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第273章 激将法は効かない

古川社長は何度もうなずいた。

「安田グループの安田社長と取引の打ち合わせをしに来たついでに、馬でも乗ろうかと思いまして。田中さんもご一緒にどうですか?」

しかし、田中仁は即座に断った。

「すみません、せっかく誘っていただいたのに、ちょっと。。。。」

古川社長は田中の隣にいた三井鈴に目をやり、すぐに察したように笑った。「なるほど、では田中さん、お邪魔しました。次回またお会いしましょう。」

田中にも礼をして、古川社長はその場を後にした。

「安田さん、私たちも行きましょうか?」

安田翔平は冷たく言った、「いや、古川社長。取引はこれで終わりにしましょう。」

古川社長は驚いた。

「安田さん、さっきとは話が違うじゃないですか?」

安田翔平は感情がない口調で言い放った。「さっきはさっきです。」

古川社長は自分がどこが悪いのか、最後まで理解できなかったが、安田グループに逆らうことはできなかった。怒りを抑え、仕方なくその場を去った。

安田翔平はその場に黙って立っていて、その視線は三井鈴に釘付けた。まるで燃えるような熱い視線が彼女を包んでいるかのようだ。

三井鈴もその目に気づいて、眉をわずかにひそめて視線を返す。二人の目が合った瞬間、安田翔平の脳裏に過去の記憶がよみがえった。以前、二人が馬場で対峙したときは、ライバル同士だった。

あの時はあるプロジェクトを巡って、二人は馬に乗って競い合ったのだ。

三井鈴が馬の上での颯爽な姿が、今でも彼の心に鮮明に焼きついている。

「三井さん、馬に乗らないか?」

安田翔平はそう誘ったが、三井鈴はあっさりと断った。

「ごめんなさい、安田さん。興味がないので。」

安田翔平の顔が一瞬暗くなった。

その時、安田真央が近づいてきた。

彼女は笑っているような笑っていないような顔をして、じっと三井鈴を見つめていた。「奇遇ね、三井さん。あなたもここにいるのね。」

その口調は穏やかで、まるで先日のことがなかったかのようだった。

そういう安田真央に、三井鈴は驚きを隠せなかった。「真央さんも馬に乗りに来たの?」

安田真央は微笑を浮かべ、「一人で乗るのもつまらないわ。どう?勝負でもしない?」と軽やかに誘った。

だが、三井鈴はきっぱりと断った。「すみません、興味ないです。」

それでも安田真央は笑顔を崩さず、攻め込むように言った。
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