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第154話

上原さくらが太政大臣家に戻ってきたばかりのところへ、吉田内侍が直々に天皇の勅命を伝えに来た。

さくらは目を丸くした。3ヶ月以内に適当な夫が見つからなければ入宮だと?

彼女は慌てて吉田内侍を引き留め、他の者たちを下がらせた。「吉田殿、教えてください。陛下のご真意はいったい何なのでしょうか」

もし天皇が本気で自分を後宮に入れるつもりなら、3ヶ月も猶予を与える必要はないはずだ。

かといって、3ヶ月の猶予を与えたところで、この勅命が広まれば、誰もさくらと結婚しようとは思わないだろう。

結局のところ、これは権力による圧迫で、さくらに選択の余地を与えていないに等しい。表向きは入宮する以外に道はないように見える。

しかし、権力を行使しておきながら、この3ヶ月の猶予を与えるというのは…この勅命には何か引っかかるものがあった。

吉田内侍は考え深げに言った。「おそらく、陛下はこうお考えなのではないでしょうか。この3ヶ月の間に、上原お嬢様に求婚する勇気のある方がいれば、その方こそがあなた様を本当に大切に思っている証だと」

「でも、なぜ陛下は私の縁談にそこまで口を出されるのでしょう?」

吉田内侍は答えた。「あなた様ご自身がおっしゃったではありませんか。陛下を兄のようだと。兄が妹の縁談を心配するのは当然のことです」

さくらは、この複雑な状況に頭を抱えた。天子様の威厳を冒す覚悟で言った。「兄が妹の縁談を心配するのはわかります。でも、縁談がうまくいかないからといって、自ら妹を娶るなんてことがあるでしょうか」

吉田内侍はため息をついた。言いたいこと、言えないことがたくさんあった。

天皇自身も葛藤しているのだろう。帝王の心は測り難し、というところか。

吉田内侍のため息を見て、さくらはこの事態が単純ではないと感じたが、何がどうなっているのか掴めずにいた。

天皇との縁は、彼女が幼かった頃のことだ。正直、天皇のことをよく知っているとは言えない。

梅月山から戻ってきた後、父と兄が亡くなり、母と共に宮中に入った時、天皇は彼女に対して優しく接してくれた。幼い頃と変わらぬ態度だった。

しかし、どうして戦場から戻ってきたとたん、彼女を娶ると言い出したのだろう。

それに、後宮に妃を迎えるなら、選抜すればいいはずだ。なぜ再婚の彼女を選ぶ必要があるのか。

さらに言えば、もし天皇が彼女に
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