道中、一同の者たちは胸を締め付けられる思いでいた。烈央の高熱は一向に下がる気配を見せなかった。軍医は携帯用の薬炉と生薬を持参し、解熱と傷口の腐れを防ぐ薬を絶え間なく煎じては与えたが、効果はわずかだった。丹治先生からの特製の丸薬も、もはや大きな効果は望めなかった。それでも煎じ薬よりはまだ良い方だった。烈央は幾度か意識を取り戻したが、その度に「ここは我が国の領土でしょうか」と、同じ言葉を繰り返した。肯定の返事を受けると、かすかに唇を緩ませて微笑み、また意識を失っていった。軍医は「このような高熱が続けば、記憶が曖昧になるのは避けられません」と説明した。やがて玄武は尾張拓磨に自分の馬の手綱を任せ、自ら馬車に乗り込んで烈央に付き添った。意識のない烈央の手を優しく握りながら、玄武は邪馬台の美しさを語り、家族の近況を伝え、妻の木幡青女が今この時も急ぎ来ていることを告げた。夫婦が再会できる日は近いと、幾度となく語りかけた。そんな言葉を耳にする度に、烈央の呼吸は穏やかになり、開かれた瞳には一瞬の光が宿った。虚ろな眼差しが、束の間の生気を取り戻すのだった。まさに一縷の望みに縋りつくように、烈央は生への執念で命を繋いでいた。名西郡まで、まだ十数里を残したところで一行は足を止めざるを得なかった。烈央の呼吸は糸のように細く、吐く息の方が吸う息よりも多くなっていた。軍医は玄武に向かって申し訳なさそうに目を伏せた。「申し訳ございません。私にできることは全て試しました。使える薬は全て使い、鍼も何度も打ちました。今日だけでも既に二度。これ以上は危険でございます」七瀬四郎偵察隊の成員たちは一団となって立ち尽くし、重苦しい空気に包まれていた。誰一人として馬車の簾を開ける勇気がなかった。骨と皮ばかりになった清張の傷だらけの姿を見れば、心が張り裂けそうだった。玄武は師匠に目を向けた。その眼差しには問いが込められていた。幹心は深いため息をつきながら言った。「最後の手段だ。だが、お前も分かっているはずだ。内力で心脈を守っても、一時間の内に名西郡に着けなければ、あるいは着いても丹治先生が到着していなければ、もう助からん」」玄武は悲痛な面持ちで頷いた。「承知しています。名西郡の駅館に着いて、たとえ丹治先生が駆けつけてくださっても、他の手立てがなければ、結果
最終更新日 : 2024-12-02 続きを読む