豌豆が峻介の顔に当たった。彼は少し怒って、豆のさやを籠に投げ入れた。「おばあさん、僕にはできません」「若い人、そんなに怒らないで、あなたのようなお坊ちゃんで、こんなことをしたことがないのは分かっている。でも、よく考えてみて。あなたの目は一朝一夕で治るわけじゃない。盲目の生活に慣れる準備をしないと」峻介は一瞬驚いた。紗枝は、彼を鍛えさせようとしていたのだ。優子も同じことを言ったことがある。あの時、峻介は優子と再会できた喜びに浸っていて、目のことを全く気にしていなかった。おばあさんの言葉を聞いて、彼は初めてそのことを真剣に考え始めた。「おばあさん、僕の目はどのくらいで治りますか?」「それは難しいわね。早ければ三、五ヶ月、遅ければ一年半かかるかもしれない。毒が抜けたら、病院の機械で診てもらったほうがいいわ。目の問題は簡単には治らないから、そんなにすぐには良くならないわよ」峻介は心の中で重く感じた。以前は命が助かっただけでもよかったと思っていたが、今は頭の中が優子でいっぱいだ。自分が盲目になって、どうして他の人と競り合えるのか。彼の焦りを見た小さな巫女は小さな手が、静かに彼の手のひらを撫でた。それは、まるで彼を慰めているかのようだった。その小さな手からは、何か不思議な力が伝わるようで、次第に峻介の緊張が解けていった。彼は心の中の不安を抑え、再び座って豌豆のさやをむき続けた。小さな巫女は、優子が彼女に作ってくれた笛を取り出し、小さな橋の上で静かに吹き始めた。吹いていたのは「あなたをのせて」だった。澄んだ、そして優美な音色が流れた。こんな静かな夜に、まるで月光が静かに降り注ぎ、聖なる光がすべてを浄化していくように、峻介の気持ちも次第に落ち着いていった。彼は豆のさやをむきながら、この世界を感じていた。美しい音楽の中、知らない小さな虫たちが合奏に加わり、遠くで鳥の羽音が聞こえ、フクロウが枝の上で「ゴロゴロ」と鳴いていた。その静かで貧しい世界が、突然賑やかに感じられた。そうだ、彼はすべての思いを優子に捧げていたが、周期的なことをすっかり忘れていた。一籠の豌豆をむき終わると、時間はすでに九時半になった。何もない小さな村では、日が昇れば働き、日が沈むと休むことだった。もうこの時間には、ほとんどの人々が寝ていた。
Last Updated : 2024-12-17 Read more