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第348話

里香は小さく頷いた。

東雲はスマホを取り出し、電話をかけた。少ししてから彼は里香に向かって「案内するよ」と言った。

里香は微笑んで、「うん、お願い」と答えた。

【ビューティー】というバーに到着した。里香は車から降り、東雲に「雅之はここにいるの?」と尋ねた。

東雲は頷いて「そうだ」と答えた。

里香は迷わず店内に向かって歩き出した。

そのバーは大きく、3階建てになっていた。1階はロビーで、ステージや座席があり、一番賑やかなフロアだった。2階と3階はもう少しプライベートな空間で、主にお金持ちが利用する場所だった。

里香は直接バーカウンターに行き、「二宮雅之は何階にいるの?」と尋ねた。

スタッフは一瞬驚いた表情を浮かべ、首を振って「どなたのことか存じ上げません」と答えた。

その返事に里香は眉をひそめた。スタッフが雅之を知らないとは。それなら、部屋を一つずつ探すしかないようだ。

里香は2階に向かおうとしたが、階段の前で屈強な警備員2人に立ちはだかれた。

「予約がないと上には上がれません」

里香は困惑し、振り返って東雲を見上げて少し首を傾げた。

東雲は無表情で前に進み、簡単にその二人の警備員を制圧した。

里香は彼らの怒りに満ちた視線を無視して、まっすぐ階段を上っていった。東雲も里香の後ろに続いた。

その場にいた警備員たちはすぐにマネージャーに連絡を入れたが、そのマネージャーはちょうどVIPルームで、一人の男性に恭しく付き添っていた。

電話での報告を聞き、マネージャーは顔色を曇らせ、ソファに座っている男性に「すみません、ちょっとした問題が起きたので、対応してまいります」と言った。

男性は何も言わず、ただ手を軽く振っただけだった。

マネージャーが急いで出て行くと、廊下で里香と東雲が歩いてくるのを目にした。

「お前か?無理やり上がってきたのは。ここを自分の家とでも思ってるのか?さっさと出て行け!」と里香の顔を指さして怒鳴りつけた。

東雲は一歩前に出て、マネージャーの指を掴むと、軽く力を加えた。するとマネージャーは痛みに悲鳴を上げた。

里香は彼の胸にあるネームプレートを一瞥し、「二宮雅之はどこ?」と冷静に尋ねた。

マネージャーは驚き、目を丸くして「あなた......誰ですか?」と震える声で尋ねた。

「二宮雅之の妻よ」と里香は淡々と答えた。

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