「とんでもない!」第二老夫人は怒りに任せて机を叩いた。次男邸の中庭は薄暗く、彼女の激怒した顔を照らしていた。北條正樹と美奈子はその怒鳴り声に頭を下げ、口を閉ざした。「よくも太政大臣家に行けと言えたものね。私に何の面目があって行けるというの?まさか、守が後悔して、義父を殴る毒婦を娶ってしまい、家庭が混乱しているから、さくらに戻ってきて尻拭いをしてほしい、嫁入り道具で姑の病気の治療費を払い、義妹の四季の衣装を用意してほしいとでも言えというの?」「お前の母親によくそんなことが言えたものだ。あの時さくらを離縁する時、少しでも情けをかけたか?人の持参金まで計算に入れて、もし陛下が和解離縁の勅命を下さなかったら、彼女の店や荘園まで全て呑み込むつもりだったんじゃないのか?お前たちに面の皮があるなら、勝手に頼みに行けばいい。私は行かない。私の顔が城壁のように厚くても、お前たちの踏み台にするためのものじゃない」「もう恥も外聞もないというなら、いっそ燕良親王妃のところへ行けばいい。当初お前たちの縁談は親王妃が取り持ったんだろう。離縁する時は親王妃に頼む勇気がなかったくせに、今になって和解を頼むのか?なぜ行かないんだ?追い出されるのが怖いのか?」「それとも燕良親王妃の体が弱くて家を切り盛りできないから、お前たちが好き勝手にできると思っているのか?私の言葉が耳障りだと思うなら、それはお前たちのやったことが将軍家の名声を台無しにし、先祖代々の功績を長男家の手で台無しにしたからだ」第二老夫人は一通り怒鳴り散らした後、使用人を呼んで美奈子たちを全員追い出させた。言い訳を一言も聞くつもりはなかった。自分まで心臓病になるのは御免だった。ここ数年で将軍家の財産はすっかり無くなってしまい、自分には高価な雪心丸を買う余裕などなかった。正樹と美奈子は第二老夫人に完膚なきまでに叱られ、顔を見合わせた。二人とも顔色が土気色になっていた。美奈子はしばらく躊躇った後、言った。「正樹さんよ、実は義母の考えは一方的なものです。さくらはきっと戻ってこようとはしないでしょう。私たちが次男側のために奔走する必要があるでしょうか」正樹は叱責した。「なんという団結を乱す発言だ。我が将軍府は栄えるも衰えるも運命を共にしているのだ。以前、守が功を立てた時、我々も尊敬を受けた。上原さくらが戻って
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