すぐに悪魔の海に入ろうとしていた弘樹は、この見知らぬ者を排除すべきだと考えた。この時間、相手はきっと物置の中でひそんでいるに違いなかった。弘樹は事前に中には道具しか置いていないことを確認していた。それは数ヶ月間誰も来ない場所だった。ドアが開かれると、嫌な匂いが襲ってきた。カビの匂いの中に血の臭いも混ざっていた。暗くなりかけており、今日はまた曇りの日で、海はどんよりとした雲に覆われていた。そのため、底の部屋には全く光が入ってこなかった。波が船に打ち寄せる音だけが静まり返った部屋の中に響いていた。弘樹は一歩一歩前に進み、彼の直感が警告を発していた。見知らぬ者が今この部屋にいた。その見知らぬ者は、暗闇の中でまるで蛇のように身を潜めており、時を待って一気に襲いかかってくるのを待っているかのようだった。空はますます暗くなり、海風が吹き荒れていた。窓やドアはしっかり閉められていたのに、優子にはどこからともなく風が吹き込んできて、心が乱された。彼女は窓の外を見上げた。海風が唸りを上げ、海面を波立たせていた。今日から悪魔の海に入った。この海域は、以前の穏やかな海とはまるで違い、怒り狂った悪魔が大きな口を開けて通り過ぎる人や船を飲み込もうとしているようだった。波が船を激しく揺らし、時には数メートルも高くなる波が恐怖心を呼び起こした。この海の色は深い暗色で、太陽の光がないため、さらに不気味に見えた。やはり悪魔の海だった。優子は窓辺に立ち、心が乱れていた。外の景色を見ていると、雨が降りそうだと感じた。雨が降れば、海況はさらに悪化するだろう。今後数十時間、このような海を航行することを考えると、優子は不安で食事もできなかった。再び大きな波が打ち寄せ、船体が激しく揺れた。優子は立ち上がれず、ほとんど床に倒れそうになった。彼女は部屋の中を何度か回り、弘樹を探しに行こうと思った。少なくとも彼のそばにいれば、安心できる。この数日間の交流の中で、知らず知らずのうちに彼に依存していた。ドアを開けた瞬間、廊下から風が吹き込み、再びドアを閉められてしまった。その衝撃は彼女の鼻の近くをかすめるほどだった。船員の声が風の中から聞こえた。「お嬢さん、部屋にいてください。風も波も強いので、船が揺れて怪我をする危険がありま
最終更新日 : 2024-11-19 続きを読む