All Chapters of 植物人間の社長がパパになった: Chapter 81 - Chapter 90

　 突然の話に怒った清墨は背筋を伸ばして、「あなた、何を話しているのですか？私は雅彦の友人で、昨日桃の手術をしたのは私の母です。母に頼まれて桃の回復状況を見に来たんです」と言った。　梨は最初、目の前の男性を雅彦だと思っていたが、清墨の説明を聞いて、少し気まずくなった。　「あ、すみません。本当に失礼しました。どうぞこちらへ」　彼女は少し顔を赤らめた。すぐに清墨を桃の病室に案内した。　桃は食事をしていた。しかし、体調があまり良くないうえに、朝雅彦と喧嘩してしまったため、彼女はイライラしていた。そのため、食欲はまったくなかった。　ただ、お腹の子のために無理に食事をしていた。　入ってくる清墨を見ると、桃は少し驚いた表情を見せた。「あなたは？」と尋ねた。　清墨は今までの事情を簡単に説明した。桃は清墨が昨日自分を救った医師の息子であることを知り、感激の気持ちを抱いた。「あなたのお母さんのおかげで、今日はだいぶ良くなりました。本当にありがとうございました！」　それを聞いて、清墨は微笑みながら、「いいえ、とんでもないです。命を救うことが医者の天職です。それに親友の雅彦に頼まれたから、桃さんを見捨てるわけにはいかないんです」と言った。　さっき梨の話を聞いて、桃は昨夜雅彦がそばにいなかったことに不満を持っていることが分かった。だから、雅彦の友達として、桃に昨夜雅彦がしたことを説明しなければならない。　そうでなければ、昨夜雅彦はかなり苦労をしたが、人に認められないし、文句を言われるのはあまりにも気の毒だった。　桃は彼の話を聞いて、驚いた表情を見せた。「昨夜、雅彦様が医師を見つけてくれたの？」　清墨は軽く頷いた。「その通りです。雅彦が頼まなければ、既に引退した母はどうしてもここにくるはずないでしょう」　桃は複雑な気持ちになった。本来、彼女は雅彦が冷酷で彼女の命を気にしないと思っていたが、今清墨の話を聞いて、自分が勘違いしていたのかもしれない。　桃が何か考え込んでいる様子を見て、清墨はお大事にと言って病室を出て行った。　梨が彼を外に見送った。雅彦に強い好奇心を持っている梨は、つい口を開いて「清墨さん、雅彦さんって、実際はどんな人なんですか？」と尋ねた。　その返答に窮した清墨は少し考えてから、「雅彦は君が想像しているような悪い

　 桃の様子を見て、いつも冷静だった雅彦は決まりが悪そうに顔をぱっと赤らめてしまった。　雅彦は電話の向こうの月に「用が入るから切る」と言い、それから部屋を出ていった。　桃は困り果てていた。さっき自分の体を隠すことも忘れて、雅彦に全部見られてしまったのだ。　その場面を思い出すと、桃は顔を手で覆い、体が石になってしまいそうなほど恥じ入った。こんなことが起きるとは。　でも、我に返った桃は早速きれいなパジャマに着替えた。裸の自分をもう二度と人に見られたくないからだ。　きちんとパジャマを着て、最上のボタンまでしっかりと留めてから、桃は少し安心した。　雅彦は部屋の外に立ち、さっきの場面を思い出すと、言い表せないほど複雑な気持ちになった。　この女、真っ昼間に裸で部屋にいたなんて、一体何をしようとしていたのか。自分を誘惑したかったのか？　しばらくして、雅彦は中に入ろうと手を伸ばしてドアを開けた。彼は何かを取りに会社から帰ってきたのだ。　中に入ると、もう服を着替えて、真面目に座っている桃が目に入った。彼女は表情が冷静だが、赤らんだ耳と首からは内面の不安が窺えた。　雅彦は突然彼女をからかいたくなり、ゆっくりと本を手に取りながら「知らなかったけど、真っ昼間に裸で走り回る癖があるんだね」と言った。　彼の話を聞いて、桃は潤んだ瞳を上げて「ちゃんとノックせずに入ってきた雅彦様が悪かったんじゃないですか？あなたが帰ってくるとは知らなかったですよ」と言った。　「ここは私の部屋だから、ノックしなくてもいいんじゃないか？」と雅彦は反発した。　また、桃は反論したかったが、この家では雅彦が絶対的な支配権を持っていることを考えると、彼女は自分が何を言っても無駄だと分かった。　彼女は喉元まで出かかった言葉を再びぎゅっと押しとどめた。そして、部屋を出ていった。　へこんだ桃が部屋を出るのを見て、雅彦は顔に軽い笑みを浮かべた。　…　その一方。　月は雅彦に電話を切られた後、心の不満を発散するために、部屋の中で物を投げたりしていた。　彼女はよく聞こえた。電話の向こうから伝わってきた叫び声が誰の声なのかすぐわかった。　桃とほぼ1年間一緒に働いたから、彼女の声をよく分かっているのだ。　本来桃が妊娠していることで、彼女は頭を悩ませていたが、今

