というわけではないが。ただ、彼は傲慢で自負心が強く、得失を天秤にかけるタイプの男だ。判断を迫られれば、必ず面倒な手段は避けて通る。交渉か救出か、となれば間違いなく前者を選ぶ。両方を試みるような真似はしないだろう。一息ついた天方は、手で潜入の合図を送った。衛所は広大で、十二棟の建物が立ち並ぶ。地牢は第十一棟と第十二棟の間にある独立した小屋の地下に設けられていた。その場所が厳重な警備下にあることは間違いない。各所で警備の交代が行われている中、彼らは東へ西へと身を隠しながら、何とか第十一棟まで辿り着いた。第十一棟の壁に身を寄せながら、そっと地牢入口の警備の様子を窺おうとした矢先、先ほどの三人も同じように壁際に潜んでいるのが見えた。そのうちの一人が首を伸ばして様子を窺っている。地牢に近いため、周囲には明かりが灯されていた。ただ、彼らの潜む場所は、折よく傍らの大木の影が落ちかかり、ほどよい暗がりとなっていた。とはいえ、先ほどよりは明るく、互いの姿も幾分か見分けられるよ
最終更新日 : 2024-11-28 続きを読む