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第339話

里香は斉藤の凶悪で恐ろしい姿を思い出し、眉をひそめた。

祐介は一冊のファイルを取り出して彼女に手渡し、「この男について調べさせた。これを見て」と言った。

里香はそれを受け取り、中を開いて読んだ。

斉藤は40代で、10年間服役して今日出所したばかり。罪状は過失致死だった。

祐介は里香を見つめ、ゆっくりと言った。「誰を殺したか知ってるか?」

里香は首を振った。

祐介は続けて、「殺されたのは二宮家の次男、雅之の兄、二宮みなみだ」と説明した。

その名前にはまったく馴染みがなかった。

祐介はさらに、「でも、なぜ彼が君を殺そうとしているのかが分からなかった。調べてみると、彼が二宮家の二人の息子を誘拐した際、誰かに通報され、その怒りでみなみを焼き殺したんだ。もう一人は運良く助かった」と言った。

祐介は里香に目を向けて質問した。「もしかして、その通報者は君じゃないか?里香、本当にそのことを覚えていないのか?」

里香の顔には困惑の色が浮かんでいた。

「通報者? 誘拐?」里香は一生懸命に思い出そうとしたが、そんな記憶は全くなかった。

「そんなこと、私はしていないわ」と里香ははっきりと答えた。

祐介は眉をひそめ、「でも、そうだとしたら、なぜ彼が君を執拗に狙うんだ?」と首をかしげた。

里香も理解できなかった。もし彼女が本当に斉藤の誘拐を通報していたなら、彼が恨むのは理解できる。しかし、そんな記憶は一切なかった。そもそも、その誘拐事件について聞いたことすらなかった。

祐介は「俺の考えが間違っていたかもしれない。だが、彼がまだ捕まっていない限り、危険は残っている。自分の身を守るんだ」と警告した。

「気をつけるよ、祐介さん、ありがとう」と里香は頷きながら答えた。

祐介は微笑んで、「俺に対してそんなにかしこまらなくていいよ。もう遅いし、帰って休んで」と言った。

気づけば、外はすっかり暗くなっていた。

里香は一声返事をして立ち上がり、「それじゃ、失礼します」と言って部屋を後にした。

祐介は彼女の背中を見送りながら、細めた目でじっと考えた。彼女はどうして、二宮家で助かった息子が誰なのか、気にしないのだろうか?それとも、今は雅之に全く関心がないということか?

里香が家に戻る道中、祐介が言っていたことが頭をぐるぐる回っていた。家のドアを開けた時、彼女は階段の上で誰
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