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第0217話

綿は顔を上げ、一方の手で肩を支えていた。すると、急いで駆けつけた美香と秀美が、心配そうにこちらを見つめていた。

「綿ちゃん、大丈夫かい?ニュースを見てすぐに飛んできたのよ!」美香は心配そうに、綿の全身をチェックしながら言った。

綿は二人の顔を見て、そして自分に駆けつけてくれた家族のことを思い浮かべた。枝子に比べて、彼女は本当に幸せだと感じた。

「おばあちゃん、私は大丈夫だよ」綿は両腕を広げて、ベッドから飛び跳ねる寸前だった。

「ニュースであなたが人質になったって聞いて、本当にびっくりしたんだから!」美香は綿の頭を軽く叩き、「この小さな娘め!」

秀美も彼女が無事で安心し、ほっとした表情を浮かべた。

「おばあちゃん、お母さん、心配かけてごめんなさい」綿は少し甘えた声で言った。

二人は顔を見合わせて、思わず笑ってしまった。「こんな時にまで甘えるなんて!」

「だって、あなたたちが私を可愛がってくれるからでしょ?」綿はすぐに美香に抱きつき、優しさを全身で表現した。

美香は綿の髪を撫でながら、心の底から彼女を愛おしく思った。

しかし、綿が高杉家の一員ではなくなることを考えると、胸が締めつけられるような悲しみを覚えた。

「昨日、輝明が言ってたけど、今朝離婚の手続きに行ったんでしょ?」美香は少し小声で尋ねた。

しかし、区役所から二人が手続きをしたという知らせが来なかったことが気になっていた。

綿は一瞬戸惑ったが、恥ずかしそうに言った。「おばあちゃん、実は私、身分証を無くしちゃったの。だから、手続きは数日後になるよ」

これを聞いて、美香の目が一瞬輝いた。身分証を無くした?

「まあ、無くしちゃったのね!」美香は思わず笑みをこらえきれなかった。

綿は目を細めた。

美香は咳払いをして、真剣な表情で言った。「あなたって本当にそそっかしいんだから!」

綿はため息をつき、「おばあちゃん、笑いたいなら笑ってもいいよ。」と彼女の気持ちを見透かして言った。美香の心の中を、綿はよく理解していたのだ。

彼女は、自分たちが離婚することを望んでいなかった。少しでも時間が稼げるなら、それだけでも良いと思っていたのだ。

美香は困った表情を浮かべた。

秀美は口をすぼめ、「綿ちゃん、何度も離婚しようとして結局できなかったことを考えてみて。これって、運命じゃない?」と言った。

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