　 使用人は恭しくそのメモを雅彦に手渡した。　　中には数行の文字が簡潔に書かれていた。　「雅彦様、今日の午後、あなたの電話から他の女性の声を耳にしました。私は自分のことをただの身分の低い普通な女性だと思っているので、あなたの妻にはなれないかもしれません。しかし、裏での恋人関係は望んでいません。なので、やはり私たちは離れたほうがいいと思います。幸せを祈っています」　雅彦は拳を握りしめ、メモをしわくちゃに折った。午後、桃の声を聞いた彼女はきっと誤解してしまったのだ。だから、一人で歩いて部屋を出て行ったのだろうか？　彼は自分を強く責めた。何と言っても、月は自分の命を救った女性だ。そして、月を自分の妻にすると約束したからだ。　「すぐ近くで探してくれ」　雅彦は使用人に指示を出した。そして、すぐに伊川に電話して、月の位置を確認するように命じた。　彼はただ待つことなく、別荘から外への道をゆっくりと進みながら、月がその道にいるかどうかを探してみた。　彼はゆっくりと車を運転して、そろそろ諦めようとした時、道端に女性の姿がかすかに見えてきた。　彼はすぐ車を止め、歩いて近づくと、足を引きずりながら外に向かっている月が目に入った。　「月、どうして一人でここまで来た？ 足を怪我したのか？」　月はここで長い間待っていた。雅彦の車を見て、彼女はすぐに外に向かって歩いている様子を装った。　「雅彦様、私の言いたいことは、全部メモに書いてあります。私を行かせてください」　雅彦は月の様子を見て、眉をひそめ、彼女を抱き上げた。　月は抵抗するふりをしたが、自分の顔を雅彦の胸に当てた。「雅彦様、あなたは他の女性と付き合っているのですか？ そうだとしたら、なぜ私を探しに来たのですか？」　「あの女は…父が手配した人だ。心配しないで。間もなく離婚するよ。その時、あなたが私の妻になる。約束を絶対に守る」　月を少しなだめた後、彼女を車に乗せて帰路についた。　二人は途中で一言も言葉を交わさなかった。　雅彦はずっと月と桃のことを考えていた。　できるだけ早く桃と離婚すべきだと雅彦は思った。　しかし、その女性が離婚後すぐに須弥市を離れ、別の男と一緒に暮らすことを思うと、雅彦はどうしても手放すことができないのだ。　　こうして、二人は無言のまま別荘

