第0216話

枝子の肩を軽く抱きしめると、綿は優しく言った。「枝子さん、あなたの病気は必ず治してみせます」

その言葉に枝子は微かに微笑んだが、その声はどこか儚げで、「綿先生、ありがとうございます。たとえ死んでしまっても、もう悔いはありません」と静かに言った。

その瞬間、綿の胸に強い痛みが走った。

誰だって、きれいで優雅な女性でありたいと思っているはずなのに、生活の厳しさが彼女を追い詰め、普通の村の女性として生きることを余儀なくされてきたのだ。

旺一は警察に連行されたが、綿の心はまだ落ち着かない。彼女は枝子を弱い人間だと思っていた。そんな弱さが嫌いだった。

それでも、旺一が彼女に襲いかかろうとしたとき、枝子というこの普通で弱い女性が、自分を守るために立ちはだかった。

枝子が医者に連れて行かれるのを見つめながら、綿の眉がぴくりと動いた。

「綿、大丈夫か？」小栗先生の声が耳に届いた。

綿は顔を上げたが、その目はどこか虚ろだった。

小栗先生は心配そうに彼女を支え、「驚いただろう？大丈夫、警察があの男を連れて行ったから、もう安心だよ。少し休みましょう」と言った。

綿は一歩を踏み出したが、足元がふらついた。急いで頭を上げ、深呼吸して心を落ち着けた。

「大丈夫です」と、綿は小栗先生に答えた。

しかし、病院での医療事故の話はすぐに南城中に広まり、天河は娘が襲われたと聞いて慌てて病院に駆けつけた。

「どうなっているんだ、一体誰がこんなことを！」と、天河は怒りを抑えきれずに叫んだ。

千惠子も怒り心頭で、「小林院長を今すぐ呼んできなさい！」と声を荒げた。

「おばあちゃん、やめて！」綿は千惠子を制止し、「ただの小さな出来事で、小林院長には関係ないわ。私が自分から患者を手助けしたのが原因なの。だから、騒がないで」と、静かに諭した。

この事件は病院とは関係ないわ。

「本当に困った子だね！」千惠子は綿を指さし、責めるような目で見つめた。「もし病院で何かあったら、私がどう責任を取ればいいの？」

「その通りだよ。俺が会社を継がせて社長にすればよかったのに、わざわざ医者になるなんて！」と天河も同意しながら言った。

「それよりも、私と一緒にお茶でも飲んでた方がいいんじゃないか？」山助は綿の手を優しく揉みながら、ぽつりとつぶやいた。

千惠子はすぐに山助を鋭く睨みつけ、「お茶を飲