再影森玄武と尾張拓磨が先頭に立ち、馬車がゆっくりと後に続いた。恵子皇太妃はさくらの手を握り、喜びを抑えきれない様子で言った。「まさか、あなたがあの方たちに全額返金させられるとは思いもしなかったわ。他の人は知らないでしょうが、私はよく分かっているの。大長公主のことはね。表面上は誰にでも優しそうに振る舞うけれど、実際はとても横暴で、どれほど強引か分からないくらいなのよ」さくらはゆっくりと手を引き、静かに答えた。「そういう方だと分かったなら、今後はあまり関わらないほうがいいでしょう」恵子皇太妃は一度頷いたものの、すぐに不安そうな表情を浮かべた。「でも、彼女と仲たがいしたら、他の奥方たちの前で私たちの悪口を言われるかもしれないわ。評判を落とされるのが心配だわ」「そんなこと、何も心配することはありませんよ」さくらは冷静に言った。「あなたは心配しないでしょうね。あなたの評判はもう散々だもの。でも私はやっと宮中を出たところなの。悪評判なんて立てられたくないわ」さくらは恵子皇太妃を横目で見た。なんて言い方をするのだろう。身内に対して、まるで刃物で刺すような言葉ばかり。恵子皇太妃も自分の言葉が適切でなかったことに気づき、慌てて取り繕った。「そういう意味じゃないのよ。ほら、寧姫が今、縁談の最中でしょう。大長公主は多くの名家と親しいから、彼女たちが寧姫の評判を落とすようなことを言いふらさないか心配なの」さくらは答えた。「寧姫様は長公主です。天皇陛下と上皇后様が守っておられますし、北冥王家という後ろ盾もある。誰が寧姫様の悪口なんて言えるでしょうか。命が惜しくないのでなければ」さくらは皇后が自分に話したことを思い出した。皇后は明らかに斎藤家の六男が寧姫と結婚することを望んでいた。帰ったら、まず斎藤六郎について調べてみよう。信頼できる人物なら、寧姫本人の意思も確認しよう。もちろん、斎藤六郎の意思も確認しなければならない。北條守との失敗した結婚を経験したさくらは、結婚は親の命令や仲人の取り持ちだけでは不十分で、お互いの意思も大切だと感じていた。「怒っているの?」恵子皇太妃はさくらが長い間黙っているのを見て尋ねた。「いいえ、怒ってはいません」さくらは思考から戻り、答えた。「ただ、少し考え事をしていただけです」恵子皇太妃は気前よく言った。「考えるま
続きを読む