恵子皇太妃は息子との食事を好まなかった。互いの好みも合わず、会話も続かない。ただ、太后様が口を酸っぱくして言うように、月に数度は母子で食事をともにしなければ、下々の噂になりかねない。玄武とさくらが不孝者だと囁かれるのを避けるためだった。「はぁ……」恵子皇太妃は小さく溜め息をつく。人というものは、いつも何かに縛られ、思い通りにはならないものだった。高松ばあやはいつも「皇太妃様は幸せの中にいながら、それがお分かりにならない」と諭すのだが、恵子皇太妃にしてみれば、この世に本当の幸せだけを享受できる者などいるはずもない。どれほど恵まれた日々を送ろうとも、その身分相応の悩みはつきまとうもの。たとえ天下一の富貴の身であっても、それなりの苦悩を抱えているのだ。結局のところ、恵子皇太妃は楽しい時は存分に楽しみ、悩み事がある時は誰も寄せ付けなかった。悩む権利くらいは、自分にもあってしかるべきだと思っていた。玄武もさくらも寡黙な性格だったため、紫乃を食事に招くことが多かった。紫乃は場を和ませるのが得意で、退屈な食事の時間を愉快なものへと変えてくれるのだった。北條守は結局、辞官はせずじまいだった。数日後、肩を落としながら官服姿で出仕する彼の姿が見られた。清和天皇は再び彼を召し出したものの、その顔には闘志のかけらも見られなかった。まるで野良犬のように、全身から疲弊の色が滲み出ていた。天皇は内心、激しい憤りを覚えていた。純粋な臣下として育て上げ、いずれ重用しようという考えがあったのだ。盗賊の討伐や戦場を経験した武将であり、没落した家の出で、なおかつ君恩を重んじる者ほど、忠誠心という意味で使い勝手が良いものはない――そう考えていたのだが。清和天皇は今や痛感していた。忠誠心は確かに貴重だが、それだけでは何の価値もない。実力が伴わなければ意味がないのだ。玄鉄衛の名を上げ、衛士を配下に収めることを期待していたが、北條守に頼るのは無理そうだった。結局のところ、樋口信也に依存せざるを得ないだろう。しかし、樋口は指揮官の任に就いているとはいえ、別の要務も抱えている。北條守がこれほど役立たずとなれば、新たな副官を登用する必要があるだろう。北條守を退出させた後、清和天皇は樋口信也を召し入れた。「安倍貴守と清張文之進、この二人を推薦させていただきます」樋口は恭
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