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第34話 君のことを親友だと思っている

鈴楠は冷笑を浮かべ、彼の顔を見ようとせず、スマホとバッグを手に取り、ハイヒールを鳴らしながら潔く立ち去った。そのスリムな後ろ姿は、凛とした雰囲気を漂わせていた。

意志は眉を顰め、すぐに後を追った。

慶一はその場に立ち尽くし、氷のように冷たい目で何処かを見つめていた。鈴楠の言葉がまるで刺のように彼の胸に突き刺さり、不快感を覚えた。

藤原家で召使い扱いされていただって?

藤原家の立派な奥様が、いつから召使いになったのか?

どうやら、自分が知らないことが多いようだ......

外に出ると、ドアの前で林美奈子を引きずりながら歩いている山下会長が目に入った。彼の顔は赤く染まっていた。

そうか、彼女は事前に彼らの仕掛けた罠を知っていて、しっかり準備をしていたんだ......

それなら、さっき自分がしたことは余計だったということか?

ふふ、笑える......

鈴楠は車に乗り込んで去って行った。慶一の誤解を聞いた時、彼女の心は何も感じなかったわけではない。結婚して三年も経つのに、彼は自分がどんな人間かも知らないのか?

しかし、その感情は一瞬で鎮まり、特に大きな動揺はなかった。

過去の道をもう一度歩むつもりはない。藤原慶一が何だっていうの?自分にはもう関係ないんのだ!

意志鼻歌を歌いながら彼女をちらりと見て、「今日、俺が助けてやったんだから、どうやって感謝してくれるんだ?」と尋ねた。

「何か欲しいものがあるの?それとも、直接お金を振り込んだ方がいい?」

意志は笑いをこらえながら、「お金を投げつけられるのは初めてだな!でも、俺はむしろお前が俺に身を任せてくれる方がいいんだが」

鈴楠は彼を横目で睨み、「夢でも見てなさい!」

「なんでだ?どうしてだ?俺にもチャンスをくれたっていいだろ!」彼は不満げに呟いた。

鈴楠は何気なく彼を見つめ、「ずっと君のことを親友として見ているのよ」

意志は唇を引きつらせ、「でも、俺が君に一番ふさわしい男だって証明してみせるさ」

どこからその自信が湧いてきたのかと、鈴楠は思わず笑ってしまった。「好きにすれば」

どうせ足立家のお坊ちゃんの熱意なんて、せいぜい1ヶ月しか続かないんのだ。

意志は彼女の笑顔を見て、胸が痛むような気がし始め、もうこのチ
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