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第89話

  桃はこの世界が本当に狭いと感じた。こんな偶然が起こったなんて信じられないのだ。

 しかし、心の中で何らかの違和感があると感じていた。でも、具体的に何の問題があるのかはわからなかった。

 そう考えながら、本人に確認したい桃は月に直接連絡を取ることにした。彼女と会ってみようと。

 月は部屋で不機嫌だった。昨日の出来事の後、雅彦がすぐに桃を菊池家から追い出し、彼女を菊池家に迎え入れると思っていた。

 しかし、雅彦はそんな考えを持っていなかった。焦っている月は雅彦を急かすことは出来ず、ただ待つしかなかった。

 スマホが鳴ったとき、月は雅彦からの電話だと思って急いで出たが、実際には桃からの電話だった。

 月は緊張しながら電話に出た。「もしもし。桃ちゃん、何か用があるの?」

 「特にないわ。ただ月ちゃんと会って話したいの」

 月は桃が何か知っているのではないかと心配した。そして、2人は前回のカフェで会うことを決めた。

 桃が電話を切るとすぐに外出した。カフェに着くと、月が既にそこで待っていた。桃は急いで彼女のほうに歩いていった。

「すみません。遅れてしまって。」

 月は微笑みを浮かべた。桃の乗っていた車を遠くから見た月は、それが高級な豪華車だと分かった。

 このことから見ると、雅彦亦と菊池家の桃に対する態度は、実際にはかなり良いと言える。少なくとも彼女に対して何も不適切な扱いはない。

 そう考えると、月はますます不安を感じ始めた。特に桃が運動靴を履いて、化粧をせずにやってきたとは、自分への挑発行為のように見えた。

 桃は自分の身なりで月に注意を促しているようだ。桃こそが雅彦が本当に求めている女性で、彼女の腹には菊池家の子がいると。

 席に着いた桃は顔をあげると、月の恨みに満ちた冷たい目を見た。彼女はちょっと不安になった。

 以前、彼女たちはサービス業に一緒に従事していたが、桃は月のこんな表情を見たことは一度もなかった。

 月が一体どんな人なのかと桃は自分に問いかけた。

 月が桃の表情がおかしいことに気付き、少し気まずそうな笑顔で「あの、すみません。ちょっと不愉快なことを考えていたんです。お水を頼んでおいたので、どうぞ。」と言った。

 そう言いながら、目の前のお水を桃の方に押しやった。

 以前なら、桃は過度に考えず水を飲んでしまったか
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