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第81話 特にあなたを探しに来た

日が暮れ、薄暗い空には冷たい風が吹き始め、なんとも不快な感じが漂っていた。

鈴楠は時間を確認し、オフィス内のクローゼットへ向かった。そこには常に最新のブランドドレスが揃っている。彼女は控えめながらもエレガントなドレスを選び、足元には精巧なハイヒールを履き、限定版のバッグを手に会場へ向かった。

会場に着くと、誰も鈴楠に気付くことなく、それぞれが知り合いと談笑していた。このサロンは特にテーマもなく、富豪の夫人たちが時間を潰すための社交場のようだった。

鈴楠は小さなケーキをつまみながら、端の席でじっとしていたが、美奈子は見当たらない。もしかして来ていないのか?

「鈴楠?」突然、目の前に意外な顔が現れた。

鈴楠は眉を上げて、「足立さん?なんでここに?」

「いやぁ、これは縁だね。まさに運命の赤い糸ってやつかな?」と意志は冗談混じりに言った。

鈴楠は冷たく一瞥して、「冗談はほどほどにね。」

「母親がここのバタフライパイを食べたいって言ってね、買いに来ただけさ。」意志は苦笑いを浮かべて肩をすくめた。

鈴楠は微笑んで、お母様は相変わらず、食べ物に非常に拘っているね。

「あなたは?」

「私はちょっと顔を出しに来ただけ。」鈴楠は笑いながら、時間を確認し、立ち上がると、意志はすぐに彼女の腕を引っ張った。

「どこに行く?」

「ちょっとお手洗い。すぐ戻るわ。」鈴楠は言った。

意志は彼女の手を離し、この折角のチャンスを諦めずに、「じゃあ待ってるよ。送っていくから。」と言った。

「車で来たわ」

「じゃあ、僕を送ってくれ」

……

会場を離れ、静かな廊下を歩き角を曲がった途端、ふと自分の名前が聞こえてきた。

「慶一の前妻ね。噂では彼女、不倫してたから離婚になったらしいよ。ネットで同情を買おうとしてたけど、藤原家が面倒を見てやったから今も無事でいられるってだけだよね」

「藤原家の長女は私の友達だけど、彼女の話なら聞いたことあるわよ。彼女は学歴もなく、背景もない。それなのに3年間家庭主婦やって、離婚した途端に佐藤グループの副社長にのし上がったんでしょ?美奈子を蹴落として」

「美奈子も本当に可哀想。せっかく築き上げたキャリアが、社長の愛人に全部持っていかれちゃったんだから。聞いたところじゃ、あのプロジェクトも美奈子から奪ったって話よ」

「本当に最低だわ。そんな女が
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