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第0224話

綿は振り返り、来客に気づいて一瞬驚いた。

そしてすぐに立ち上がり、「司礼」と声をかけた。

司礼は黒のスーツに金縁の眼鏡をかけており、全体に知的で上品な雰囲気を醸し出していた。

彼は百合の花束を抱え、手には食べ物を持って近づいてきた。「大英雄を見舞いに来たよ」と冗談を言った。

綿は口を尖らせ、「大英雄なんてとんでもない。結局、他の人に代わりに刀を受けてもらったんだから」

「どうした?自分で刀を受けられなくて、がっかりしているのか?」彼は手に持っていた食べ物を下に置き、花束を楚綿に差し出した。「百合、まだ新鮮だよ」

綿は花束を抱きしめ、その美しさに感慨深い気持ちになった。

こんなにも長い年月が経っても、輝明から一度も花を贈られたことはなかった。

「ありがとう」綿は微笑んで言った。「とても気に入ったわ」

「少し食べ物を買ってきたんだけど、口に合うかな」彼はベッドの横のテーブルに置いた食べ物を指差しながら、椅子にゆったりと腰掛けた。

「司礼が選んでくれたものなら、きっと美味しいに違いないわ」綿は軽く眉を上げて、気軽な口調で答え、その表情はとても楽しそうだった。

「綿の口は本当に甘いね」彼は笑い、その目には楽しげな光が宿っていた。

綿はじっと司礼を見つめ、彼の一つ一つの動作を注意深く観察していた。

もし将来パートナーを選ぶとしたら、司礼も悪くないかもしれない。

「司礼」綿は突然彼の名前を呼んだ。

司礼は食べ物の包装を開けながら、彼女に目を向けた。「どうした?」

綿は少し考え込んだが、なかなか言い出せない様子だった。

司礼は微笑んで言った。「何でも率直に言っていいよ。僕たちの間に遠慮は必要ないだろう?」

綿は頷き、躊躇せずに尋ねた。「二度目の結婚って、気にする?」

司礼はその質問に少し驚いた。

彼は口を開き、答えようとしたが、その瞬間、病室のドアが突然開いた。

綿と司礼が同時にドアの方を見ると、輝明がそこに立っていた。

彼の顔色は悪く、まるで聞きたくないことを耳にしたかのようだった。

彼は大股で部屋に入ってきたが、九月だというのに、まるで真冬の寒さが急に襲ってきたかのように、部屋の中に不気味な冷たさが漂った。

輝明は黒とグレーのカジュアルな
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