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第0223話

「小栗先生、退院させてください。本当に大丈夫ですから!」

小栗先生が綿を見舞いに来ると、綿は彼女の腕にしがみつき、涙目で退院を懇願した。

小栗先生は検査結果を見ながら、のんびりと答えた。「退院させないのは私じゃなくて、小林院長だから、私にはどうしようもないのよ」

「ええっ!」と、綿は落胆してベッドに座り込み、口を尖らせて小栗先生を見上げた。

「仕事に戻りたいんです。私は仕事が大好きなんですよ、小栗先生、わかりますよね?」

小栗先生は思わず笑った。

毎日手術室にこもり、昼夜問わず忙殺され、さらには彼女に叱られる。それでも本当に仕事が好きなのか?

「わかったわ、院長に話してみる」と、小栗先生は綿の頭を軽く叩いた。

綿はすぐに子供のようにおとなしくなった。

「枝子さんの様子を見に行ってもいいですか?」と、綿は尋ねた。

小栗先生は頷いた。「もちろんよ」

綿はすぐに靴を履き替え、小栗先生と一緒に陳枝のもとへ向かった。

枝子はまだ危険を脱しておらず、集中治療室にいた。

旺一が刺したのはお腹だったが、その一撃は深すぎた。しかも、刺した後に刃を引き抜いている。

病床の上で痩せ細った枝子を見つめながら、綿は彼女が自分を庇ってナイフを受けた瞬間を思い出していた。

あんなに細く、旺一を恐れていた彼女が、いざという時にはあんなにも勇敢だった。

綿は、かつて自分が輝明のために、誘拐犯に付き従っていた頃のことを思い出した。

実際、彼女も痛みが怖かった。

両親に大切に育てられ、まるで掌中の玉のように扱われていた。

それでも、その男がナイフを背中に突き刺し、彼女を海に投げ捨てた時、彼女は一声も上げなかった。

その時、彼女の頭にはただ一つ、輝明が生きていてくれさえすれば、それでいいと思っていた。

枝子の姿に、自分自身の無数の影を見た。自分はもう負けた。彼女には負けてほしくない。

綿は、彼女に健康な体を取り戻させてあげなければならないと思った。

「小栗先生、枝子さんの治療費は全て私が負担します」と、綿は言った。

小栗先生は頷いた。「わかってるわ。彼女の各種検査が安定したら、心臓手術に取り掛かるつもりよ」

その時、綿の携帯電話が突然鳴った。

それは見慣れな
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