「親王様」無相は不安を拭えず、さらに言葉を続けた。「大事が成就すれば、どのような女性でも手に入れられましょう。その時になれば、沢村紫乃など取るに足らぬものと思われるはずです」「もういい」燕良親王の声は暗く沈んでいた。その言葉を吐き出した瞬間、堰を切ったように激情が溢れ出した。長年押し殺してきた感情が、もはや抑えきれない。「わしは長年、欲を抑え、己を律してきた。一瞬たりとも気を緩めず、本性を抑え込み、些細な過ちも犯さぬよう心を砕いてきた。心惹かれる女などいなかったわけではない。だが、決して近づかなかった。女色に溺れては大事を損なうと、分かっていたからだ。だが紫乃は違う。初めてだ……わしの心を揺さぶり、同時にわしの力となり得る女だ。燕良親王妃としては最適の人物なのだ」この告白に、無相は戦慄と怒りを覚えた。初めて厳しい口調で主君を諫めた。「親王様、『心を揺さぶる』とは、沢村紫乃への恋心をお認めになるということですか?もしそうだとお思いなら、それは違います。卑劣な行為を正当化する言い訳に過ぎない。欲望を愛という衣で包んでいるだけです。もし本当の愛情があるのなら、彼女の清らかさを穢すような手段は取られないはず。この薬が命取りになり得ると申し上げても、躊躇いすら見せなかったではありませんか」正鵠を射られた燕良親王は、恥じらいと怒りに顔を歪めた。「それがどうした?わしにそのような思いがあったところで?卑劣とは何事か。世の男どもは後宮に幾人もの女を囲い、さらには外にも手を出す。そのような中で、わしはむしろ節制してきたほうだ。たかが一度や二度のことを、そこまで大層な話にせねばならんのか?覚えておけ。お前はわしの謀士に過ぎぬ。わしの行動に口を挟む立場ではないのだ」「親王様!」無相はさらに厳しい声音で畳みかけた。「もし親王様の望みが女色に耽ることならば、この無相、親王様の栄達にお供する福分はないということ。どうか心の赴くままに、前途を歩まれますよう」書斎に凍てつくような静寂が下りた。燕良親王の顔色が青ざめては赤らみ、交互に変化していく。ようやく怒りを押し殺し、声を落ち着かせて言った。「先生、そのような言葉は、わしの心を痛めるではないか。わしは独りよがりな人間ではない。これまでも先生の意見は常に重んじ、実行してきた。都に来てからの度重なる失態で気が滅入っていたゆえ、
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