　 午後、雅彦はずっと会社に戻ってこなかった。桃は定時退社した。　家に帰って、桃はシャワーを浴びた。夕食を済ませた後、男はやっと家に帰ってきた。　入ってきた雅彦が昨日の服をベッドに置いた。それを見て、桃は気を引き締めて自分の服の端をきゅっと握った。　桃は「彼はきっと何か言いたいことがあるのだろう」と思った。　昨日、あの女性はすでに家を出てしまった。あの女性を慰めるために、雅彦は彼女と結婚しなければならないかもしれないのだ。　自分との離婚のことはもう先送りできないと雅彦は考えているかもしれない。　自分を追いかける視線を感じた雅彦は、眉をひそめ、顔を上げるとすぐに桃と交わした。　そして、雅彦はすぐに視線をそらした。　「なんで私をじろりと見ているんだ？」と雅彦は何の感情もなく、冷たい口調で言った。　「別に。ただ私に言いたいことがあるのかと思ったから」　桃は彼の冷静さに少し戸惑いながらも、淡々と答えた。　「私には何も言うことはない」　桃の視線を感じた雅彦は、彼女が何か分かったのではないかと不安に思った。　心が少し重くなり、雅彦はネクタイを解き、バスルームに入っていった。　桃はバスルームに入っていった雅彦を見て眉をひそめたが、何も言わなかった。　彼女には雅彦に決断を迫る力はないのだ。おそらく数日後、雅彦は自ら離婚のことを話してくれるのだろう。だから、今彼女は焦る必要はない。　桃は心を落ち着かせようと本を取り出し読み始めた。その時、部屋の中でスマホの着信音が鳴り始めた。　あちこち探した末、最後に雅彦のスーツのポケットに入ったスマホが鳴っていることが分かった。　放っておきたかったが、電話をかけてくる相手がしつこく、ずっとかけ続けていた。　スマホの音で桃は気分が不快になった。もしかしたら会社からの重要なことで、これを無視したら大変なことになるかもしれないと桃は考えた。　彼女はそのスマホをポケットから取り出し、バスルームのドアをノックした。「スマホがずっと鳴っているんですけど、何か大事なことでしょうか？」　中で水音が止まった。スマホを持って、雅彦が出てくるのを待っているうちに、偶然にもその番号を覗いてしまった。　彼女はすぐにその番号がとても馴染み深いものだと感じ、思わず何度か確認した。　ドアを

　 本来月は桃があの夜のことについて何か気付いているのではないかと心配しており、こんなことを話すとは思ってもみなかった。　月はすぐに考えを巡らせ、天井にある監視カメラを見た。ここでは監視カメラに映るかもしれない。　「そうですか。私…私は知りません…本当にそんなことは知りません」　月は知らぬふりをして答えた。「この前、私は夜勤明けで家に帰る途中、酔っ払った男性に狙われました。その時、雅彦が助けてくれて、家まで送ってくれたんです。そこで、私たちは知り合いになり、恋人同士にもなりました。私は彼が既に結婚していたことを本当に知りませんでした！」　月は話しながら、大腿を激しくつねった。強烈な痛みで彼女の目が一瞬にして濡れてしまった。それを見て、誰も彼女の話を疑う気にならなかった。　桃は彼女の言葉を聞いて、本当にそうなのかもしれないと感じた。彼女が頭を下げ、まだ何か言おうとした時、月が歩いてきて桃の服を引っ張り、跪いた。　「桃ちゃん、さっきあなたも言ったでしょう。あなたと雅彦はビジネスのための婚姻です。だから、愛情がないということですよね。それならば、離婚してもらえませんか。私と雅彦は本当に愛し合っています」　月が地面に跪き続けないように、桃は彼女を支え、「月ちゃん、落ち着いて、立ってください。他の人に見られたらどうするの？」と言った。　桃は周りの人に気付かれないように桃を慰めようとしていたが、多くの人々の注目を集めていた。　やはり、妻と愛人の話に興味を持っている野次馬は多いのだ。　「桃ちゃん、私は立ち上がりません。恥ずべきことだとはわかっていますが、私は本当に雅彦を愛しています。あなたのような女性が好きではないと雅彦も言ったことがあります。あなたたちの婚姻は幸せなものではないのです。だから、私たち三人の将来のために、彼とどうか離婚してください。私は一生感謝しますから」と月は言った。　月の話を聞いて、周りの人々は心の憤りを我慢できなくなった。　「まさか、こんな恥知らずな女がいるなんて。浮気相手になることが理にかなっているとでも？」　「一体どんな親がこんな恥知らずな娘を生んだんだ。まるで悪魔の呪いを受けたようだ！」　「この奥様、絶対に離婚するわけにはいかない。彼らに代償を払わせなければならない！」月は周りの人がみんな自分