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第368話

雅之は里香の足をぐっと掴んで、軽く撫でた。呼吸が荒くなった。

里香は一瞬体がこわばったが、すぐに力が抜けた。雅之はそれ以上は何もしてこなかった。

実際、里香は本当に疲れていた。

今さら雅之を追い出すなんて無理だし、彼もそう簡単には出て行かないだろう。騒ぎになったら、近所の人たちに迷惑をかけるだけだ。

もう仕方ない。このまま寝よう。

数日間、山本からの連絡はなかった。

雅之も忙しくなって、啓のことを聞こうとすると、話の途中で電話を切られてしまった。

この話題には触れたくないのが明らかだった。

そんな時、聡から電話がかかってきた。

「もしもし、聡さん?」と里香が出ると、聡はにこやかな声で答えた。「里香さん、今日時間ある?一緒にご飯でもどう?」

里香は少し考えてから、「うん、いいよ」と返事をした。

聡は笑って、「じゃあ、後で場所を送るね」と言った。

「分かった」

聡が予約したのは火鍋の店だった。

店に着くと、聡はすでに入り口で待っていて、リラックスした雰囲気を漂わせながら笑顔で迎えてくれた。

「早かったね」と聡が言うと、里香は「ちょうど近くにいたの。この店の火鍋、おいしいよ」と答えた。

聡は目をぱちぱちさせて、「それは楽しみだね」

二人はそのまま店内に入り、直接2階の個室へ。店員がタブレットを持ってきて、聡はそれを里香に差し出した。「よく来るんでしょ?だったら、注文お願いね」

里香は「苦手なものはある?」と聞くと、聡は「私は何でも大丈夫」と返した。

里香は頷いて注文を始め、注文を終えるとタブレットを店員に渡し、ドアが静かに閉められた。

聡はじっと里香を見つめて、突然言った。「あんまり寝てないんじゃない?ちょっと疲れてるように見えるけど」

里香は微笑んで首を振り、「大丈夫。ただ、ちょっと悪夢を見ただけ」

聡は納得したように頷き、それからまた尋ねた。「前に話したこと、考えてくれた?すぐに冬木を離れたくないみたいだけど、それならうちに来ない?もし出て行きたくなったら、その時に教えてくれればいいから、給料とかで引き止めるつもりはないし」

聡は再び誠意を込めて誘い、優しい笑顔で里香を見つめた。

里香は少し黙ってから、「もう少し考えさせて」と言った。

聡は笑顔を浮かべて、「もちろん。考えがまとまったら、いつでも連絡してね。私のスタジオ
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