第0152話

輝明が去った後、綿は男性と一緒に部屋を出た。

「火鍋が食べたい。おごってくれ」男性の声は深みがあり、落ち着いていた。

「はいはい、あなたが食べたいものは何でもおいいよ」綿は笑顔で応じた。

「私が言ったこと、ちゃんと考えた？」男性は綿に尋ねた。

綿は困ったように笑って、答えなかった。

男性はため息をつき、綿の額を軽く叩いた。

……

輝明が嬌の病室に到着したばかりの時、秋年からのメッセージが届いた。

秋年：「輝明！さっき道で誰を見たか当ててみて？お前の前妻だよ！」

秋年：「おっと、お前の前妻の車は本当に目立つね。遠くからでもすぐに分かった。でも！車に男が乗ってたんだ。ちらっと見ただけだけど、結構イケメンだったよ！」

輝明は秋年のメッセージを見ながら眉をひそめた。

秋年：「二人はかなり親しげだったよ。さっき彼がお前の前妻にサクランボを食べさせてるのを見たんだ。おいおい、お前の前妻は君がいなくても全然楽しそうだね。もし俺が君の前妻だったら、きっと追いかけるよ！大美女を誰が好きじゃない？」

輝明は無表情だが、手はゆっくりと拳を握りしめた。

輝明：「もう一言でも言ったら、君をブラックリストに入れるぞ」

秋年：「へへ！」

輝明は、ふと顔を上げると、じっと自分を見つめている嬌に気づいた。

最近の嬌は、毎日病院にいるせいか、体調が徐々に良くなるはずなのに、どうも顔色が日に日に悪くなり、ますます憔悴しているように見える。

「どこか具合が悪いのか？」輝明は理解に苦しんだ。

病院の最良の医師たちが彼女を見守っているし、兄の陸川易も毎日手を変え品を変え妹のために食事を用意して喜ばせようとしているのに、なぜだろうか？

「明くん」嬌は小さな声で彼の名前を呼び、目を伏せた。

「私は今、とても不幸せなの。生活の中で私を幸せにしてくれることが何もないように感じるわ…。ご飯を食べたくないし、話もしたくない。夜は眠れない。明くん、私、病気かしら？」

嬌の瞳に涙が浮かび、彼の眉眼を見つめるその姿は哀れで儚げだった。

輝明は眉をひそめ、複雑な感情が心に湧き上がった。彼は手で嬌の頭を軽く撫でた。

彼女が求めているものを知っていたが、今の自分にはそれを与えることができなかった。

「明くん」嬌はうるんだ瞳で彼を見つめ続け、「私を愛してるって一言、言ってくれない？」