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第80話 出て行け

和也は少し考え、「本当は佐藤社長が帰国してから彼らを片付けるつもりでしたが、もし今動くというのであれば、準備を整えておきます」と言った。

証拠はすでに揃っており、それを関係部署に提出すれば、林美奈子はもう終わりだ。

エレベーターが開くと、通りかかった人達が鈴楠に親しげに挨拶をしていた。

鈴楠は微笑みながら一人一人に返事をして、オフィスに戻った。彼女は唇を少し上げ、「彼女の最近の動きを調べて。しっかり反省させるつもりよ」と言った。

「最近、彼女は何人かの富豪の奥さんやお嬢さんと親しくしているようで、今夜はサロンの集まりに参加するそうです」と和也が報告した。

鈴楠は眉を上げ、「後で住所を私の携帯に送って。私も顔を出してみるわ」と答えた。

「わかりました」と和也は返事をした。彼にとってその程度の調査は簡単なことだ。鈴楠は彼を一瞥して、「他に用事がないなら出て行って。あとお兄ちゃんにも伝えて、私はもう動くつもりだって」と言った。

「承知しました、副社長」と和也は部屋を後にした。

鈴楠は少し休んでから、悠也に電話をかけた。悠也のふざけたような声が電話の向こうから聞こえてきた。

「お嬢様、デビューでもするのかい?」

彼は、鈴楠が一躍話題になっていることを皮肉っているようだった。鈴楠は眉間を揉みながら、「少し対処してくれない?全部お兄ちゃんが悪いんだから......」と言った。

悠也は笑いながら、「お兄さんは君を心配してるんだよ。写真の中に慶一もいたから、彼を怒らせるつもりなんだろうね」と言った。

慶一が他の男と一緒にいる彼女を見て怒るだろうか?

鈴楠は少し間を置いて、「もう彼と並ぶのは嫌なの。前田さん、お願いね......」と頼んだ。

悠也は笑いながら、「お嬢様の頼みなら何でもお任せあれ」と返事した。彼は今、彼女のために働いているため当然ながら従順だった。

電話を切ると、鈴楠の携帯にはすでに和也から住所が送られていた。その場所は彼女にとっても馴染みのある場所で、「雅の蔵」バーの近くにある高級クラブだった。

ちょうどいいことに、彼女はそこの会員だった。

藤原グループ。

藤原グループの社長室では、慶一がビルの窓から下を見下ろし、車の流れを眺めながら、ようやく胸の苛立ちを少し鎮めていた。

彼は空港から家までの短時間で何ができるのか、考え直していた
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