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第360話

ただ、その言葉が終わるか終わらないかのうちに、ドアベルが鳴った。

何度も追い出された経験がある山本は、すぐにはドアを開けずに、まず覗き穴から外を確認した。

そこにはスーツ姿の男が二人、立っていた。

電話の向こうでは、妻の里美がまだ言葉を詰まらせているのが分かり、驚いている様子が伝わってきた。

再びドアベルが鳴り、山本は少し驚きつつも、「まずは落ち着いて、こっちに用があるからまた後で話すよ」と言い、電話を切った。

そして、ドアを開けた。

「あなた方は誰ですか?」

スーツ姿の男の一人がにこやかに手を差し出し、「山本さん、こんにちは。私はDKグループの社長補佐の桜井です。そしてこちらは弁護士の江口大輔です。今日は山本さんにお伝えしたいことがありまして、お時間をいただけますか?」と丁寧に話した。

山本は警戒しながら二人を見つめた。家主でもなければ、追い出しに来たわけでもなさそうだ。じゃあ、一体何の用だ?

「どうぞ」と言いながら、山本は体を横にして道を開けた。

桜井は軽く頭を下げ、江口と共に部屋に入った。ソファに腰を下ろすと、江口がテーブルに二つの書類を置いた。

「これは何ですか?」と山本が尋ねた。

桜井は微笑みながら、「山本さん、すでにご存知かもしれませんが、あなたの口座に振り込まれた300万円の件です」と言った。

山本は眉をひそめ、「どうしてそれを知っているんだ?」と問い返した。

桜井は、「あのお金は私たちが振り込んだものです。そしてここには、さらに700万円の小切手があります。冬木を離れ、この二つの書類にサインをしていただければ、このカードもあなたのものになります」と言いながら、書類の隣にカードを置いた。

山本は驚きの表情を浮かべ、急いで書類を手に取って内容を確認した。それは二つの誓約書で、一つは二宮家の周りに近づかないというもので、もう一つは息子の啓との親子関係を切るという契約だった。

山本の顔つきが険しくなり、「息子の命をたった一千万で買い取るつもりか?」と声を荒げた。

しかし、山本の怒りに対しても、桜井は落ち着いたまま微笑みを崩さず、「山本さん、どうか冷静になってください。これを話し合いで解決した方が賢明です。啓が盗んだものの総額はすでに2億円を超えています。彼は一生、刑務所から出られないかもしれません。これをご覧ください」と言い
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