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第346話

里香は買い物を終え、急いで家に戻った。雅之からの返事を待っていたのだが、メッセージを送ったのに、まるで水を打ったように、何の反応もなかった。

どうして?朝までは普通だったのに、なんで急にこんなに冷たくなったの?頭の中で疑問がぐるぐる回り、何が原因なのかさっぱりわからなかった。

気づけばもう午後になっていて、日が少しずつ西に沈むのを見ながら、里香の気持ちもどんどん沈んでいった。

二宮家の意図が全く理解できなかった。啓を捕まえて脅すような真似をしながら、あんな写真をおじさんに送りつけて......これって由紀子の仕業?それとも正光の指示?一体彼らは何を考えてるの?どうしてただの運転手をここまで追い詰めるの?

そんなことを考えていると、また電話が鳴った。すぐにスマホを手に取ると、雅之からではなく、おじさんからだった。

「もしもし、おじさん、どうしたんですか?」

山本の声には焦りが混じっていた。「里香、二宮家の奴らが俺のところに来て、冬木から出て行けって言ってきたんだ。それに金まで渡そうとして、啓のことは気にするなって......でも、啓は俺の息子だ、そんなの無理に決まってるだろ!金を断ったら、今度は無理やり追い出そうとして、宿も追い出されてしまったんだよ」

里香は驚いて立ち上がった。まさかこんなに事態が深刻になっているなんて。二宮家はお金でケイの命を解決しようとしている。啓が何をしたっていうの?どうしてこんな残酷なことを......

「おじさん、今どこにいるんですか?」

「今、大通りにいる。旅館から追い出されたんだ」

「位置情報を送ってください。すぐ迎えに行きます」

「分かった」山本はそう言って電話を切った。

里香は位置情報を確認して、すぐに家を飛び出した。

ところが、マンションの下に着いたところで、また電話が鳴った。今度は雅之からだった。

大きく息を吐いて電話を取ると、「今夜はご飯食べに来る?」と尋ねた。

すると雅之の低くて冷たい声が返ってきた。「それ、頼み事をする人間の態度か?」

里香は唇を噛みしめ、「今どこにいるの?会いたいの」と、優しい声で言った。もう冷たく接するのはやめて、少し態度を和らげようとした。

しかし、雅之の心の中には皮肉が渦巻いていた。里香は誰かのためなら、自分に対しては低姿勢になれるんだな、と。

「二宮邸だ。今すぐ
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