共有

第0269話

その場にいた全員が、上の方を見上げた。綿と雅彦もその一人だった。

秋年は両腕を組み、目を細めて少し離れたところにいるボスを見つめながら言った。「おい、黄蔵、久しぶりだな。相変わらず卑劣な手段を使ってるんだな」

黄蔵は目を細めた。逆光で目の前の二人の顔はよく見えなかったが、その声にはどこか聞き覚えがあった。

「余計なことに首を突っ込むな」黄蔵は二人を指さしながら言った。

「俺たちにその資格がないとでも思ってるのか?」秋年は怠惰な口調で返した。

黄蔵は笑い、「WKクラブの問題に外部の人間が口出しする権利はない!」と言った。

輝明は眉をひそめ、軽く笑みを浮かべながら、冷酷な目つきで黄蔵を見つめ、「じゃあ、もしその『外部の人間』が俺の大事な人に手を出そうとしていたら、どうする?」と冷たく言い放った。

綿はその言葉を聞いて、一瞬息を呑んだ。

この言葉が心に響き、何とも言えない感情が胸に広がった。

大学一年生の時、彼女がまだ高校生だった頃、彼の大学を訪れた際に、数人の不良に絡まれたことがあった。

その時も彼は同じように、少し離れたところから笑みを浮かべ、彼らに向かって言ったのだ。「もし俺の大切な人に手を出すつもりなら、どうなるかわかるか?」と。

その瞬間、恋に落ちた綿は、彼が自分の人生のすべてだと信じた。

高校と大学の時の輝明があまりにも美しく、綿は彼を深く愛しすぎたのだ。

黄蔵は目の前の二人を観察していた。

彼ら二人の持つオーラは非常に強力で、特に話している男の方は、圧倒的な存在感を放っていた。

綿が彼の大切な人?

黄蔵は一瞬ためらい、頭の中にある考えがよぎった。

この男、まさか……

「お前……」黄蔵は輝明を指さし、口ごもりながら言った。「お前は……まさか……」

輝明は両手をポケットに突っ込み、冷たい視線で黄蔵を見つめていた。

黄蔵は突然、山口に蹴りを入れ、「お前が引き起こした問題だ、自分で解決しろ!」と怒鳴った。

山口は呆然とした。

赤毛の若者はさらに困惑し、「ボス、どういうことですか?あの人、誰なんですか?」と尋ねた。

黄蔵は何も言わず、ただ遠くに立っている二人の男を見つめ、心臓が激しく鼓動していた。

「行け、この問題をさっさと片付けろ!」黄蔵は再
ロックされたチャプター
この本をアプリで読み続ける

関連チャプター

最新チャプター

DMCA.com Protection Status