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第271話 馬場の英姿

「そう、たぶんこういうことだと思う……社長がアシスタントを彼女に選ぶなんて、考えられないよね?もし交際相手を探すなら、三井鈴のような家柄の人が釣り合いがいいじゃない。」

「……」

林みつきは入口に立ち尽くし、社員たちの会話を耳にしながら、複雑な気持ちで胸がいっぱいになった。両手を無言で握りしめ、心の中は揺れていた。

その頃、三井鈴と田中仁は社内を一巡りして、会社の運営についてより理解を深めていた。

田中仁は続けて言った。「どうだ、鈴?MTグループとの提携について、準備はできているか?」

三井鈴は眉を上げ、「考えるまでもないわ。自分たちの利益を他人に渡すわけにはいかない。もう決めたの。」

田中仁は頷き、笑顔で返した。「いいね!それじゃ、明日には両社のメンバーを集めて、早めに契約しよう。」

「そうね、仁兄のおかげで何もかもスムーズに進んでるわ。」彼女は明るい声で応じた。

二人は話しながら廊下を歩いていると、田中仁がふと思いついたように言った。「仕事も終わったし、少しリフレッシュしないか?」

三井鈴は少し驚きながら、「仁兄、どこに連れて行ってくれるの?」と尋ねた。

田中仁は微笑みながら、「君が子供の頃、乗馬が好きだったよね?馬場に行ってみないか?」と言った。

三井鈴は目を大きく見開き、嬉しそうに言った。「仁兄、よく覚えてくれるね!でも本当に久しぶりだから、ちょっとドキドキするわ。行こう、馬場へ!」

田中仁はすぐに車を出して、三井鈴を馬場へ連れて行った。

今日は平日で、馬場には人が少ない。二人が到着すると、スタッフが急いで近づいてきた。「田中様、三井様、こんにちは!」

三井鈴は驚いた。ここは初めて来たのに、自分のこと知っているようだ。

田中仁はスタッフに向かって、「あの白馬を連れてきてください。」と指示した。

スタッフは頷き、すぐに一頭の白馬を連れてきた。その馬はあまりに美しくて、三井鈴は思わず目を輝かせた。

「この馬、素敵ね!」

田中仁は馬の引き綱を持ち、三井鈴の前に差し出した。「さあ、乗ってみて!」

白馬はまるで人の話が分かるかのように、静かにひざまずいた。「この馬、本当に賢い!」

三井鈴は喜びを抑えきれず、馬の背にまたがった。

白馬は静かに立ち上がり、優雅に歩き出した。

その後ろで、スタッフは田中仁の黒馬を引いてきた。田中仁
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